ホーム > 環境メールニュース > JFS ニュースレターより: 「お金の使い方」を変える地域通貨「ぶんじ」(20...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2016年12月29日

JFS ニュースレターより: 「お金の使い方」を変える地域通貨「ぶんじ」(2016.12.29)

新しいあり方へ
 

今年もあと3日、いかがお過ごしでしょうか。

忙しい時期に恐縮ですが、「持続可能性という観点で、今年はどんな年だったか」みなさんのご意見や思いをお聞かせいただけないでしょうか。

「2016年を振り返って~持続可能性に関わるアンケート」

数分で終わります。ぜひあなたの考えや思いを教えてください。結果はみなさんと共有します。お友達やお知り合いなどにもお伝えいただけたらありがたいです。ご協力、よろしくお願いします!

さて、JFS ニュースレター No.170 (2016年10月号)より、とっても素敵な地域通貨の取り組みをご紹介します。写真などはぜひウェブサイトからご覧下さい。
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035674.html

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

「お金の使い方」を変える地域通貨「ぶんじ」

日本は、会話をしなくても買物ができる便利な社会です。町中にある自動販売機やインターネットでの買物は言うまでもなく、スーパーやコンビニエンス・ストアでも会話をせずに買物ができます。また、グローバル化が進んだことで、そこで購入した商品が地球の裏側から運ばれてくることも珍しくありません。

こうした時代の流れの中で、私たちはしばしば、「商品やサービスを作り、提供してくれている人がいる」ということを忘れてしまっているのではないでしょうか。「お客様は神様だ」「お金があれば何でも買える」といった言葉さえ耳にすることがあります。作り手への感謝を忘れた社会は、たとえ便利であっても、大切な何かを忘れた社会といえるでしょう。

このような社会を変えるために、地域通貨を用いて、商品やサービスを提供してくれている人に思いを馳せる手助けをする――そんな取り組みが、東京都国分寺市で行なわれています。今月号のニュースレターでは、この取り組みの中心人物のひとりである影山知明さんのお話を中心に、地域通貨「ぶんじ」についてご紹介します。

○メッセージカードのような地域通貨「ぶんじ」

新宿から電車で約30分。人口12万人ほどの東京都国分寺市は、いわゆる「ベッドタウン」であるとともに、奈良時代中期に「武蔵国分寺」が建立された歴史のある町です。その国分寺で2012年に地域通貨「ぶんじ」が生まれました。「ぶんぶんウォーク」という、まちをぶらぶら歩きながら国分寺の魅力を再発見するイベントの際に「お楽しみ券」として発行されたことが始まりだそうです。

「ぶんじ」の大きさは名刺大で、お財布のカード入れにぴったりと収まります。「100ぶんじ」は100円相当の価値を持っていて、使えるお店は市内に約25カ所あります。現在、国分寺市内に流通している「ぶんじ」は約1万枚。何らかの形で「ぶんじ」を使っている人は250人くらいいるそうです。

市内全域に普及しているわけでもなく、決して規模が大きいとはいえませんが、影山さんは、「ぶんじ」をどんどん広げていきたいというよりは、一歩ずつ、着実に広がっていけばよいと考えているそうです。

この「ぶんじ」のユニークなところは、「使うときにメッセージを書かなくてはいけない」というルールがあることです。裏面にはメッセージを書き込むための10個の「ふきだし」がついています。

たとえば、850円のトマトジュースを飲んだとき、750円プラス「100ぶんじ」という支払い方ができますが、そのときに、「ぶんじ」に一言メッセージを書き入れます。商品やサービスを提供して「ぶんじ」を受け取る側は、お金を受け取るときにメッセージも一緒に受け取ることになります。

「ぶんじ」には、こんな言葉が印刷されています。

相手を思う、気持ちのこもった丁寧な仕事に「いいね!」率先したまちのための汗かきに「ありがとう」誰かの「贈る」仕事がまた次の人の「贈る」気持ちを呼び起こし、地域をめぐる。

