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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年02月25日

日本でも固定価格買取制度を導入へ〜固定価格買取制度をどう説明するか(2009.02.25)

エネルギー危機
温暖化
 

[No. 1595] 日本の自然エネルギーを増やすための政策提案〜アンケートにご協力下さい(2009.02.18)

[No. 1597] 一般対象の「温暖化を防ぐために、自然エネルギーを増やす政策に関するアンケート」調査結果(2009.02.20)

と、自然エネルギーを普及するための「固定価格買取制度」について、取り上げてきました。

一般対象のアンケート調査結果は、マスコミへのプレスリリースを配ったほか、温暖化に関する懇談会の事務局に「各省庁にもお伝え下さい」とお願いし、行政・産業界などのキーパーソンにもお送りしました。

早期導入を進めるために、次に何をしようか、と考えていたところに、昨夕「経産相が固定価格買取制度の導入を発表」との報道があって、びっくりしました。こんなに早く効くとは!(違うか〜。^^;)

みなさんにお願いしたアンケートには、23日朝2時の締め切りまでに512人の方から回答が寄せられました。本当にありがとうございました。熱い思いやお気持ち、たくさん伝わってきました。いまとりまとめ中で、でき次第、ウェブにアップして、みなさんに読んでいただけるようにし、同時に、関係省庁やマスコミ、キーパーソンなどにもお送りします(だめ押し?)

経産省が導入に踏み切ったというのはもちろん良いニュースですが、だからといって「これでよし」と言うわけではありません。

目的は、自然エネルギーの導入者を増やすことによって、日本での自然エネルギーを増やすことですから、その目的にとって効果的な制度にしていく必要があります。

つまり、「自然エネルギーの普及に効果的な固定価格買取制度」もあれば、「効果的ではない固定価格買取制度」もありうる、ということです。「制度を入れればOK!」ではないのです。

同じ「固定価格買取制度」でもさまざまな設計ができます。屋根の上の太陽光発電設備の発電する電力を全量電力会社が買い取って、本人の消費する電力は電力会社から購入するやり方もあれば、(今回の経産省の考えのように)家庭で使い切れなかった余剰電力を買い取る方式もあります。

また、固定価格買取制度の真髄は、導入や投資を促進するために「発電コストよりも高く買い取る」ことですから、「その価格差をどうやって、どういう時間軸で埋めるか」という点でも、さまざまな制度がありえます。

ドイツでも、日本の環境省の提案でも、今回の経産省の考えでも「消費者が広く薄く負担する」基本は同じですが、環境省の提案では「10年程度でモトがとれるよう、月260円程度の負担(低所得者対策はおこなう)」というものでしたが、報道によると、経産省では「15年程度でモトがとれるよう、月100円までの負担とする」ということです。

新規に太陽光発電設備を設置しようかな?と思っている人にとって、「10年でモトがとれるか」「15年でモトがとれるか」が行動を左右する要因となるとしたら、この「回収期間」と「負担額」のトレードオフ(どちらかを重視すると、もう一方は不利になる)のバランスをどうとるか、も重要です。

というわけで、「経産省が固定価格買取制度導入に動いたのはとってもすばらしい。本当に効果的な制度になるよう、その設計や実績をしっかりウォッチしていきましょう!」と思っています。

先ほど「早期導入を進めるために、次に何をしようか、と考えていた」と書きました。一般の人々、マスコミ、議員さん、省庁、官邸など、ターゲットごとにいろいろな作戦を練っていたのですが、そのひとつに、「一般の人にもわかりやすく説明する」ウェブサイトや資料作成がありました。

導入が決まったからといって説明の必要性がなくなるわけではないのですが、政府が導入すると決めたんだから、その目的やしくみ、負担についても、政府が一般向けにもわかりやすく説明してくれるはずですよね、きっと。。。

私はこんなふうに説明をしています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

地球温暖化を何とか早く止めたいと思っている人は多いでしょう。そのためには、二酸化炭素(CO2)を減らすことです。そして、日本の出しているCO2の多くは、私たちがエネルギー(電力、ガス、ガソリンなど)を使うときに出ます。

エネルギーには2種類あります。石油や石炭、天然ガスのように、地下から掘り出してくる化石エネルギーです。化石燃料はいったんなくなるとおしまい、という再生不可能なエネルギーで、燃やすと大量のCO2が出ます。

もう一つは太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスなどの自然エネルギーです。再生可能でCO2の排出も少ない自然エネルギーです。

家庭から出るCO2のうち約4割は、私たちが電力を使うときに出ます。そこで、電力の消費量を減らすこと(省エネ)と、できるだけ電力をCO2の出ないものに替えていくこと(自然エネルギーへの切り替え)が、家庭からのCO2、そして日本のCO2を減らす上で鍵を握っているのです。

「家庭の電力から出るCO2が増えている」とよく問題視されます。確かに、2000年を100とすると、2005年の家庭の電力から出るCO2は、123まで増えています。

