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| 「報告書:スウェーデンにおける環境税導入の評価」その4(2006.12.10) |
国際NGO ナチュラル・ステップ・インターナショナルの日本支部の高見幸子さんからいただいたとても大事な調査報告書のご紹介、最終回です。 バックキャスティングについて、そして日本のシステムについて考えるためにも、社会として、組織として、個人として、ぜひ読んでいただきたいです。 ~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~ 6.バックキャステイングについてのスウェーデンと日本の差異の分析 カール・ヘンリク・ロベール博士の意見 ナチュラル・ステップの創設者のカール・ヘンリク・ロベール博士は、15年前から、持続可能な社会を原則のレベルで定義をし、その原則の枠組みの中で成功した姿、つまりビジョンを描き、そこからバックキャステイングをしてアクションプランを立てることをスウェーデン社会に提唱してきた。 彼にこの質問をすると、このような回答があった。「まず、言えることは文化の差ではないことだ。なぜなら、個人のレベルでは、誰もがバックキャステイングをして生活をしているのだから。例えば、私たちは、新しい土地で仕事を始めることになったとすると、まず、最初に、どのような家に住むかその原則のレベルを明確にする。1.職場に近いところにあること、2.家族の人数に合った大きさの家であること、3.給料の中で支払える家賃であることなのだ。 それから、バックキャステイングをして、その理想の家に合う家を探す。職場のある都市から遠い所に家を買ったり、家賃が払えないような大きすぎる家を買うことない。そのように、個人のレベルでは、みんなバックキャステイングができるのに、同じことをグループ、企業、組織、国のレベルになると、難しくなる。 それは、組織の構成員の間で、意見が一致しないと行き先が決まらず、バックキャステイングができなくなるからだ。スウェーデンは、コンセンサスを取り、ビジョンをいっしょに描き、長期目標を立て、バックキャステイングをするということの訓練を長年してきた。 ナチュラル・ステップは、官僚や政治界対象に何度もセミナーをしたことがある。そのように訓練の末に、スウェーデンでは、国のレベルでビジョンを描き、バックキャステイングができるようになったといえる。文化が違うということではない。それゆえ、日本においてもその訓練をしていきさえすればできるようになる。」 私も、彼の意見に同感である。コンセンサスと取ることは非常に難しいことだが、それをければバックキャステイングができない。「日本を救う」というビジョンだけでも国のレベルでコンセンサスが取れないのだろうか。それさえ、一致すれば、皆でバックキャステイングができると思う。 この報告書では、ビジョンとアクションプランの立て方のスウェーデンと日本の違いを紹介する。日本でビジョンを作るためのコンセンサス作りをする上の参考にしていただければ幸いである。 1.日本の政治家は、ビジョンを立てる役割を果たしていない。 スウェーデンは、1999 年に国会で、「1世代(25年間)で今ある大きな環境問題を解決して次世代に渡す。」ことを決議した。このビジョンは、官僚が案を練って提出し、政府が国会で提案し、国会議員がそれを認めたという日本の形で決まったのではない。 スウェーデンでは、法案になる前に、答申を作るために、SOU(国の公的な調査報告)を1年ほどかけて作成する。日本で言う環境省なら中央審議会、経済産業省なら産業構造審議会のようなものである。 しかし、ここで大きく違うのは、委員長が国会議員で、各党からその分野に詳しい党員が委員として参加していることだ。そして、専門家の代表として、大学の教授がいる。また、官僚、その分野の専門家が何十人として作成に加わっている。 しかし、専門家の人たちは、会議で議論に参加してもらうというより、文書を送って意見をもらうという形が多い。また、政策提言に必要な調査は、コンサルタント会社に委託している。また、作成中に、法案に関係する組織や行政機関にもアンケートをとり意見を聞いている。また、政策案は、各党のコンセンサスと全ての省庁のコンセンサスを得なければならない。ここで、どこかの省が反対するとその提案は書けないことになる。 完成した答申は、今度、各分野のNGO、組合など関係のある組織に意見を求めるシステムがある。政府は、この答申の提案をそのまま使う必要はなく、それを参考にして、更に、その答申に関する関係者の意見も参考にして、それから法案を提案する仕組みになっている。それゆえ、法案になった時点では、かなり政党間、省庁間でコンセンサスが得られた段階なので国会で大きくもめるということは少ない。 1999年に国会で決議されたビジョンも、そのように政治家が専門家の知識を得ながら作成したものなのである。そして、政治家が作ったビジョンを環境省、環境保護庁が、具現化するために具体的なアクションプランを作成して行くというようなシステムになっている。つまり、スウェーデンの政治家の役割は、社会が将来どうあるべきか、理想像を描き、長期と短期目標を打ち出すことが仕事になっているのである。 この背景には、比例代表制の選挙の特徴があると思う。国民は、個人に投票するのではなく党に投票する。それゆえに、党の思想、ビジョン、どのような問題の解決案を提案するかで国民の支持が得られるかどうかが決まる。政治家がビジョンを作り・リーダーシップが取れるかどうかは、党の生存に大きく左右している。ちなみに、投票率は低くなったがまだ80%である。国民の政治への関心は、非常に高い。 日本より、スウェーデンの方が、政治家の社会の方向性に関してリーダーシップを取る必要性と役割分担が明確になっていると思う。日本では、本当は、政治家がビジョンを立てるはずなのに、その役割を果たしていないのかあるいは役割が明確でないと思う。 