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| レスター・ブラウン「プランB-文明を救うための予算」(2007.08.15) |
アースポリシー研究所の『プランB2.0-エコエコノミーをめざして-』より、「プランB-文明を救うための予算」が送られてきました。実践和訳チームが翻訳してくれましたので、お届けします。 暑い最中ではありますが、ぜひじっくりとお読みいただければと思います~。 ~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~ プランB-文明を救うための予算 http://www.earthpolicy.org/Books/Seg/PB2ch13_ss4.htmレスター・R・ブラウン 文明を救うために力を尽くすということは、経済を再構築し、経済を支える自然の維持システムを修復し、貧困を解消し、人口を安定させるということである。われわれには文明を救うための科学技術や経済手段、財源があり、米国にはこの活動を牽引するだけの資源がある。 コロンビア大学地球研究所のジェフリー・サックス所長は次のようにうまくまとめている。「富裕諸国が、向こう数十年にわたりGNPの1%に満たないほどの援助金を拠出するだけで、世界中の貧しい子どもたち全員に保健衛生と教育の基本的ニーズを提供できる。人類史上不可能とされてきたこんなことが可能になるほど、富める国は豊かになりすぎ、貧しい国は限りなく貧しい――これこそ今日の悲劇的な皮肉である。米国人には軍事力によってだけではなく、命という贈り物によって、世界をより平和で豊かな場所にする手助けができる力がある。なのに、それに気付くのに、米国内であとどれくらい悲劇が繰り返されなければならないのだろう。」 過剰な発展と崩壊へと向かう21世紀文明を、経済成長を持続していく方向へ軌道修正するために必要な変化をもたらすには一体どれほどの金額がかかるのか、正確にはわからない。だが、必要な取り組みの予算規模を大まかに提示することは可能である。 必要とされるエネルギー経済再構築のための費用は、化石燃料への助成金を再生可能エネルギーへと移行することで賄えるが、社会的目標の達成ということになると外部からの追加資金が必要だ。例えば、援助を必要としている80カ国以上の途上国で初等教育の普及を図るには、世界銀行による控えめな見積もりでも、年間120億ドルかかる。主にボランティアによる成人識字教育プログラムへの追加予算は年間40億ドル程度になるとされており、世界保健機関(WHO)の試算では途上国に最低限の基本医療を提供するには330億ドル必要だという。さらに年間70億ドル足らずで、途上国のすべての女性にリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)にかかわる医療や家族計画サービスを提供できる。 エイズウィルスへの感染を防ぐため、途上国や東欧諸国で現在不足しているコンドーム95億個を提供するには、20億ドル(コンドーム購入費:2億8,500万ドル、エイズ予防教育費およびコンドーム配布費:17億ドル)が必要だ。学校給食プログラムを世界の最貧国44カ国にまで広げるには、60億ドルかかる。また、年間推定40億ドルあれば、こうした最貧国の就学前児童や妊婦への援助ができるだろう。基本的な社会的目標を達成するための費用は、年間総計680億ドルとなる。 地球環境修復の取り組みを伴わない貧困解消策は確実に失敗に終わるだろう。森林再生には年間60億ドルかかる。放牧地の保護・再生には90億ドル、漁場再生には130億ドル、そして地下水の安定には100億ドルが、それぞれ毎年必要になる。中でも費用がかかるのは、生物多様性の保護(310億ドル)と農地の土壌保全(240億ドル)で、この2つの活動が年間の地球環境修復予算の半分以上を占めている。こうした取り組みすべてを合わせると、年間追加支出総額は概算で930億ドルとなる。 ------------------------------------------------------------------------ 基本的な社会的目標 合計 680億ドル 地球環境修復目標 合計 930億ドル 総計 1,610億ドル 社会的目標と地球環境修復を盛り込むと、プランB予算の年間追加支出総額は1,610億ドルとなる。これは、現行の米国軍事予算の約3分の1、全世界の軍事予算の約6分の1の額である。 残念なことに、米国は、ずっと続いている環境悪化、貧困、人口増加の脅威には目もくれず、軍事力をかつてないほど強大にすることにのみ力を注ぎ続けている。