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| 【5】史上最高の値となった炭素排出量 |
リラ・バックリ- 化石燃料の燃焼に由来する炭素の排出量は、2003年に68億トンという記録的な数字に達した。前年に比べて4%近い増加である。世界の炭素排出量は18世紀の後半から増加の一途をたどっており、1950年代からは急増している。実際、年間排出量は、1950年からこれまでに4倍になっている。 世界の炭素排出量の4分の3は、化石燃料、つまり石炭、石油、天然ガスの燃焼によって生じている。残りは、主に森林破壊によるものである。炭素を排出している主要4部門のうち、発電が最大の35%を占めており、運輸と産業がそれぞれ20%に相当し、残る25%は住宅および商業用の建物からのものである。(図3参照) 化石燃料の燃焼による炭素排出量の3分の2は、わずか10カ国から生じている。米国の人口は世界の5%だが、排出量は最大で世界全体の4分の1近くを占めている。2番目は中国で、14%弱である。そのほかの主な排出国は、ロシア、日本、インド、ドイツである。(図4および図5参照) しかし、この先何十年かの間、炭素排出量の増加のほとんどは途上国から生じると予想されている。例えば、1990年以降、世界全体の炭素排出量は13%増加したが、中国では47%増えている。実は、2003年に世界全体で増加した排出量のうち半分近くが、中国1カ国で占められているのだ。 炭素排出量が一貫して増加してきた結果、大気中の二酸化炭素(CO2)の量は、1750年からこれまでに31%増加している。これは、過去2万年の間、全く例のない増加率である。 自然界は、通常、炭素排出のかなりの部分を「炭素吸収源」として知られる海洋や森林で吸収し、大気中への蓄積速度を和らげている。しかし、最近の傾向は、排出が吸収を上回っていることを示している。過去20年にわたり、大気中のCO2濃度は毎年平均1.5ppm(百万分率;1ppmは100万分の1)ずつ増加した。しかし、この2年間には、2.04ppmおよび2.54ppmという、原因不明かつ驚くほどの増加が見られた。これは、自然界に備わっている炭素排出の増加を緩和する能力が弱まっていることを示している。(図6参照) CO2やそのほかの温室効果ガスは、濃度が高くなるにつれて地球の熱を閉じ込め、気温を上昇させる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の平均表面温度が、2100年までに1990年よりも摂氏1.4~5.8度(華氏2~10度)上昇すると予測している。もしも世界の炭素吸収源が本当に飽和しつつあるのなら、実際には気温がもっと上昇する可能性がある。 しかし幸いなことに、私たちには炭素排出量を削減する技術がある。石炭や石油など炭素集約度の高い化石燃料への依存から脱し、再生可能エネルギーや炭素集約度の低い天然ガスへと切り替えていくことで、排出量はかなり削減できるはずだ。 例えば風力エネルギーは現在、炭素を全く排出することなく世界中で2,400万人に供給できるだけの電力を生産している。そして潜在的にはもっと発電できる可能性がある。風力エネルギーのメリットは理解され始めており、風力発電の利用は1年で31%も伸びている。 よりエネルギー効率の良い工業設備や家電製品を使ったり、生産過程や建物改修に関して新たにエネルギー効率基準を設けたりすることでも、炭素排出量と光熱費の削減効果は出るだろう。 公共交通機関を利用できない場合は、ガソリン・電気ハイブリッド自動車に乗れば炭素排出量は低く抑えられる。例えば非常にエネルギー効率の良いトヨタのプリウスは、普通のガソリン車に比べガソリン消費量が半分以下なので、炭素排出量も半分以下になるのだ。 政策レベルでは、規制や市場を基盤とした政策を通じて炭素排出を削減しようとする政府の取り組みが不可欠である。これには炭素排出を削減する技術の研究開発費を増やすほか、炭素税の引き上げや炭素集約度の高いエネルギー源への助成金廃止といったエネルギー効率化奨励策がある。 