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アラン・アトキソンコーナー|コラム
サンタへ−北極の氷が融けているんだって?
(c) 2002 アラン・アトキソン

この文章は、ご自由にe-mailウィルスのように世界中に広げて下さってもかまいません。

サンタへ

今年は、以前の僕に比べると、かなり「おとなしく」していた。子供ができると少し落ち着くものらしい。今年は僕もけっこういいプレゼントがもらえそうだね。

でも、今回僕がクリスマスに本当に望んでいるものは、サンタの君でもプレゼントすることはできないだろう。なぜならそれは、この地球に新しいエネルギーシステムをプレゼントしてほしいってことだから。そして、温室効果ガスの排出量をこれ以上増やさず、地球規模の気候の大変動を止めてほしいってことだから。

僕がどんなに辛抱強く、愚痴ももらさず子守りをしたところで、奇跡が起こるというクリスマス・カジノで山積みのチップを手に入れ、一発逆転をねらうなんて無理な話なんだろうね。これまでの人間の業(ごう)を奇跡の力で帳消しにするなんてことはできないんだ。

でもね、サンタ、今や地球の温暖化は君の存在よりずっと現実味のある話なんだよ。

どこかの政治家たちや自動車業界の広告主たちが、まるで何も起こっていないかのように見せかけたようと、自然はただその営みを続けるだけってことは、君もよく知っているよね。

実際、君なら自然の法則の不変性を僕より知っているだろう。なにせ1970年代以来融け続け、今や40%も薄くなってしまった氷の上で暮らしているんだから。今世紀中ごろまでには、大きな居住用ボートが必要になるかもしれないね。君と小人の妖精たち、そして住むところを失った数千頭の北極グマたちのために。

そして、水田の半分が沈んでしまうというバングラデシュに対しても、僕たち人間が何とかすることができるという望みはゼロらしい。最近インドで開かれた気候変動についての国際会議のニュースを見たかい?

「産業界に肩入れする専門家たちは、ニューデリーで開催された温暖化防止会議での方向転換に小躍りした」と、2002年11月3日付のニューヨークタイムズは伝えていたよ。「方向転換」とは、世界が地球温暖化を食い止めたり温暖化の速度を緩めたりすることを、基本的にあきらめてしまうことさ。

「産業界」(全部じゃないよ−中には環境のことを真剣に考えてる業界もあるんだ)は、もう技術革新に投資したり、炭素税を払ったり、自社製品を作り直したり、ゼロエミッションエネルギーシステムに転換する必要がないので大喜びさ。

タイムズ紙は、「今や議論の中身は、避けられない気候変動にどう適応するか、ばかりである」と書いている。

ねえサンタ、気候変動が避けられないってことは知ってるよ。なにしろそれはもう始まっているのだからね。僕は子供のオムツを替えるあいまに科学雑誌を読むようにしている。だから、温暖な気候帯の生物種が北極や南極に向かって移動しつつあるとか、壊滅的な被害をもたらすエルニーニョの発生回数が増えているとか、そういった数千とは言わないまでも数百の兆候が「地球の温暖化が引き起こすであろうと予想されている影響と一致する」ことを知っているんだ。

僕は僕なりに根気強く学んできた。おかげで、「仮に今CO2やその他の温室効果ガスの排出を止めたとしても、地球の気温は何年もの間上昇し続ける」という事実−このことはMIT(マサチューセッツ工科大学)の大学院生だって3人に2人は知らないんだぜ!−も知ることができた。

この現象は「システムにおける遅延」といって、夏の日が(君や僕が住む北半球では)6月21日を境にだんだん短くなっていくのに、気温の方はその後も上昇しつづけるのと同じ理屈で起こるんだ。

「システムにおける遅延」については、サンタ、君も知ってるはずさ。君だって、プレゼントの贈り先リストを書き上げたあとに、もう一度見直しをするだろう。いい子や悪い子の情報が、遅れて報告されることもあるからね。

でも、遅延があろうがなかろうが、僕はあきらめるつもりはない。大好きなアンデス山脈の氷河やスウェーデンのスキー場が消滅していくのを、ただ見ていることはできない。

地球温暖化に誘発されてやってくる次のハリケーンがニューオーリンズのバーボン・ストリートを吹き荒れ、あの町を約6メートルの水底に沈めてしまうなんて、考えたくもない(バーボン・ストリートではみんな「ハリケーン」というカクテルをよく飲んでいるけれど、こっちのハリケーンは反対に僕たちを飲んじゃうかもしれないんだ)。

ねえ、サンタ。大の大人がポリエステル製の赤い衣装を着た架空の人物に泣きついて助けを乞うなんて、どうかしてるよね。それは僕にも分かっている。それでも僕は、「世界の指導者」と呼ばれるような人たちにでなく、君にこの手紙を書いている。「世界の指導者」のほとんどは温暖化の問題について、身勝手にもさじを投げてしまっているんだ。時としてご褒美に値しないような子供たちにさえ予期せぬプレゼントを配って歩く君は、僕たちの唯一の希望のように思えてならない。

だからサンタ、お願いだ。化石燃料を燃やさずにすむ、何か別の方法をその袋から出してくれないか。

今すぐじゃないとだめなんだ。そして、比較的安価で、簡単に普及するものでなければならない。なぜって? 考えてもごらんよ、サンタ。エネルギーはみんなが欲しがっているものなんだよ。

僕たちにとって必要な食べ物もエネルギーで育つし、水だってエネルギーを使って運んでいる。交通機関だってエネルギーがなければ動かない。でも、僕たちのところに今あるエネルギーは……、よくないんだ。エネルギーは、僕たちが一番必要なものであると同時に、一番の悩みの種なんだ。今こそそれを大きく変える時なんだよ。

たとえば、本気で地球の温暖化を何とかしようと思うのなら、地球上のすべての自動車に今とは違うモーターをつけなくちゃ。石炭火力発電所は全部取っ払って、代わりに最先端の技術を使った水素燃料電池をずらりと並べる。あるいは、かなり奇抜だけど、宇宙そのもののパワーを取り込むテスラコイル装置なんてのもいいかもしれない。

トナカイの力でスイスイ滑る、ゼロエミッションのそのすてきなソリに、サンタがそんなものを用意してくれているかどうかは分からない。けど、何か1 つくらいいいものを持ってるだろう? 僕たちは、クリスマスも間近というこの時期に、またもやエネルギーをめぐって戦争を始めようとしている。

でも、僕は決して望みを捨ててはいないよ。人類は、こと地球の扱いとなるとまだまだどうしていいのやら困ってしまう、愚かな生き物かもしれない。だけど、僕たちだって努力はしている。そりゃあ企業会計で不正を働くような連中だって中にはいるけど、君からプレゼントをもらえるくらいのことはしてきたつもりさ。

サンタ、お願いだ。新しいエネルギーシステムをくれないか。地球の気候を安定させてほしい。僕たちのひ孫の世代にも、一面の雪景色、軒から下がるつらら、そして真っ白な雪だるまのあるクリスマスを、プレゼントしてやってほしいんだ。

それともいっそ、僕たち自身でそれをやってのけるだけの勇気と力をくれないか。

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