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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2017年02月22日

気候変動否認の裏側にある心理(2017.02.22)

温暖化
 

昨年10月に、スウェーデンのウプサラ大学から、「気候変動否認の裏側にある心理」という興味深い研究結果の発表がありました。

温暖化対策、特に意識啓発・行動変容に取り組んでいると、無力感に陥ることも多いのではないかと思いますが(特に昨今の日本では環境意識も全般的に低下しているので)、心理学や社会学などの知見を十分に活用しながら、作戦を練っていきたいなあと思います。「正しいことを大声で言えば、みんながわかって変えてくれるはず」だけでは、必要な規模の変化を創り出すのは難しいからです。

私は大学・大学院時代に心理学(学習心理学、発達心理学、臨床心理学など、人間の学びや変化を対象とする心理学)を学びました。当時はもちろん「これが後年どう役に立つのか」わかっていたわけではありませんでしたが、今にして思えば、心理学を勉強しておいて、本当に良かった!と思います。

これからも心理学などの知見をどう価値観や行動の変容に結びつけることができるのか、自分自身でも勉強しながら、また幸せ研の読書会やセミナーを通じて、みなさんと勉強したり考えたりしながら、試行錯誤をしていきたいと思います。

では、ウプサラ大学からのプレスリリースをお届けします。ここにも、そういう意味でのヒントのタネがあります!

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

「気候変動否認の裏側にある心理」

気候変動は人間、動物、地球上の生態系に対する深刻な脅威である。それにもかかわらず、有効な対策行動はなかなかとられていない。その大きな理由の一つが、気候変動問題はないのだと主張する人々が存在し続けるからだ。ウプサラ大学(スウェーデン)のカースチ・ジャイラ教授が最近の論文で、気候変動を否認する側の心理について研究した結果を発表している。それによると、階層的な権力構造をよしとする人々はかなり高い割合で気候変動問題を否認する傾向があるという結果が出た。

人類が気候に深刻な影響を及ぼしてきており、現在私たちは深刻な危機に直面していることは、科学界における強力な統一見解になっている。しかし、気候変動については数多くの間違った情報が次から次に流されている。そのうちのかなりのものは、気候変動に対処するために必要な対策を先延ばししようとする組織化されたキャンペーンによって作り上げられたり、流されたりするものだ。そしてこうした誤った情報を信じやすい人々がいるのである。

これまでの研究で、「政治的保守層の人々に気候変動の否認がより多くみられる」ことが繰り返し指摘されてきた。カースチ・ジャイラの論文では、このテーマをより広く詳細に調べている。政治信条と相関するイデオロギーやパーソナリティの変数を取り上げ、これらの変数が気候変動の否認と相関するかを調べたのだ。

その結果、気候変動の否認は、政治的志向、権威主義的態度、現状維持指向と相関していることがわかった。さらに、現実主義的な性格(低い共感性、高い支配性)、閉鎖的な了見(試してみることに意欲的でない)、ネガティブな感情を抱く事態を回避する傾向、男性性、と相関していることも分かった。重要なことは、社会的支配志向性(SDO)と呼ばれている一つの変数によって、これらすべての相関関係を、その全体または部分的に説明できるということだ。

社会的支配志向性とは、社会グループ間の階層関係や支配関係の受容・支持を測るものである。この「階層の受容」は「自然に対する人間の支配の受容」にもつながる。SDOと気候変動否認の間の相関性は、気候変動のもたらす多くの不公正を考えれば説明できるのではないか。われわれの現在の豊かなライフスタイルが気候変動の最大の原因だが、その最も深刻な結果は主として貧しい国々や人々、動物や次世代の人々に影響を及ぼすのだ。

カースチ・ジャイラは、気候変動のリスクと便益の分配が不平等であることを受容する者は、より容易に「気候変動の証拠をもっと出さなければ、気候変動を認めて取り組むことはできない」と主張し続けることができるだろう、と言う。

そうであるとしたら、問題は、「社会的支配志向性(SDO)の高い人々に、行動が必要であると納得させるには、どのように気候変動の問題を提示するのがよいか」である。

「気候問題をめぐる議論では、『環境や貧困層・弱者を守るために、生活の利便性を諦める』という論点で堂々巡りになることが多い。しかし、この議論では、世界を階層的な見方で見ている人たちを説得させることはできないだろう。もっと違った切り口から、『こうした対策をとることで、このように、誰もが、気候変動によるダメージではなく利益を得ることができるし、その対策は必ずしも現在の社会構造にとって脅威ではない』と説明するほうが効果的かもしれない」とカーチス・ジャイラは述べている。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

海外ではこういった心理学的見地からの環境問題へのアプローチも多く、盛んになってきている実感がありますが、日本で、たとえば「温暖化の心理学」「環境問題解決のための心理学」などを研究している大学や機関、研究者をご存じでしたら、ぜひ教えてください~!(論文検索をしてもあまり出てこないのです、、、)

 

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