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レスター・ブラウンコーナー|エコ・エコノミー指標
【8】上昇する地球の気温

レスター・R・ブラウン

昨年の2001年は、1867年に記録が開始されて以来2番目に気温の高い年となった。1998年が過去最高であるが、昨年はこれに迫る記録となり、1980年頃から始まった気温の顕著な上昇傾向は依然続いている。1867年以降の記録を高い順に並べると、15位まではすべて1980年以降のものとなる。

グラフ:地球の平均気温の推移 1867年~2001年

昨年の気温データを見れば、気温は上昇傾向にあり、そのために約11,000年前に人類が農耕を始めて以来続いてきた、比較的気候の安定した時代に終止符が打たれたことがさらに明らかになる。

NASAのゴダード宇宙研究所は、1867年にまで遡る各気象観測所の概算を基に、地球の気温を月単位で集計している。それによると9月としては、2001年が記録史上、最も気温が高く、11月についても同様な結果となっている。(別表データ参照) そして、過去12カ月のうち6カ月-2001年の8月と12月、2002年の1月、3月、4月、5月-は、それぞれ記録史上2番目に気温の高い月となった。

2001年の地球の平均気温は摂氏14.52度と算定される。最高記録となった1998年は14.69度であった。1899~1901年までの地球の平均気温は13.88度であったが、1999年~2001年には14.44度となり、20世紀の間に0.56度上昇した。しかし、その8割は最後の20年間で上昇したものである。

この0.6度弱という20世紀の気温上昇は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した将来予測に比べればまだまだ小さい。IPCCの予測では、今世紀の間に気温が1.4~5.8度上昇するとされているのだ。これは、最低の場合でも20世紀の2倍以上、最高では10倍近くもの勢いで気温が上がることを意味する。

海面上昇についても20世紀のデータと21世紀の予測とでは格段の差があり、これもまた気がかりなことだ。20世紀の間に、海面は推定10~20センチ上昇した。一方で、IPCCが予測した今世紀の海面の上昇幅は9~88センチなのだ。

気温の上昇は、決して自分たちの生活とは無関係な抽象的な問題ではない。気温が上昇すれば、熱波が激しくなり、干ばつが深刻化し、氷河が融解し、暴風雨の威力が増し、洪水が破壊的になり、海面が上昇する、といった具合に無数の物理的変化が生じる。このような変化が生じると、今度は、食糧の安全保障や低地に住む人々の暮らし、さらには各地の生態系における種の構成にまで、影響が及ぶ。

気候変動は多くの点で食糧安全保障に影響を与えている。2000年に世界銀行は、海面が1メートル上昇すれば、バングラデシュの稲作地の半数が水浸しになってしまうことを示した地図を発表した。バングラデシュでは、米の供給量が半分に減ってしまうだけではなく、国民の大多数が生活の糧を失ってしまうことになるのだ。この国の人口は1億3,400万だが、年間270万人の割合で増加の一途をたどっており、その一方で、耕作地面積は減少し続けている。この両者を考え合わせると、バングラデシュの未来は明るいものではない。

生態系にも広範囲にわたって変化が起きている。近年、各国政府や環境保護に携わる組織は、多額の投資を行い、特定の地域を公園や保護区に指定して生態系を保護してきた。しかし、気温の上昇を食い止めることができないなら、地球上で保護が可能な生態系など存在しない。何もかもが変化してしまうのだ。

毎年新たに発表される気温データは、IPCCの最新報告書「IPCC第3次評価報告書」を作成した著名な科学者グループの懸念をますます強めるものだ。これらのデータを見れば、素人目にも何が起こっているかは一目瞭然だ。化石燃料の燃焼が地球の気候に変化をもたらしているのだ。

大切なことは、地球の気候を変化させてしまうことは深刻な問題であり、軽々しく扱われる問題ではないということだ。エネルギー経済を炭素型から水素型へと変えることによって、私たちは気候変動を食い止めることができる。私たちにはそれを実現するだけの技術力があり、経済的にも見合うようになってきている。気候変動が手に追えないほど悪化していく前に、私たちは知恵と意志を動員して、エネルギー経済の再編成を進めることができるのだろうか?

参考データ:
図表1 地球の平均気温の推移 1867年~2001年
図表2 地表の平均気温と大気中の二酸化炭素濃度の推移 1950年~2001年

和訳:酒井靖一、小林紀子、浜崎輝、山田はるみ、五頭美知、小宗睦美、渡辺千鶴、小野寺春香、長谷川浩代

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