| 「棚田のわらしべ」 -棚田ネットワーク会報「棚田に吹く風」への寄稿 |
私の「棚田歴」はとても浅いのです。2年前の1月に、たまたま街でステキな写真展を見つけ、そこで見た50点の作品のうち、3点が「棚田」の写真だったのです。 私は、会議通訳者・環境ジャーナリストという名刺を持って、自分の好きなことばっかりやっていますが、好きなことのひとつとして、環境メールニュースを発行しています。 それでさっそく、棚田の話をニュースに書いたところ、たくさんの読者から反応があって、「ああ、棚田というのは、日本人の琴線に触れるものを持っているのだなぁ」と思いました。それからも、何度も棚田のことを書いています。 自分の目で、はじめて棚田を意識して見たのは、1年半ほどまえのことでした。夏休みの能登半島一周旅行の途中で、輪島近くの千枚田に寄りました。数知れない棚田の重なる向こうに、真っ青な海が広がり、人工美と自然美のハーモニーを一望できるとても素敵な場所でした。 もう少しつながりを持ちたいな、と思いました。棚田に「関わる」というような、しっかりした意識ではなく、ときどき寄せてもらえる棚田があったらいいなぁ、というぐらいの感じです。それで、棚田支援市民ネットワークの会報に載っていた、新潟の安塚町の「コシヒカリオーナー制度」に参加させてもらうことにしました。昨年は3回「ウチの田んぼ」におじゃましました。 まず、5月下旬の田植え。子どもたちは、ぬかるみに足を取られて、キャーキャー大騒ぎです。稲を植えるのはもちろん、ヒルに出会ったのも、生まれてはじめて。私もやらせてもらって、「達成感のある仕事だな~」と思ったのでした。 もちろん、毎日の仕事としては、とてもキツイ大変な仕事(大きな機械は入りませんから、特に)だと思いますが、かがんで、稲を植えていって、反対側の端までたどりついて、腰を伸ばすと、自分がやった作業がちゃんと「見える」んですね。(あ、曲がってる、ということも含めて!^^;)自分のかけた時間や労苦(というほどでもないが)が、きちんと自分の目に見える、ということはいいなぁ、すがすがしいなぁ、と思ったのでした。 夏休み旅行の帰りに、また寄らせてもらいました。田植えの時には、10センチぐらいのか細い葉っぱだったのに、立派な青年?になって、稲穂ものぞいています。 改めて、「土とお日さまと水」の力を感じます。田植えの時に一束もらって帰って、ベランダにバケツに「田植え」した稲も、大きく育ち、しっかり稲穂も頭を垂れ始めています。葉っぱも茶色になってきました。 安塚町の稲刈りには予定が合わなかったので、脱穀におじゃましました。農家の回りの木に、ヒモが何列にも渡してあって、イネの束が渋い黄色のカーテンのようにかかっていました。エプロンと頭を覆うタオルを貸してもらって、ゴム長を履いて、私も格好だけは一人前(^^;)。はしごを掛けて、稲の束を降ろしていきます。コンバインのスイッチを入れて、稲の束を向きを揃えて、入れていきます。 手も入れそうになるので、素人に作業をやらせてくれる農家の方はコワかったのではないかと思います。 私たちがお借りしたあのそれほど大きくない1枚の田んぼから、こんなにたくさんのオコメが穫れるの!と本当にびっくりしました。大地と水と太陽の偉大さを感じました。すごい! さて、ベランダのバケツの中のお米ですが、ハサミで刈り入れをし、手で穂から外しました。数十粒ですから、すぐにできました。問題は、この穀粒から殻を取る脱穀です。これはカタクて、手ではできません。さあて、どうすれば……? 「すり鉢と野球のボールはどう?」というアイディアをもらったので、すり鉢とすりこぎで試してみたら、おもしろいように殻がとれました! すり鉢の底から、もみがらをかきわけて、白い米粒を拾います。送ってもらった田んぼのお米と比べてみたら、まったく種類の違うお米かなというほど違っていてびっくりしました。ベランダのバケツ田のお米は痩せっぽっちで色も黄色がかっています。やっぱり「氏」は同じでも「育ち」が違うと、こんなに違うのね、と思いました。ベランダの土と水道水と洗濯物の陰から差し込む日光で、がんばったね!といとおしくて、まだ飾ってあります(^^;)。 安塚町のコシヒカリオーナー制度での「私の棚田農業経験」は、まるでキセルみたいでしたが(何せ田植えと脱穀なので……^^;)、それでも本当にいろいろなことを知り、聞き、味わい、楽しみました。 そして、その棚田でとれたお米が2キロ袋で届きます。 このおいしいお米を、お世話になった人にあげたいな、どうせだったら、いま日本でもあちこちで地域通貨が生まれているけど、「個人通貨」にしちゃおう、と考えて、「おいしい棚田米のお届け券」というはがきを作りました。http://www.ne.jp/asahi/home/enviro/doc/hagaki このはがきは、「新潟県安塚町の棚田からのお米(2キロ)を送ることをお約束するもの」ですが、受け取った人が、他の人にプレゼントすることができます。最後にお米を受け取ろうと決意した人が、送り先の住所を書いて投函すると、宛名である私のところに届き、私がお米を発送する、というしくみです。いってみれば、限定10枚発行の「個人通貨」です!(^^;)。「通貨」が、「交換の手段」であるなら、「ありがと」の思いを交換する手段でもいいし、そのために、国家通貨(円)でない、こういうはがきを個人が勝手に作ってもいいでしょう、と。 私の「個人通貨」である「棚田米引換券」は、今のところ1枚が返ってきています。はがきがいろいろな人の手を渡る間に、「こんな通貨(?)があるのねぇ」という発見と、あの安塚の棚田に吹く風を届けてくれれば、と思っています。 |
| ← 前の記事 | index | 次の記事 → |
