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| 「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」(2007.03.03) |
前号で、バイオ燃料についてシステム思考的に考察しました。少しまえに、地球・人間環境フォーラム、FoE、バイオマス産業社会ネットワークが共同で、「バイオ燃料=すべて環境保全に資する」という短絡的発想ではなく、需要側対策を含めた包括的な「持続可能性」を考えていくべきとして、「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」を発表しています。 とても大切なポイントですし、バイオ燃料の基本や現在の状況もよくわかるので、その内容をご紹介します。賛同団体等は、上記のウェブページからご覧ください。 ~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~ 持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言 気候変動問題は、人類のみならず生態系全体が直面するもっとも火急な脅威の一つであり、その防止のためには、あらゆる手段が講じられなくてはなりません。 しかし同時に、地球環境問題に取り組む私たちNGO/NPOは、気候変動防止のための方策は、単に温室効果ガスの削減を目指すにとどまらず、多様な側面からの「持続可能性」を考慮に入れたものでなければならないと考えています。 輸送部門における対策としては、持続可能な交通システムを構築し、エネルギー需要を抜本的に削減することが重要です。 現在、日本政府は、京都議定書目標達成の取組みにおいてバイオ燃料の利用促進を計画しています。これは、化石燃料から自然エネルギーへの転換という観点からは重要な施策ですが、現状の計画ではバイオ燃料のほとんどが輸入で賄われる見込みです。 私たちは、パーム油やサトウキビ等から生産されるバイオ燃料の急激な需要拡大によって、不適切な農地開発や食糧需要との競合など、深刻な環境的・社会的影響が生じる恐れがあることを危惧しています。 日本の温室効果ガス削減のための取組みが、生産地で更なる環境破壊や社会問題を引き起こすようなことがあってはなりません。私たちはこのような懸念から、バイオ燃料の生産・加工・輸入・利用に関与する企業及び行政関係者、最終消費者に、以下の調達方針/原則を採用することを提言します。 0. 輸送用エネルギー需要を削減するための抜本的対策を実施すること 1. 国内産・地域産のバイオマス資源、また食糧需要と競合しないバイオマス資源を優先的に利用すること 2. 原料供給源が明確であり、サプライチェーン(供給連鎖)のトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されていること 3. 生産から加工、流通、消費までの全ての段階を通してトータルに、温暖化防止効果が見込めること 4. 原料生産のため、以下の責任が果たされていること 4-1 【法令遵守】:地域住民や生産・加工従事者の人権及び労働条件、生産・加工における環境影響に関し、当該国の国内法及び国際的な基準を遵守すること 4-2 【環境・社会影響評価】:環境・社会影響評価及びその公開が適切に実施されていること 4-3 【生態系保全】:天然林及び自然生態系(特に保護価値の高い自然生態系)の破壊を伴っていないこと 4-4 【社会的合意】:開発に当たっては、地域住民の権利を尊重し、十分に情報を提供した上での自由意思に基づく事前の合意を取得していること。利害関係者との紛争が生じていないこと 4-5 【環境管理】:排水管理、メタンなどの温室効果ガスの発生抑制、危険農薬の不使用、農薬の削減・統合的管理を行うこと。生産・製造過程において遺伝子組み換え生物が環境に放出されないこと 2007 年2 月8 日 ◆共同提言の背景と目的 温暖化防止のための京都議定書の第一約束期間が2008 年に始まること、2004 年以降の石油価格の高騰やピークオイル論の浮上などにより、世界的にバイオ燃料への関心が高まっています。 そうした中、日本政府は、2005 年、温暖化対策として2010 年に50 万キロリットル(石油換算)の輸送用バイオ燃料を導入するという目標を決定しました(1)。環境省の「エコ燃料利用推進会議」報告書によると、導入目標50 万キロリットルのうち9割以上のバイオ燃料が輸入によって賄われる見込みです(2)。 国産バイオ燃料利用の取組みも進められていますが、短期間に大量の供給は困難な状況です。