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| 石川県金沢市の「バストリガー方式」による公共交通優先の取り組み (2011.07.11) |
那覇に来ています。昨日は一般市民向けの講演のあと、沖縄大学の学長を務めていらした桜井先生と対談をさせていただきました。桜井先生が、学生が大学に来るのにクルマを使うとおっしゃって、できるだけ公共交通(バス)に移行していくには、という話題になったとき、「金沢市のバストリガー」の取り組みをご紹介しました。 メールニュースでもまだご紹介していなかったなあ、と思ったので、JFSのニュースレターからご紹介します。とても参考になる、日本初・日本発の取り組みです。 この記事は、以下の本にも入っています。いろいろ参考事例満載の本なので、ぜひどうぞ! 『「エコ」を超えて―幸せな未来のつくり方』 > 第4章 地域が国をリードする時代へ 以下、読みやすさのために改行を増やしてお届けします。 サイトに載っている記事には写真などもあるので、ぜひごらん下さい。 ~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ニュースレター】地方都市から始まる新しい交通モデル 金沢市 JFS ニュースレター No.89 (2010年1月号) シリーズ:地方自治体の取り組み 第28回 金沢市は人口約46万人の石川県の県都です。日本三名園の一つである兼六園を有するなど観光地として有名ですが、実は公共交通のバスを有効活用する施策を実施してきた都市でもあります。 1989年に観光シーズンのパーク・アンド・バスライドシステムを導入、1996年からは通勤時のパーク・アンド・ライドシステムを実施しています。今回は、バスの有効利用を促進するためのユニークなアイディアとして、世界で初めての金沢市が取り組む「バストリガー方式」をご紹介しましょう。 金沢の道路交通事情 高度経済成長期の1960年代、マイカーブームと広域型ショッピングセンターなどの商業施設の広がりの中、全国的にモータリゼーションが進みました。しかし、戦災を受けずにすんだ金沢市の市内中心部は、15~19世紀にわたる藩政期に形づくられた街路構成を骨格とし、道路容量等の拡大には限界がありました。狭く細い道が今でも数多く残り、一方通行や行き止まりも多く、自動車での移動にはあまり向いていません。 当時、金沢市中心部に住んでいた働き盛りの世代は、カーライフを満喫できる郊外へとどんどん流出していきました。その親の世代は、子どもたちとともに郊外へ移る人々もいれば、住み慣れた土地を離れず、自分たちだけで市の中心部に住み続ける人々もいました。 マイカーブームから約50年後の現在、近年の少子・高齢化の進展に伴い、郊外へ移り住んだ世代も年を重ね、自動車の運転ができない、あるいは難しい年齢に達しています。また、市街地に残った高齢の親世代にとっても病院や市役所などへ出かける際に、公共交通であるバスは大切な交通手段です。 しかし、金沢市の公共交通の利用者数は年々減少し続け、1989年を100とすると、2007年は54.4と半分近くに落ち込みました。逆に、「金沢都市圏における交通手段の分担率」調査から、1989年の自動車の割合は84.7%でしたが、2007年には91.2%となっていることがわかります。 悪循環を好循環へ ― 市民、交通事業者、行政の連携 マイカーに依存してバスや鉄道を利用しないと、利用者の減少が値上げ・減便など利便性の低下に拍車をかけ、さらに利用者が減少するという悪循環(負のスパイラル)を作りだし、ついには路線の廃止につながります。そうすると、マイカーでしか移動できない街となり、特に高齢者の生活や学生の通学が不便になります。 そうではなく、値下げ・増便などの「公共交通の利便性向上」と「市民による利用者数の増加」という好循環(望ましいスパイラル)を実現するには、市民、交通事業者、行政のそれぞれができることに取り組み、公共交通を支えていくことが必要です。 しかし、市民は「料金が安くなって、増便すればもっと利用できるのに」、交通事業者は「利用者が増えたら、料金も下げて増便できるのに」という思いが先に立ちます。交通事業者には「いったん料金を下げると、利用者が減ったからと言ってなかなか値上げがしにくい」という公共交通を担っているからこその悩みもあります。 金沢市交通政策課では、事業として成り立つように、料金の値下げができないかと考えました。料金が下がっても利用者が増えて、前よりも売り上げが上がるような仕組みはないかと考えたのです。料金が半分でも利用者が倍に増えれば事業は成立します。 金沢市が提案したのが「バストリガー方式」です。