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| 【10】急成長する風力発電 |
レスター・R・ブラウン 世界の風力発電容量は、2000年の1万7,500メガワットから2001年の2万4,000メガワットへと急増し、1年間で6,500メガワットすなわち37%という驚異的な伸びを示した。風力発電のコストが下がり続け、また気候変動に対する社会的懸念が広がるにつれ、世界は急速に風力発電へと向かいつつある。
1995年以降、世界の風力発電容量は5倍という驚くべき増加を示している。それとは全く対照的に、主要な発電エネルギー源のひとつである石炭の使用量は、1996年にピークに達した後、6%減少している。 通常、1メガワットの風力発電容量は、工業化社会の350世帯分、約1,000人分の電力需要を満たすことができる。つまり、現在利用可能な2万4,000メガワットの発電容量は、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの人口の合計に匹敵するおよそ2,400万人の住宅用電力需要を賄うことができる。 風力発電容量においては、ドイツが世界をリードしており、8,750メガワットと全体の3分の1以上を占めている。2位は1980年代初めにカリフォルニア州で最新の風力発電産業を起こした米国で、4,250メガワットである。3位はスペインで3,300メガワット、4位はデンマークで2,400メガワットである。デンマークは、現在電力の15%以上を風力から得ている。2001年に増加した世界の発電容量のほぼ3分の2は、上位3カ国に集中しており、ドイツが2,600メガワット、米国が1,700メガワット、そしてスペインが930メガワットである。米国については、2001年に、発電容量がおよそ67%増加したことになる。 このように目覚しい成長がみられるものの、地球の風力資源の開発はようやく始まったばかりである。人口密度の高い欧州の沖合いには、利用しやすく、かつ地域全体の電力需要を賄えるだけの風力エネルギーが存在する。米国では、大草原地帯に位置する諸州の豊富な風力エネルギーを活用すれば、国全体の電力需要を賄うことができる。そして中国は、風力だけで優に現在の発電容量を倍増させることができる。 米国では、過去15年間で優良立地における風力発電のコストが急激に下がってきている。1980年代半ばには1キロワット時当たり35セントであったのが、2001年には4セントにまで低下した。(上記グラフ参照) さらに、最近の長期供給契約の中には、1キロワット時あたり3セントの契約がいくつか見られる。石油、石炭、原子力発電への既存の補助金との格差をなくすため1993年に風力エネルギー生産税控除(PTC)が導入されて以来、米国の風力発電の成長は著しい。コロラド、アイオワ、カンザス、ミネソタ、ニューヨーク、オレゴン、ペンシルバニア、テキサス、ワシントン、ワイオミングの各州で新たなウィンドファームが稼動を始めた。2002年の3月にPTCが2003年末まで延長されたことで、風力発電の急成長を支える土壌ができた。 風力による低コストの電気を使えば、水の電解によって水素を生成することも可能となる。その水素を貯蔵し、風力が弱いときに、ガスタービン発電用の予備燃料にすることは簡単にできる。長い目で見れば、風力発電を利用して得られる水素は、天然ガス資源が枯渇した際、ガス火力発電所における代替燃料の最有力候補となる。 水素はまた、現在、大手自動車メーカーがこぞって開発に取り組んでいる燃料電池エンジンにうってつけの燃料である。ホンダとダイムラー・クライスラーの2社は2003年に燃料電池自動車の販売を開始する計画である。 風力発電は長期的な電力価格の安定と、エネルギー自立をもたらす。風力発電による電気のコストは安く、現在も下がり続けており、そのうえ、天然ガスのような急激な価格高騰の恐れがない。どこにでも存在する風力にはOPECのようなカルテルは存在しない。風力は無尽蔵であり、社会が必要とする以上のエネルギーを供給し、その上、気候変動を引き起こすこともない。 風力タービンの製造と風力開発への投資はこれまでも大きな利益を上げてきた。2001年、ハイテク企業が軒並み、売上、収益の壊滅的な減少、そして株価の下落に苦しむ中、風力産業の売上は大幅に伸びた。例を挙げると、世界有数の風力タービンメーカーであるデンマークのノルデックス社の2001年から2002年会計年度上半期の売上高は47%増であった。 ここ最近の発電容量の伸びにもまして、将来の成長予測には目を見張るものがある。欧州風力エネルギー協会は最近、欧州の2010年の風力発電量の予測値を4万メガワットから6万メガワットに修正した。 フランスは長年、風力発電を軽視してきたのだが、2000年12月に今後10年間で風力発電量を5千メガワットにまで引き上げると発表した。アルゼンチンはその数週間後に、パタゴニア地方における3千メガワットの風力発電開発計画を発表。英国は2001年4月に、シェル石油など数社の入札相手に1,500メガワットの風力量が見込まれる洋上発電のリース権を売却した。さらに2002年初頭、中国は2005年までに風力容量を1,200メガワットに拡大する計画を発表した。 米国の風力発電容量は飛躍的な伸びを示している。オレゴン州とワシントン州の州境で実施されている261メガワットの風力プロジェクト(Stateline Wind Project)では、今年(2002年)後半に発電容量が300メガワットに拡大され、世界最大のウィンドファームになる。テキサス州では2001年、複数のプロジェクトにおいて約900メガワットの発電容量が新たに追加された。この中には、州西部のキングス・マウンテンにある、当時世界最大だった278メガワットを有するウィンドファームも含まれている。 サウスダコタ州では、カリフォルニア州の風力エネルギー開発の先駆者であるジム・デルセンが、州中東部の9万ヘクタールの農場や牧場に吹く風の使用権を獲得した。彼は、3,000メガワットの発電容量を有する巨大ウィンドファームを建設し、その電力をアイオワ州を経由して、イリノイ州など中西部の工業地帯に供給することを計画している。 欧州では現在、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダ、スコットランド、スウェーデン、英国の沖合で、洋上風力プロジェクトが続々と立ち上がっている。 ドイツ風力エネルギー研究所は、2002年に2,900メガワット、さらに2003年には2,400メガワットの発電設備の建設を計画している。これらが計画通りに実施されれば、ドイツの風力発電設備の総容量は、政府の2010年の目標値である1万2,500メガワットを、2003年末までに優に上回ることになる。 こうした勢いのある産業が、将来どのくらい成長するかを予測することは難しい。しかし、風力資源の開発は、国内の風力発電容量が100メガワットを超えると急速に進む傾向がある。米国は1983年にこの分岐点を超えた。1987年のデンマーク、1991年のドイツに続いて、1994年にはインド、1995年にはスペインがこの分岐点を超えている。 さらに1999年末までに、カナダ、中国、イタリア、オランダ、スウェーデン、英国がすべてこの分岐点を越えた。2000年には、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルがこのリストに加わり、2001年には、フランスと日本も分岐点を超えている。すなわち2002年初めには、世界人口の半分を占める16もの国が、風力発電開発急成長の段階に突入したことになる。 風力エネルギーは電力や水素という形で、現代経済の多様なエネルギー需要をすべて満たすことができるため、新たなエネルギー経済の基盤になることが期待されている。現在、風力タービンが炭鉱に取って代わり、水素生成装置が精油所に取って代わり、燃料電池エンジンが内燃機関に取って代わる中、私たちはこの新たなエネルギー経済が姿を現しつつあるのを見ることができる。 |
参考データ: 図表1: 米国における風力発電1キロワット時当たりの発電コストの推移 1982年~2001年 http://www.earth-policy.org/Indicators/indicator10.htm 和訳:渡辺千鶴、小野寺春香、A.I.、山本夕佳、長谷川雅美、飯田夏代、木村ゆかり、小林紀子、梶川祐美子
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