現在、まとまった量のバイオ燃料で輸入可能なものは、マレーシアおよびインドネシア産のパーム油を原料とするバイオディーゼルと、ブラジル産のサトウキビを原料とするバイオエタノールであると言われています。 しかし、安易なバイオ燃料の輸入は、持続可能性に関わるさまざまな問題を引き起こします。例えば、モノカルチャー(単一栽培)の広大なプランテーション(農園)開発は、熱帯林等の貴重な生態系の破壊や、先住民との土地問題、不法労働、児童労働、労働災害等の社会問題を引き起こす恐れがあります。 また、サトウキビ、トウモロコシ、パーム油などの食用作物については、バイオ燃料原料としての需要が急激に拡大すれば、その国際価格が上昇し、食糧需要との競合が生じることも懸念されます。 エタノールの最大輸出国であるブラジルは、2020 年までにエタノール生産の倍増を計画していますが、仮にその増加分をすべて日本が輸入できたとしても、日本の輸送用燃料の全量を賄うことはできません。 バイオ燃料の利用に際しては、生産段階から環境・社会へ配慮することが重要であり、そのための国際的な枠組みづくりも不可欠です。 本共同提言は、こうした問題点を行政、企業、消費者などに提起し、持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用を提言することを目的としています。 解説 0. 輸送用エネルギー需要を削減するための抜本的対策を実施すること 気候変動問題の緊急性とピークオイルへの対応から重要な施策であるバイオ燃料の利用促進とあわせて、持続可能な社会システムの構築という観点から、私たちはエネルギーの需要削減を真剣に検討すべきです。日本の輸送用燃料需要量は現在、約8,600 万キロリットル(石油換算)であり、政府が2010年までに導入するとしているバイオ燃料50 万キロリットルは、その0.6%にすぎません。自然エネルギーの導入とともに、全体輸送量の削減、エコドライブや交通システムの合理化、公共交通機関の整備、炭素税の導入などにより、利便性を確保しつつ輸送用燃料の需要を削減することが重要です。 1. 国内産・地域産のバイオマス資源、また食糧需要と競合しないバイオマス資源を優先的に利用すること エネルギー安全保障や地域振興、あるいは輸送にかかる環境負荷が輸入バイオ燃料より少なくてすむことから、国産・地域産のバイオ燃料の利用を優先することを検討すべきです。しかしながら、国産・地域産のバイオ燃料利用を促進するための経済的課題は多く、税負担の軽減等の社会的条件整備を進める必要があります。 2006 年に世界人口は65 億人を突破し、さらに増加し続けています(3)。加えて中国などの食肉消費量等の増加により、食糧事情の悪化が予想される中、限られた耕地をバイオ燃料生産に回すと、食糧価格の高騰や食糧不足を加速させる恐れがあります。 サトウキビ、パーム油、トウモロコシ、ナタネ油など食用作物を原料とするバイオ燃料に価格競争力がある状況下では、すでにトウモロコシや砂糖の国際価格が上昇しています。 バイオ燃料と食糧需要との競合の問題に対しては、①廃棄物バイオマスの利用、②休耕地・耕作放棄地での原料生産、③アグロフォレストリーなどの混植、裏作、輪作、茎など非可食部分の利用といった食糧と同時に生産する方法、④食糧生産に向かない土地での生産-などが対処方法として考えられます。 2. 原料供給源が明確であり、サプライチェーン(供給連鎖)のトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されていること バイオ燃料には、生産過程において生態系に悪影響を与えたり、社会的に大きな問題を有するものが含まれており、どのような状況で生産されたかの信頼できる記録がとられ、その確認(トレーサビリティの確保)ができなければ、持続可能なバイオ燃料かどうか判断できません。 3. 生産から加工、流通、消費までの全ての段階を通してトータルに、温暖化防止効果が見込めること バイオ燃料利用の重要な目的の一つは、温暖化防止ですが、場合によっては農地開発、生産・加工の過程において大量のエネルギーを必要とし、生産されるバイオ燃料の熱量と同等またはそれを上回るケースがあります。 また、カーボン・ストック量が大きい低地熱帯林を伐採して造成したプランテーションでは、多量の二酸化炭素が大気中に排出されます。また、パーム油製造プラントにおいて、残渣や廃液からメタンが発生し、大気中に放出されていることがあります。メタンは二酸化炭素の21 倍の温室効果があり、残渣や廃液の処理対策なしに生産されたパーム油は、温暖化防止効果がその分低くなります。 4. 