この言葉は、「ぶんじ」という地域通貨の本質を示しています。

○地域をぐるりと回る「ぶんじ」

地域通貨の取り組みはたくさんありますが、長く続けるのは難しいという声をよく聞きます。続かない理由の一つに、お店に支払われた地域通貨の使い道がないことがあげられます。お店で地域通貨を使って商品やサービスを買うことは出来ても、お店が地域通貨を使える場所がなければ、地域通貨はお店に貯まる一方です。

「ぶんじ」は、農業と商業との連携によって、この問題を解決しようとしています。例えば、影山さんが経営している喫茶店「クルミドコーヒー」では、国分寺市内の農家から仕入れた野菜や果物を使ったメニューがあります。こうした野菜や果物を仕入れる際に、代金の一部に「ぶんじ」を使うことができます。つまり、お店も「ぶんじ」を使える場があるのです。

「ぶんじ」を受け取った農家は、農作業をサポートしているボランティアへのお礼の一部として「ぶんじ」を使うことができます。受け取った「ぶんじ」を持ってクルミドコーヒーにやってきたボランティアは、「このお店で使われている食材は、自分が農作業を手伝ったものかもしれない」とワクワクしながら買物をすることができます。

その「ぶんじ」はまた野菜の仕入れに使われたり、お店からスタッフに渡されたりします(クルミドコーヒーでは、「ぶんじ」をボーナスとしてスタッフに渡しているそうです)。こうして「ぶんじ」は、地域をぐるぐると循環します。

「ぶんじ」の裏面には、ある人の手から別の人の手に渡るたびに、メッセージが書き込まれていきます。「おいしいトマトをありがとうございます」「暑い中、収穫を手伝ってくれてありがとう」「コーヒーと素敵な時間に感謝!」。もしも、そんなメッセージが書かれた地域通貨を受け取ったら、それを読むだけでも、なんだか嬉しい気持ちになりそうです。

○「誰かがおこなった仕事」を受け取る

「メッセージを書く」ことは、「自分が受け取ったものは何か」を自問するきっかけとなると影山さんは言います。この作業を通じて、その仕事をおこなった「作り手/贈り手」の存在に思いを馳せることができます。「商品やサービスの裏側には、それをつくった作り手や贈り手がいる」という、当たり前だけれども、忘れがちなことを、「ぶんじ」は思い出させてくれるのです。

「何かを手に入れるため」にお金を使うのではなく、何かを買うときに、「この仕事を受け取りました」という気持ちでお金を使う。そうすると、「この仕事って、誰のどういう仕事なんだろう」と思いを馳せることにつながり、また感謝の気持ちにつながります。

特に「ぶんじ」は地元の商店や農家など、地元の仕事をつなげる地域通貨であるため、「贈り手」の顔が見えやすいことも、感謝の気持ちにつながりやすい仕組みといえそうです。

このように、「ぶんじ」は、単なる通貨の代わりではなく、お金の使い方や、お金という道具の意味を変えるための媒体なのです。

○日本円の使い方を変える地域通貨「ぶんじ」

「ぶんじ」を通じたやりとりが広がることで、日本円の使い方自体も変わっていきます。人の仕事を受け取ることが上手な人が増えていくのです。ジュースを飲んだり、ケーキを食べたり、接客サービスを受けたりすることに対して感謝できる。それは「人の仕事を受け取っている」ということを自覚して、それに対しての感謝の気持ちを上手に表明できる人が増えていることなのです。

人は「感謝して受け取ってもらえると、もっと贈りたくなる」ものです。こうして、「贈る」と「受け取る」の輪はぐるぐると循環していきます。この仕組みは、お金を介する場合でも、介さない場合でも同じです。「受け取ったよ」「ありがとう」を意識してお金を使うことができる人がたくさんいる町には、「贈ること」が好きな人が増えていくでしょう。こうして、お金の使い方が変わっていき、経済についての考え方を変えることにつながります。

「ぶんじ」は、「お金の使い方」を練習する場なのです。地域通貨を通して練習することで、国家通貨を使う際にも「贈ること」や「仕事を受け取ること」を大事にする人が増えていくでしょう。国家通貨の使い方と経済についての考え方をも変えていくでしょう。「ぶんじ」の取り組みは、これからも続きます。

(スタッフライター 新津尚子)

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