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執筆・連載|原稿執筆・寄稿
日本でCO2削減が進まない6つの理由
―21世紀の環境とエネルギーを考える2009年7月号(Vol.40)「地球考」

米国がオバマ大統領の就任以来、大きく動き始めている。グリーン景気刺激策に続き、排出量取引や自然エネルギーの買取義務付けなどの政策への動きも活発化している。
世界資源研究所によると、「これらの政策が実施されれば、米国の排出量は二〇二〇年に〇五年比マイナス二八%(九〇年比マイナス一七%)になる」とのこと。麻生総理は「米国より日本の中期目標のほうがスゴイ」と胸を張っていたが、日本は、〇五年比マイナス一五%(九〇年比マイナス八%)の目標で、しかもその実現のための手だてを政治的にも政策的にもほとんど打っていない。
 なぜ、優れた環境技術を持ち、国民の環境意識も高い日本でCO2削減が進んでいないのか? 一九九〇年から二〇〇六年の間に、スウェーデンではGDPを四四%増大させつつ、温室効果ガスは八.七%削減した。同期間に日本のGDPの伸びは十九.三%で、温室効果ガスは六.三%増えている。日本に何が足りないのだろうか?

1.科学をベースとしたぶれない軸がない

さまざまな意見や立場をまとめつつ進めていくためには、よって立つ基盤が必要だ。欧米の政治家のスピーチでは、必ずと言ってよいほど「IPCCでは」「科学によると」という認識の共有があり、「だからわが国はこうする」と政策の話が続く。
しかし、日本の政治は相対性(相手との距離感)がベースになっているようだ(米国がこう出るなら日本はここまで出そう、というように)。それではまわりの状況に翻弄されるだけだ。日本でも政治や政策、各界の議論の基盤に科学を位置づける必要がある。

2.資源/エネルギー制約の時代にどういう国にしていくべきか、ビジョンがない

食糧自給率四〇%、エネルギー自給率四%のわが国が、エネルギーや資源の制約がますます厳しくなる時代に、どういう国をめざしていくべきなのか、というビジョンの中での温暖化対策であり、中期目標のはずだ。
日本では今できることを積み上げて目標を定める「フォアキャスティング」方式が多いが、未来が過去の延長線上にないこれからの時代には、「あるべき姿」からを考えるバックキャスティングでのビジョンづくりが必須だ。スウェーデンは「最終的に温室効果ガスはゼロにする」というビジョンを掲げている。

3.ビジョン/目標を実現するための政策パッケージがない

 ビジョンの実現には、政策パッケージが不可欠だ。しかし日本には、企業の自主取り組みと国民の意識啓発に頼り、国全体をある方向へ動かしていくための政策パッケージがない。
 スウェーデンでは、「温室効果ガスを二〇二〇年に四〇%削減」という中期目標の実現のために、「エネルギー税」「炭素税」「自然エネルギー源による発電の補助」「電力認証制度導入」「EUの排出権取引制度へのリンク」などの政策のパッケージを実行しているからこそ、実績が上がってきているのだ。
日本でも意識啓発に頼るのではなく、税制を含めての政策パッケージが求められる。

4.組織や個人が行動を変えたくなる「しくみ」がない

 政策パッケージには、「CO2削減につながる行動をしたほうがトクをする」仕組みが必要だ。そうすれば、意識の有無にかかわらずどの組織も個人も行動するようになるだろう。
 スウェーデンは、化石燃料に対してエネルギー税と炭素税を課すことで、燃料自体は安い石炭よりも、バイオマス燃料の値段が安くなる仕組みを作った。これによって、特に暖房などの燃料転換が大きく進み、CO2が削減された。

5.鍵を握る燃料転換を進める意志がない

 スウェーデンの他にもドイツ、英国など、温室効果ガスを減らしている先進国の成功要因を見れば、燃料転換が鍵を握っていることがわかる。
 日本は一次エネルギーも電源も輸入の化石燃料に大きく依存している。じきにピークオイルがやって来ると言われる今、燃料転換はCO2削減だけではなくて、日本の国づくりの点からもきわめて重要である。
 日本の「発電における再生可能エネルギーの目標」はわずか一.六三%。燃料転換を本気で進め、温暖化にもエネルギー危機にも強い国にしていくという意志は感じられない。

6.コスト・リテラシーが未熟である

 「いくらかかるか」だけではなくて、「それによってどれだけのメリットがあるか」(温暖化対策で省エネ機器に変えればエネルギー代は安くなる、など)、そして「それをやらなかったらどれだけコストがかかるか」(省エネ機器に変えなければ将来のエネルギーコストの上昇で大きな損をする。いま温暖化対策をしなければ、増える災害や熱中症死亡者の増加など将来世代が大きなコストを払うことになる、など)のすべてを説明した上で、市民に考えてもらう必要がある。
「あれも欲しい」「でも負担は嫌」という市民も多いが、それでは物事は進まない。「何かを求めるなら、そのためのコストがかかる」という当たり前のことを受け入れ、その上で「さて、どうしたいか?」を考える訓練が必要である。

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