![]() |
| 【3】漁獲量は横ばい |
ジャネット・ラーセン 全世界を対象とするものとしては最新である2000年のデータによると、この年の世界の漁獲量は9,480万トンと報告されている。海洋からの漁獲量は数十年間堅調な成長を続けた後に横ばいとなり、1980年代後半以降は8,500万トンから9,500万トンの間で変動してきた。海洋漁場の約4分の3では、持続可能な漁獲量ぎりぎり、あるいはそれを超える量が漁獲されている。こうした漁場の3分の1で、水産資源が減少しつつある。
世界最大級の漁業国である中国には、漁獲量を過剰報告しているのではないかという疑惑が持たれている。一部の科学者はこの過剰分を修正し、世界の漁獲量は実際には1988年以降毎年36万トンずつ減少しているとの判断をしている。さらに、エルニーニョ・南方振動(ENSO)により水産資源量が大きく変動するペルーのカタクチイワシも除外して考えると、世界の漁獲量はこの期間に年66万トンのペースで減少していることになる。 北大西洋の漁獲高の急速な減少を指摘する証拠が、最近明らかになっている。この海域では漁獲努力量が3倍になったにもかかわらず、タラ、マグロ、ハドック、カレイ、メルルーサなど、多くの一般的な魚種の漁獲量が過去50年のうちに半減した。ニューファンドランドのタラ漁など、先般も漁業崩壊がいくつか大きく報じられたが、規模を考えると局地的なものにすぎない。しかし、北大西洋の減少はこの海域全体に及ぶものである。 北大西洋の漁業には、収入面を支え、漁船の燃料費や設備費の一部を補助するために、少なくとも25億ドルの政府補助金が毎年支払われている。世界全体では、漁業補助金の合計は少なくとも150億ドルにのぼるとされるが、実際はこれよりかなり多い可能性もある。1993年の国連食糧農業機関の報告によると、世界の漁業の操業費は営業収入を毎年500億ドル以上超えている。補助金がなければ、世界の水産業は破綻するであろう。 世界中で魚を主要なタンパク源としている人々は、およそ9億5,000万人である。これに加えて、海洋での漁業や漁業に関連する産業が支えている人口は、約2憶人。破綻した産業が支えるには、多すぎる人数だ。 現在行われている漁業は経済、環境いずれの面からも持続可能とは言えない。この事実は助成金によって隠蔽されている。助成金によって1台あたりの重量が100トンを超える、最新技術の漁船団が、全世界で23,000台以上建造された。トロール漁船のような巨大な船舶は、一度に大量の魚を獲ることの出来る大型の網を引き、混穫してしまう。処理設備を搭載している船舶もある。大型の船舶は大量のエネルギーを消費する。今日1トンの魚を捕獲するのに要する燃料は、20年前の2倍である。世界の漁船全体では、漁場を維持出来る漁獲高の2倍以上を獲る能力を持っている。 海洋からの漁獲高は横ばい、もしくは減少しているため、養殖場での魚の生産量は急増している。1990年から養殖量は毎年ほぼ10%の勢いで増加している。これは動物性タンパク質生産業界で2番目に成長率の高い家禽の2倍以上の成長率だ。2000年の総養殖量は3,600万トンであった。1950年には養殖は魚の供給量の1%未満に過ぎなかったが、現在は世界の魚市場の27%をも占めている。 生け簀や養殖場での魚の生産量が増えれば、海洋の漁場への漁獲圧は軽減され得る。しかし、これは適正な養殖が行われたときに限っての話である。サケやエビのような人気の高い養殖魚の多くは肉食で、餌として海洋から捕獲した魚の肉や脂を必要としている。種類によっては1kgを生産するのに5kgの野生の魚を必要としている。海から餌用の小型の魚類を獲り尽くしてしまうことは、大型の魚類の食糧を奪うことにもなるのだ。 世界に2,300万トンの養殖魚を供給する中国は、数千年前から養殖を行っている。現在は、約500万ヘクタールの土地でおもに草食性の魚を生産している。また、その他に170万ヘクタールの水田を養殖魚の池としても活用している。中国は鯉の混合養殖という画期的な養殖法を開発した。これは、自然の生態系と同じように、補完的な食習慣を持つ数種類の鯉を一緒に育てる方法である。 陸上で養殖漁業と農業を合体して行う中国の手法は、養殖漁業者の手本となるだろう。陸上で生産すれば、沿岸生息地の破壊や藻の大繁殖を引き起こす富栄養化汚染など、海洋養殖によって生じる厄介な問題を最小限に抑えることができる。また、魚の脱走や養殖密度の高い生け簀で起こりがちな病気の蔓延を通じて、外来種がその地域に入る危険性を減らすことができる。 一部の海洋漁場では、漁業を全面的に禁止する海洋保護区を設定し意識的に漁獲量を制限することが、唯一の資源の回復法である。海洋保護区では魚の個体数や種類が増え、また保護区域内、商業漁業可能区域内の双方でより大きな魚がとれるようになったことが示されている。数年もたてば、立ち入り禁止水域の周辺は魚の豊富な水域へとよみがえるだろう。 消費者は魚の消費量を減らすか、または、責任をもって飼育された草食性の魚や十分に管理された漁場の魚を少なくとも購入することで、自然界の魚を保護することができる。独立した国際認証機関である海洋管理協議会(MSC)は、これまでに6つの漁場を持続可能な漁場として認定してきた。漁場に気を配りながら管理することは、基金を慎重に扱うことにたとえられる。つまり、元本(水産資源)を大切に使えば、人々は永遠に利息で生きていくことができるのである。 |
参考データ: 和訳:小林紀子、江口絵理、山本夕佳、田中美穂、丹下陽子、浜崎輝、森由美子、伴昌彦、横内若香 |
| ← 前の記事 | index | 次の記事 → |