2006年4月1日から、北陸鉄道、金沢大学とともに、従来170円または200円だった旭町周辺~金沢大学角間(かくま)キャンパス間の路線バスの運賃を100円とする実証実験を開始しました。 この協定には、「その年度に対象区間から得られた収入が、2005年度に対象区間から得られた収入を上回る場合、次年度以降も継続して実施する」という条件がつけられていました。100円の運賃を続けるには、目標ラインである2005年度のおよそ2倍の利用者(221,687人)があることが条件となります。もし採算が合わなければ、交通事業者は元の料金に戻すことができます。 交通政策課の中宮英範さんは「この条件をお互いの約束として、みんなが満足できる形を目指したのです」と話します。バストリガー方式という名称は、これが引き金(トリガー)となってバスが市民により多く利用されるように、と当時の藤田昌邦課長が名付けました。 金沢大学は「今後もこの100円というメリットを享受し続けることができるか否かは、みなさんがどれだけバスを利用するかにかかっています」と、積極的に働きかけました。 旭町周辺~金大角間キャンパス間 路線バス100円運行 実験を行う前に行われた金沢大学学生へのアンケート調査(対象区間バス停付近に居住する学生のアンケートのみ集計)では、この制度の実施前は、晴れた日のバスの利用者16%(123人)でしたが、実施後はバスの利用者が42%(319人)と約2.6倍となりました。もともと雨の日にバスを利用する学生は45%(336人)、雪の日は60%(448人)と多いのですが、実施後はそれぞれ73%(551人)、84%(636人)とこちらも増加し、2004年の気象状況で推計すると、全体では2.1倍の増加となりました。 100円バス利用意向アンケート結果(2006年) 金沢大学が提供する学生支援システム「アカンサスポータル」で2009年1月28日~2月24日に行った、金沢大学生のエコ度をチェックする「エコWebアンケート」(解答者114名)で「金沢大学の環境活動で知っているものは?」と質問に対する回答では「100円バス」(95票)が1位を占め、学生にこのシステムが浸透していることがうかがえます。 2006年度の目標ラインは、2007年3月の年度末を待つことなく1月18日に達成し、100円運賃が継続されました。2009年度は2009年11月17日に、対象区間の運賃収入額がベースラインである2005年度の運賃収入額を超えたため、2010年度も継続して路線バス100円運行を実施する予定です。 旭町周辺~金大角間キャンパス間 (バストリガー方式)利用実績
バストリガー方式は、利用者である学生や大学の努力でより良いサービスの継続が実現できるという利用者主体のしくみとして、5年間にわたり有効に機能し続けています。採算が合わなくなればやめるという約束がきっかけとなって成功したと言えるでしょう。 単なるかけ声や呼びかけだけではなく、利害関係者のすべてが「望ましい行動をとりたくなるしくみ」を具体的に工夫することの重要性を伝えてくれる金沢市の取り組みは、日本のみならず世界の多くの都市にとってのひとつのモデルとなっています。 (スタッフライター:二口芳彗子) ~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~ 掛け声や意識啓発だけでなく、「そうしたい」しくみを作る、とてもすてきな例だと思います。 昨日の対談でも言ったのですが、自動車の利用を減らすにあ、方法は2つしかありません。 1)自動車を利用することの魅力を減らす 1)のためには、自動車利用への課徴金や、高いガソリン代、駐車場を遠くて不便なところに設ける、など、いろいろなやり方があります。 2)のためには、この記事のようにいろいろしくみを作って、公共交通を安くする、専用車線を設けて自動車が混んでいてもスイスイ通れるようにする、公共交通の停留所の近くに人の集まる建物(役所、図書館、病院など)を配する、など、こちらもいろいろなやり方があります。 1)と2)をじょうずに組み合わせることで、化石燃料がドンドン値上がりし、CO2がドンドン出しにくくなる時代、高齢化や過疎化が進む日本でも、だれもが幸せに暮らしていけるよう、「クルマに依存する社会からの脱却」が進むことを願っています。 これも昨日言ったことですが、まだお金やエネルギーが残っている間に、その移行をしなくてはなりません。移行の必要性が切迫してきたときには、移行のためのお金も資材もエネルギーも残っていない(高くて手が出ない)ということにならないように……。 |
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