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執筆・連載|原稿執筆・寄稿
生物多様性 ってなに?
―ソトコト2008年6月号『チビコト』

「生物多様性」という言葉はちょっと難しくて、何が問題なのかピンとこないなあ、という方も多いかもしれません。

たとえば、森の中に入ると、さまざまな植物や動物が生きていますよね。それらの生き物はバラバラに存在しているのではなく、さまざまなつながりを持っています。木に太陽の光が届くと、葉っぱが茂ります。その葉っぱを毛虫や青虫が食べます。その毛虫や青虫を小鳥が食べます。その小鳥を、オオタカなどの猛禽類が食べます。鳥の死骸を食べる昆虫もいれば、落ち葉などを分解する微生物もいます。そうしてできた栄養分で植物が育ちます。

地球上には、数十億年という進化の過程の中で、多くの生物種が生まれてきました。お互いに「食べる・食べられる」という関係(食物連鎖と呼びます)や、虫が花粉を運ぶなどの共生関係でつながり、支え合って生きているのですね。この大きなつながりの網からはずれて存在している生物はありません。すべて何らかの形でつながっており、多様な生き物がいることが豊かな自然を織りなしているのです。この生命の豊かさを表す言葉が「生物多様性」です。

多種多様な生物はお互いに影響を与えながら、自然全体のバランスをとっています。ですから、たった一種類の生物がいなくなっても、全体に影響が出てきます。たとえば何らかの原因で、ある毛虫がいなくなったとしましょう。その毛虫をエサとしていた小鳥は生きていけなくなるでしょう。その小鳥を食べていた猛禽類もいなくなってしまうでしょう。森は、鳥のフンや死骸が提供していた栄養分を失い、植物も生えなくなってしまうかもしれません。

私たち人間もひとつの生物種として大きな「つながりの連鎖」の中に生きています。多様な生物が存在しているおかげで、私たちはさまざまな食料や産業に必要な原料を得ています。私たちが現在使っている薬の60%は自然の産物からつくられたものだといわれます。まだ発見されていないものも含め、さまざまな生物がいずれガンをはじめとする多くの疾病に対する重要な薬を提供してくれる可能性もあります。生物多様性が失われると、私たちの命や人間の生存そのものも脅かされるのです。

現在、生物多様性が危機に瀕しています。生息地の破壊や汚染、野生生物の過剰利用や外来種による在来種の駆逐、少数の種のみを栽培・繁殖するなどの原因が複合的にからみあって、通常の1000倍のスピードで種の絶滅が進んでいるといわれています。

「多少生物がいなくなってもいいじゃないか」という人もいますが、いまの状況は飛んでいる飛行機のビスを1本ずつ抜いているようなものです。何本抜いたら飛行機が空中分解するかはだれにもわかりません。しかも、ビスはつながっていますから、1本抜けばほかのビスも次々と抜けていきます。本当に危ない状況なのです。

このままでは、生物多様性はますます劣化していってしまうでしょう。では私たちはいったいどうしたら、生物多様性を守るための取り組みができるのでしょうか? 

日本では、人間が必要な薪などを得ながら手入れをすることで、自然を守るという「里山」が、生物多様性の保全にとっても大きな役割を果たしていました。薪や炭が石油やガスに取って代わられるにつれて、私たちの暮らしは里山から離れ、里山に思いを馳せることもなくなってしまいました。でもこれから、生物多様性について考えたり取り組んだりするうえで、「里山」は大きな鍵を握っていると思います。その思想やライフスタイルには、たくさんの学ぶべきことがあると思うのです。

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