原料生産のため、以下の責任が果たされていること 4-1 【法令遵守】:地域住民や生産・加工従事者の人権及び労働条件、生産・加工における環境影響に関し、当該国の国内法及び国際的な基準を遵守すること プランテーションにおける労働問題として、低賃金労働、危険で劣悪な労働環境、苛酷なノルマ、児童労働、危険な農薬の暴露などによる健康被害、多発する事故等の問題などが指摘されてきています。 これらを防ぐために、国内法や国際労働機関(ILO)条約で規定されている労働基準(結社の自由及び団結権保護、団結権及び団体交渉権の確保、最低年齢の遵守、強制労働及び最悪の形態の児童労働の禁止)等が遵守されている必要があります。 また、インドネシアやマレーシアにおいては法律で禁止されているのにもかかわらず、しばしば農地開発や植え替えの際に火入れが用いられ、これが大規模な森林火災の原因となるケースがあります。 インドネシアのボルネオやスマトラなどにおける森林火災の発生源の多くが、アブラヤシ農園であったという報告もあります。環境・社会面での国際的な基準や国内の法令を遵守することが必要です。 4-2 【環境・社会影響評価】:環境・社会影響評価及びその公開が適切に実施されていること 大規模な農地開発やプランテーションの造成、工場やその他の設備の建設・操業には、大きな環境・社会影響を伴うことがあります。このため、負の影響を回避、最小化、緩和するため、計画段階で環境・社会影響評価及びその公開が実施され、そのプロセスに地元住民をはじめとする利害関係者が参加していくこと、このプロセスを通して出された意見が事業の意思決定に反映されていくことが重要です。 4-3 【生態系保全】:天然林及び自然生態系(特に保護価値の高い自然生態系)の破壊を伴っていないこと バイオ燃料の原料となるサトウキビやアブラヤシなどの作物の供給を確保するため、単一作物を広大な土地に植え付ける大規模な農地開発が必要になることがあります。このようなモノカルチャーの農地開発は、森林や草地などの自然生態系の破壊を伴うことがあります。 実際、インドネシアの残り少なくなった低地熱帯林や、ブラジルのセラード(サバンナ地帯)は農地開発の圧力を受けています。このような自然生態系が開発されると、そこに生息している多様な動植物は生息地を奪われることになります。よって、少なくとも保護価値の高い森林等の開発は防ぐべきです。 4-4 【社会的合意】:開発に当たっては、地域住民の権利を尊重し、十分に情報を提供した上での自由意思に基づく事前の合意を取得していること。利害関係者との紛争が生じていないこと 大規模な農地開発において、ときに先住民族等の地元住民の居住地、あるいは森林生産物などの恩恵を受けていた生活に不可欠な土地が奪われてしまうこともあります。住民が十分な情報提供を受けず、状況について理解しないまま、土地を譲渡してしまうようなケースもあります。 こうしたことを防ぐために、住民に情報を十分提供した上での合意を取得することが不可欠です。また、現地の環境団体を含む利害関係者との対立や紛争、苦情が生じている地域から生産されたバイオ燃料を使用するべきではありません。 4-5 【環境管理】:排水管理、メタンなどの温室効果ガスの発生抑制、危険農薬の不使用、農薬の削減・統合的管理を行うこと。生産・製造過程において遺伝子組み換え生物が環境に放出されないこと プランテーションにおいては農薬及び化学肥料の不適切な使用が、土壌汚染や水質汚染など、周辺生態系への影響も引き起こすことがあります。また、特に農薬の散布を行ったり、農薬を散布したばかりの農地で働いたりする労働者は、健康面でのリスクにさらされています。 さらにプランテーションで散布した農薬が周辺の河川を汚染し、河川を伝ってそれを水源として利用している周辺住民に被害をもたらす危険性もあります。また、精製工場からの大量の廃液が河川を汚染することもあります。 さらに、遺伝子組み換え生物などが環境中に放出された場合、生態系に影響を及ぼすことがあります。このような環境への負の影響を回避するために、環境管理体制が構築されていることが必要です。 (1) 「京都議定書目標達成計画」2005 年4 月 ◆トピックス 1.マレーシア、インドネシアのパーム油(文責:(財)地球・人間環境フォーラム) パーム油はマレーシア、インドネシアが2 大生産地であり、2005 年の世界の生産量3,300 万トンのうち約85%を占めている(4)。 現在、そのほとんどは食用である。マレーシアでは1960 年代に大規模プランテーションが急激に造成され始め、インドネシアでは1980 年代から最大の生産国になるという政府の方針で大規模なプランテーション開発、パーム油生産が行われるようになった。