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| 【2】失速する経済成長 |
レスター・R・ブラウン 2001年の世界経済成長率はわずか2%にとどまり、久々の低水準となった。この経済成長率は人口増加率をわずかに上回ったにすぎず、このため一人当たり国内総生産は7,392ドルから7,454ドルと、1%未満の増加にとどまった。
世界経済後退の主な原因は米国にあった。米国は他の追随を許さない世界一の経済大国であると同時に、多くの国にとって主要な輸出市場でもあるためだ。米国経済は2000年に4.1%の強い伸びを記録したものの、2001年には成長率わずか1.2%と低迷した。この間、カナダ経済が歩調を合わせるように減速し、成長率は4.4%から1.5%に落ち込んだ。 西欧では、四大先進工業国すべてが2001年に経済成長の減速を経験した。フランス、イタリアおよび英国の経済成長はそれぞれ、3%またはそれ以上の水準から2%前後に落ち込み、また四大国の中でも最大の経済規模を有するドイツでは3%から1%未満に減少した。 中南米の大国における経済成長も大幅に減速した。この地域の最大国であるブラジルの成長率は4.4%から1.5%に減少。経済政策の失敗が重なった影響で近年深刻な状況にあったアルゼンチンの経済は、2001年に5%近くも縮小した。(もっとも、2002年には状況がさらに悪化することとなるのだが。)残る大国であるメキシコの成長率は、2000年の6.6%から2001年にはゼロまで低下した。これは世界の大国の中でも最大規模の落ち込み幅であった。 中東においても経済成長は失速していた。世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアの成長率は、2000年の4.5%から2001年には2.2%に減少。イランに関しては、2000年、2001年ともに成長率5%で安定していた。その一方で、エジプトの成長率は5%から3%をわずかに上回る水準にまで落ち込んだ。 アジアでは日本経済が引き続き低迷しており、2000年の2.2%という緩やかな成長から2001年には実質のマイナス成長(マイナス0.4%)となった。危機的状況にまで膨れ上がった銀行不良債権の処理など、抜本的な経済改革を検討しない限り、日本は経済成長の維持が難しくなるだろう。2000年に9%成長を遂げた韓国の成長率は、2001年に3%まで下がった。 一方、東南アジアの発展途上国でも成長は芳しくなく、全体的に見て成長率は鈍化した。インドネシアでは約5%から3%、タイでは4.6%から1.8%へそれぞれ低下。しかし、マレーシアではさらに落ち込みが激しく、8%からほぼゼロにまで下がってしまった。 2001年、インドでは成長率が5.4%から4.3%に下がり、バングラデシュでも5.5%から4.5%に低下した。パキスタンの成長率は2000年、2001年ともに4%を若干下回る水準で安定していた。 中国はアジアにおける花形経済国家の地位を維持し、2000年に8%成長、2001年の成長率は少し下がったものの7.3%だった。しかし、複数の間接的指標から、中国の成長が一貫して誇張されていることが示唆されており、中国の経済計算に対する疑問は残っている。 旧ソ連諸国では、ロシアの経済成長が2000年の9%から2001年には5%に落ち込んだ。対照的に、長らく低迷状態だったウクライナ経済は世界の流れに逆行し、2000年の6%成長から2001年には9%成長を遂げた。 アフリカでもいくつかの国で世界的な成長減速の流れに逆らう動きが見られた。アルジェリア経済の成長率は2000年の2.4%から2001年には3.5%に伸び、モロッコ経済も同時期、2.4%から6.3%に成長した。そしてナイジェリアも石油価格の高騰を受け、4%成長を維持した。 しかし、アフリカ地域の経済および社会発展の実現は容易ではない。過去10年間で、同地域の経済は回復してはいるものの、人口増加の速度に見合う程ではない。この結果1980年から1999年の間に、サハラ砂漠以南のアフリカ地域では、一人当たり国民所得が約12%減少している。社会発展を示すのにおそらく最も適した指標は平均寿命であるが、この地域ではわずか50歳である。今後10年間で、エイズウイルス(HIV)の感染により数百万人の命が奪われ、平均寿命はさらに短くなると考えられる。 国際通貨基金発表の経済成長に関するこれらのデータからは、読みとれないものがある。環境上持続不可能な経済生産の占める割合である。入手可能なデータから推測すると、世界の穀物収穫高のおよそ8%が持続不可能な水利用により生産されている。過剰な水の汲み上げは、いずれ停止せざるを得なくなるだろう。下がり続ける地下水位から水を汲み上げるのはコストがかかりすぎるし、それ以上に可能性が高いのは、帯水層(水の充満した地下の堆積層)の水が枯渇してしまうことだ。自然に水が補給される帯水層が枯渇すれば、それは、水を汲み上げるペースを補給されるペースにまで落とす必要があることを意味する。しかし、水の補給が不可能な化石帯水層が枯渇すれば、それ以上水の汲み上げはできなくなってしまう。 同様の状況は林産物にも起こっている。現存する森林地帯の皆伐(対象地域の樹木をすべて伐採し収穫すること)や縮小により、地球上の森林の長期的な生産力は低下し続けている。森林伐採は、始めのうちはプラスの効果をもたらすかもしれないが、結局は土壌浸食や洪水という一連の代償を伴うことになる。 漁場でも、短期的な利益を最大化するために過剰漁獲が行われている。海洋漁場のおよそ4分の3で、持続可能な漁獲量かあるいはそれを上回る量の魚が捕られている。漁場を保護するために、政府が漁獲量の削減に取り組んでいる国もあれば、漁場がそのまま崩壊の道を辿っている国もある。いずれにしても、結果としては全体的な漁獲量が減少することになる。 こうした流れや、他の様々な傾向が正に明らかにしているのは、持続可能な生産と持続不可能な生産を明確に分けていない経済データのみに依存するのは危険だということだ。この2つを区別しないと、発展を誇張して解釈したり、間違った安心感を持つことになりかねない。 |
参考データ:
和訳:小林紀子、江口絵理、山本夕佳、田中美穂、丹下陽子、浜崎輝、森由美子、伴昌彦、横内若香 |
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