2.では、日本で、官僚が政治家に代わって将来ビジョンを作り政治的なリーダーシップを取ることが可能だろうか? もし、以下の二つの課題が解決できれば、日本のシステムの中で、十分、社会のコンセンサスをとりながら、長期的なビジョンを立てバックキャステイングをした計画が立てられると思う。 1.課題の一つは、長期、短期目標を作っていく上で、省庁の役割分担を明確にし、横にもっと対話をして、環境のような社会全体に関係のある課題の場合、全省庁のコンセンサスが取って法案を作成するという仕組みを構築しなければならないと思う。スウェーデンに、省間のコーデイネートをする持続可能省が作られた。日本にもそのような省が必要だと思う。 2.もう一つは、日本の官僚、行政の人事異動システムを変革することである。3年で職場が変わるシステムで、特に、同じ官僚内でローテーションがされるシステムだと常に3年ごとに素人が回されてくる仕組みになる。ジェネラリストを大量に育てても、全員が管理職になるわけではないので無意味である。 これでは、いくら優秀な官僚でも、深い知識と経験とネットワークを要するマスタープランをたてていくことは難しいと考える。スウェーデンでは、官僚の人事異動はあるが、誰かが辞めた後、その職に必要な条件を最初から満たした人材をリクルートしてくる。 例えば、同じ官僚の中で人材がなければ、環境NGO、企業の環境課にいた人材など広く募集をして適材適所の人材を配置している。日本のシステムは、汚職を防止するためにしかたがないとよく聞くが、全く環境の仕事を以前したことがない人が環境省に配置されるということもある。汚職の防止方法は、もっと透明性を持たせる方法など他に案を考えれば可能だと思う。汚職防止のために、人事という国の戦略に重要な方法を使うことは、それこそ、バックキャステイングをした場合、非常に効率が悪く、経済的にも良い戦略とはいえない。考え直す必要があると思う。 この二つが解決できれば、官僚が日本のマスタープランを考えバックキャステイングをした政策を提案し日本の政治のリーダーシップを取っていくことが可能だと思う。 著者のコメント スウェーデンは、森林吸収3%を合計しなくても京都議定書の目標値を達成することができる。それは、主に、スウェーデンの地球温暖化防止戦略と誘導政策があったからだと評価している。また、スウェーデンの地球温暖化防止政策の総括的なアセスメントによると、もし、現在の政策が取られていなかったとすると、2010 年において、温室効果ガスの排出量は20%増えることになるということだ。 そのように、かなりの助成金を費やし、環境税、税制改革などを導入して、戦略を持って取り組んでいっても、2010 年までに達成できるのはー1%の範囲であることは驚きである。つまり、いかに温室効果ガスの削減が困難であるかということである。 かたや、日本はと考えると、環境税のような効果的な誘導政策があるにも関わらず、経済界の自主的な対策だけに任している。このままで、スウェーデンより目標値のハードルが高い日本が目標を達成することはできるのだろうかと非常に不安になる。スウェーデンの経験から考えると、誘導政策を取らない限り達成は不可能であると思う。 今回の調査で、環境税が非常に効果的な誘導政策であることは明解になった。それは、政府も、産業界も評価していると言える。その事実は、今後、日本で環境税の導入を推進していく上に参考になるのだが、ほかにも参考に出来る点があると思う。 それは、スウェーデンの産業界の動きである。スウェーデンの産業界の中で、環境税が有効だということは理解できていても、政府のやり方に不信感がある。しかし、ただ導入に反対をするのではなく、先進的な企業が連携を取り、スウェーデン政府と対話をしようとしている動きがある点である。 日本にも環境先進企業は、増えている。それらの先進企業も地球温暖化の問題が深刻であり、行動のインセンテイブが必要であることは理解していると思う。しかし、日本の産業界には、環境税の導入の仕方や、環境税の使われ方などに対する不信感があっても、パッシブでそれを乗り越える対策を提案しようとする動きが見えない。 もっと、環境先進企業が連携を持ち、税制改革と言う形で、対策をすればメリットとして返ってくるようなシステムを提案し、それが長期に渡るルールとして信頼できる形で導入されるように政府と対話を始めるべきだと思う。 自主的な対策のみで目標を達成できないことは分かっているのだから、もっとイニシャテイブを取るべきだと思う。それは、地球環境を救うためだけではなく、日本企業の国際競争力を強化するためにも必要なことだからである。 スウェーデンでできたことを日本ができないことはない。日本も成功した姿からバックキャステイングをして、京都議定書の次の2050 年、2100 年に向けた誘導政策を構築していくようになることを願う。 終わり 参考資料
The Swedish Report on Demonstrable Progress 政府の報告書
Sweden’s fourth national communication on climate change 政府の報告書 Dagensmijlo 2005 11 環境雑誌 Miljo Rapporten 27 oktober 2005 環境雑誌 Ekosofias Nyhetsbrev December 2005 環境雑誌
Foreign Affairs July-August 2004 Beyond Kyoto 論文
Interview with Mr. Anders Johannesson, インタビュー
Naturvardsverket Swedish Environmental Agency スウェーデン環境保護庁の環境税担当者 |
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