1990 年から2002 年にかけて、アブラヤシ・プランテーション面積は、マレーシアで2倍、インドネシアで3 倍に増加している(5)。 アブラヤシ・プランテーションの開発には広大な土地が必要とされ(東南アジアの典型的なプランテーションは1万~2.5 万ha 規模(6))、造成に当たって森林破壊が生じることも多い。アブラヤシの栽培には、熱帯林の分布している地域が適しており、その開発では森林の減少や生態系への影響が指摘されてきた。例えば、1985 年から2000 年までのマレーシアにおける森林減少の約87%はアブラヤシ・プランテーションの開発によるものとされ(7)、インドネシアでもアブラヤシ・プランテーションの少なくとも7割は森林を「転換(開発)」したものだという指摘もある(8)。パーム油の生産時の環境・社会的影響は、大きく分けて、プランテーションの開発(造成)に伴う問題と、操業中の問題に分けられる。 主たる環境・社会問題 プランテーション開発に伴う問題 ・ 森林生態系の大規模な消失→森林の消失による生物資源の喪失(生物多様性の低下)、動物と人間との軋轢の増加に伴う農作物被害など プランテーション操業、搾油・加工などに伴う問題 ・ 農薬と化学肥料による土壌や河川の汚染 2.パーム油の持続可能性を探る国際的な取組み(文責:(財)地球・人間環境フォーラム) こうした問題に対応すべく、パーム油をめぐる多様なステークホルダーによる「持続可能なパームオイルに関する円卓会議(RSPO)」が2003 年に発足した9。RSPO には、生産業者(農園)、加工業者(搾油、精油)、消費財生産者、小売業者、銀行・投資家、環境・自然保護NGO、社会・開発関連NGO などが加盟しており、日本からは不二製油(株)、三菱商事(株)、サラヤ(株)、ライオン(株)が参加している(2006年12 月現在)。 2005 年に開催された第3 回円卓会議において、持続可能なパーム油を実現するための原則が承認されている。 持続可能なパーム油の8 原則 3.ブラジルのバイオエタノール(文責:バイオマス社会産業ネットワーク) 現在、一定量のエタノールの輸出が可能なのは、ブラジルのみと見られている。2005 年にブラジルは、2020 年までにバイオマスエネルギー利用を倍増させるアグロエネルギー政策指針を策定した(10)。 現在、サトウキビ畑はブラジル国土の1%程度であり、政府は未利用地や耕作放棄地等の活用でサトウキビ栽培地の拡大は可能としているが、かつての大豆栽培拡大の経験においても、不法開拓農民、違法伐採業者、牧場主による森林伐採を推し進める要因になっており、サトウキビ生産の急増に際しても、注意深い配慮が必要と考えられる。 サトウキビ栽培は、サンパウロ州を中心としたブラジル南東部および北東部を中心に進められてきたが、サトウキビ生産そのものが森林地域を利用することはなくとも、アマゾン森林が適正に管理されない現状では、土地需要増大は森林開発の圧力となりうる。 ブラジルの現政権は、エタノール輸出を貧困対策の一つと見なし、重点的に取り組んでいる側面もある。ブラジル農業が抱える問題は複雑だが、輸入国による持続可能性確保への要求は、ブラジルのエタノール生産において環境社会配慮の実行を促すのに有効と見られる。 4.国産バイオ燃料(文責:バイオマス社会産業ネットワーク) 現在、国産バイオ燃料としては、廃食油を原料とするバイオディーゼル(BDF)が、京都市などの自治体、NPO、企業などにより5,000 キロリットル程度利用されている。休耕地に菜の花を植え、ナタネ油をいったん食用としてから廃食油を回収し、BDFとして利用する「菜の花プロジェクト」は、滋賀県をはじめ全国100 カ所以上で取り組まれており、地域資源利用への啓発効果や観光客の増加を生んでいる。 一方、バイオエタノールの国内生産については30 キロリットル程度の生産が試験的に行われているに留まり、温暖化対策、地域振興、経済性などの点から他の手段(例えばバイオマスの電力・熱利用)に劣る場合が多く、かつ事業としての成立も現時点では非常に難しいと考えられる。今後、国産バイオ燃料の利用促進のためには免税等の社会的条件整備や、さらなる研究開発、実証実験等が必要である。 ◆用語 ○バイオ燃料 ○十分に情報を提供した上での自由意思に基づく事前の合意 ○アブラヤシ(オイルパーム) ○保護価値の高い森林 (4)「油脂」(幸書房、vol.59 No.2、2006 年2 月)によれば、2005 年のパーム |
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