しかし、この増加分の原因を分析してみると、「世帯数の増加」(103)、「1世帯当たりの消費電力の増加」(106)に比べて、「1キロワット時の電力をつくるときに出るCO2の量」(これは「排出係数」と呼ばれ、電力会社がどのようなエネルギー源で発電するかによって決まります)が112と、最も大きな原因となっています。

つまり、私たちが家庭で省エネすることも非常に大事ですが、同時に、発電するときのエネルギーの種類を自然エネルギーに替えていかないいけない。省エネだけで大きくCO2を減らすことは難しいのです。

そして、日本にとって自然エネルギーを増やしていくことが大切である理由がほかにもあります。日本の「エネルギー自給率」をご存じですか? たったの4%です。日本は、エネルギーを輸入し工業製品を輸出するという産業構造を取ってきましたが、最近の景気後退で輸出が振るわなくなっています。しかし、そういう状況でも、再生不可能なエネルギー資源が枯渇するにつれ値段は上がっていきますから、輸入エネルギーのコストは、増えていくと心配されています。

つまり、早く日本の中にある自然エネルギーに切り替えていかないと、日本が貧しくなってしまうということです。福祉や地域の再活性化、産業振興などに回すお金が減ってしまうということです。

「自然エネルギーを増やすべきだ!」と多くの人が思っています。しかし、自然エネルギーは、石油、石炭、天然ガスなどの従来型のエネルギーに比べて新しいエネルギーですから、施設を造ったり、量産体制が整っていなかったり、コストの面で不利な状況に置かれています。

何でもそうですが、「いいものだけど、新しいから不利」というものを普及するためには、そのための仕組みをつくる必要があります。

自然エネルギーを普及するための仕組みにはいくつかありますが、日本では現在、RPS法という、電力会社に発電容量の一定の割合を自然エネルギーでまかなうことを義務づける方法をとっています。

この法律の2014年の目標値が1.63%ですから、電力会社がすべて目標を達成したとしても、日本の電力のうち、自然エネルギーによる発電は1.63%にすぎないということです。これでは、電力1キロワット時当たりのCO2を大きく減らすことはできません。

もっと自然エネルギーを強力に広める仕組みはないのでしょうか?

あります。ドイツなどで大きく太陽光発電などを増やす原動力となっている「固定価格買取制度」です。これは、発電コストよりも高い価格で、長期間買い取ることを保証することにより、10年ほどで太陽光発電の設置コストの元が取れるという仕組みです。

投資の回収期間が短ければ、設置したい人が増え、それに伴って、ソーラーパネルの生産量が増える。そうすると単価が下がって、ますます短い期間で回収できるようになります。また、ソーラーパネルの生産量が増えれば、そこからの利益をメーカーは新技術に投資でき、さらに単価を引き下げたり、性能を向上することができます。(ループ図が描けます!)

このような好循環を回すための仕組みが、固定価格買取制度なのです。発電コストよりも高く買い取るときの値段のギャップは、国民が広く薄く負担する仕組みになっています。

「自分の所はマンションだから太陽光発電はできない。人のためになぜ負担しなくちゃいけないんだ」と言う人がいるかもしれません。しかし、太陽光発電に対する出されている補助金だってだって、私たちの税金です。

太陽光発電を広げるために、補助金を出すのがよいのか、固定価格買取制度のような仕組みをつくるのがよいのか。日本として自然エネルギーを増やしていきたいといったときに、より有効なやり方なのかを考える必要があります。(うちもマンションですが)太陽光発電設備を設置したい人、設置できる人を応援することにより、日本のエネルギー自給率を引き上げ、CO2の排出量を減らして温暖化防止にも役立つ--これは国民全体のプラスになるのではないでしょうか。

日本でも、固定価格買取制度を導入しようという動きがあります。環境省の検討会の試算によると、1世帯当たりの1カ月の負担額は約260円。それによって10年程度で元が取れるようになり、2030年までに現状の55倍の太陽光発電が導入でき、化石燃料の節減や太陽光発電の輸出増加などで約48兆円のGDPと約70万人の雇用を創出できます。エネルギー自給率は約16%まで上昇し、同時に大量のCO2を削減することができます。

月平均260円という負担については、日常生活に最低限必要な使用量には上乗せしないなど、低所得者層への配慮をし、またエネルギーを大量に使う構造の産業への配慮も、同時に考えられています。

化石燃料に頼っている限り、輸入に頼らざるをえません。どうしても、価格の大きな変動に揺らされ、先を読むことが難しくなります。それに対して固定価格買取制度は、当初「お金を動かすことで好循環を動かしていく」ためのコストがかかりますが、しかし、見通しを立てて、日本のエネルギー構造を変えていくこと
ができます。

日本でも、世界35カ国以上で効果が実証されている固定価格買取制度をぜひ早期に導入し、エネルギー安全保障の点からも、温暖化防止の点からも、しっかりと自らの足で立った取り組みを進めていくべきだと考えています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「固定価格買取制度」についても、実効性のある制度になっていくのか、ウォッチし続けたい、発言し続けたいと思っていますが、次の“主戦場”はいよいよ「中期目標」です。。。

こちらのほうがますます一般の方々にはわかりにくく、それだけに、一方的な議論が多いように感じています。

がんばります〜。

 

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