デンマークでは、炭素排出量の多い自動車への課税を重くし、エネルギー効率の良い自動車の購入登録料は引き下げている。オランダでは、国内6カ所の石炭火力発電所に対して2008年から2012年までの間に炭素排出量を600万トン削減するよう義務付けた。そして日本では、政府機関に対し既存の公用車を2010年までに低公害自動車1,000万台および燃料電池自動車5万台に切り替えるよう呼びかけている。(訳注) 一方、米国でブッシュ政権が「世界気候変動イニシアチブ」政策で削減しようとしているのは、炭素排出量ではなく原単位排出量、つまり国内総生産1ドルあたりの炭素排出量だ。この計画によると、原単位排出量は向こう10年間で18%減少するという。しかし経済成長が見込まれる中、温室効果ガスは2020年までに19億トン、つまり1990年水準から40%も増加すると言われている。 ブッシュ政権の政策は、炭素排出削減策が経済成長の足かせになると誤って想定している。そのように想定することで、炭素排出量の増加がもたらす社会的代償を無視していると同時に、エコ・エコノミーへの投資には経済的利点があることも見落としてしまっているのだ。 例えば「進歩を再定義する(Redefining Progress)」(政策に関わるアメリカのNGO)が行った最近の研究は、クリーンでエネルギー効率の高い技術への投資計画を綿密に描いている。そしてそのような技術によって、2025年までに140万もの良質な雇用が創出され、1世帯あたり年間平均1,275ドルも光熱費が節約できるとしているのだ。 世界最大の炭素排出国が率先して取り組んでいないものの、国際社会は炭素離れの方向に進んでいる。最近、ロシアが京都議定書を批准したので、議定書を批准した工業国は、炭素排出量を2012年までに1990年の水準より少なくとも5%削減することになる。 現在、工業国のCO2排出量の61%を占める国々が議定書を批准しており、発効に必要な55%を大きく上回っているので、2005年初めには議定書が発効するだろう。米国とオーストラリアは批准を拒否しているが、発効によって影響を受けることは間違いない。なぜなら、国際的に統一された排出量取引のプログラムが実施され、効率の良いエネルギーと技術の競争市場が新たに生まれるからである。 現在の予測では、京都議定書が発効しても、各国が経済成長を続け、さらに化石燃料を燃やす限り、炭素排出量は急増し続けるとされている。科学者によると、今後の気候変動を緩和するためには、現在の炭素排出量を直ちに70~80%削減する必要がある。 この必要性を認識して、すでに議定書で定められた5%の削減目標を上回る成果を上げている国もある。ドイツは1991年以降、排出量を9%削減し、2020年までにさらに40%削減できないか検討している。1990年から排出量を8%削減した英国は、2050年までに60%の削減を目指し、ほかのEU諸国も後に続くように求めている。 「デビッド・スズキ基金」(カナダの環境団体)と「カナダ気候行動ネットワーク」(カナダ国内にある環境団体のネットワーク)の報告書には、2030年までにカナダの温室効果ガスの排出量を半分にする計画が打ち出されている。中央政府が行動を起こさない国では、地方自治体が動き出しており、何と世界中で600以上の都市が独自に炭素排出量削減計画を策定しているのだ。 京都議定書は炭素排出量削減に向けた大事な第一歩ではあるが、長い目で見ると、米国、そして中国とインドのような途上国の関与がなければ、長期にわたる努力も無駄に終わるだろう。炭素排出量を抑制し、気候の異変を避けるためには、京都議定書以上の削減努力をし、世界中で排出量を大幅に抑えなければならないのである。 |
【訳注】下記の財団法人運輸低公害車普及機構によると、1,000万台と5万台は日本全体の目標値であり、政府公用車として低公害車に切り替えるのは7,000台のようです。http://www.levo.or.jp/research/rsc02_03.html 参照データ: 和訳:丹下、木村、AI |
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