2006年の米国国防予算では、イラクやアフガニスタンにおける軍事活動への500億ドルを含め、軍事支出予算は概算で4,920億ドルであった。 同年の軍事支出額はそれぞれ、米国以外の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国が総額2,090億ドル、ロシアが約650億ドル、中国が560億ドルであった。米国一国の軍事支出は他国の総計にほぼ相当する。故ユージン・キャロル・ジュニア元海軍提督がかつて言い当てたように、米国は冷戦の45年間、ソ連と競って軍拡を進めたが、それが今では、独り相撲をとっているようだ。 ------------------------------------------------------------------------ 米国 4,920億ドル プランB予算 1,610億ドル 注記:米国の数字は2006年度予算見積額(イラクおよびアフガニスタンにおける軍事活動予算500億ドルを含む)、ロシアと中国は2003年のもの。 今こそ決断の時だ。環境面で苦境に陥ってしまった過去の文明のように、これまで通りのやり方を続けながら、現代経済が衰退し次第に崩壊していく姿を何もせずに見ていることもできる。しかし、新しい道へと自ら踏み出し、持続的な経済発展に向かうこともできる。このような状況で何もしないことは、衰退から崩壊への道を歩み続けると決断するのと同じである。 われわれが直面している現状の深刻さ、そしてわれわれが下そうとしている決断の重要性を伝えるのはなかなか難しい。歴史上、今この瞬間こそ待ったなしの状況であることをどうすれば伝えられるだろうか。明日では遅すぎるのだろうか。今すぐ方向を変えられるほど多くの人がこの事態を深刻だと思っているだろうか。 また将来、われわれの文明を偲ぶ墓碑を立ててくれる人はいるだろうか。もしいるとしたら、その墓碑には何と記されるだろうか。「彼らは文明が衰退しつつあるのを理解していなかった」というものではないはずだ。われわれは理解しているのだから。「彼らには文明衰退を止める手段がなかった」でもないはずだ。われわれには手段があるのだから。刻まれる言葉はこれ以外にない。「文明を衰退させていった力に対して、彼らの対応は遅すぎた。時間が足りなかったのだ。」 貧困を解消し、人口を安定させ、地球の天然資源基盤を守るための財源がないとは今日、誰も主張できないだろう。飢餓や非識字、病気、貧困をなくすことは可能であるし、土壌や森林、漁場を取り戻すことも可能である。世界の軍事予算の6分の1をプランB予算にまわすだけで、世界は持続的に発展できる道へと軌道修正できるのだ。そうすれば地球上のすべての人々の基本的ニーズが満たされているグローバル社会を築くことができ、私たちは自らを文明人だと思えるようになるだろう。 この経済の再構築がうまくいくかどうかは、税制の再構築、つまり環境に対して公正な市場を整備することにかかっている。ドイツやスウェーデンのような税制改革を実現できるかどうかがあらゆる国の政治的リーダーシップを測る基準となるだろう。こうした税制改革は、気候を安定させ、ポスト石油社会へ移行するためのエネルギー経済改革の鍵である。 未来をむしばむように環境破壊が進んでいくのを目の当たりにして、人々は世界的レベルで事態を好転させることが可能だという明白な証拠を必死に求めている。幸いにも、環境破壊の流れを逆転させ、新しい建設的な流れを起こす方法は相互的に補強しあったり、すべての面でプラスに働くような解決策であることが多い。 例えば、エネルギー効率を向上させて石油の使用量を減らせば、炭素排出削減と大気汚染防止につながる。貧困撲滅の取り組みは同時に飢餓をなくし、人口安定化に役立つ。森林化は炭素を固定し、帯水層における地下水の回復を促し、土壌浸食を減らす。正しい方向に向かう複数の流れが確立すれば、多くの場合それぞれの流れが相互に補強しあうはずである。 テロリストの脅威に備えて何千億ドルもの資金を投じるのはたやすい。しかし、現実には、近代経済を崩壊させるのに大金は必要ない。米国国土安全保障省がどれだけ多額の資金を投じても、自爆テロに対する防御力はわずかである。重要なのはテロリズムに対して最先端技術の軍事力で備えることではなく、環境的に持続可能で公平な国際社会、すなわち皆が希望を取り戻せる国際社会を築くことである。そうした取り組みは軍事費の増大やどんなに発達した新型兵器システムよりもテロリズムへの支持を弱めるのに効果的であろう。 (訳:梶川祐美子、丹下陽子、渡辺千鶴) |
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