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お金が直接「いい会社」に届くように~鎌倉投信の新井和宏さんに聞く(後編)

2017年04月06日
お金が直接「いい会社」に届くように~鎌倉投信の新井和宏さんに聞く(後編)

「いい会社」に投資して後押しをするだけでなく、その運用への評価も高い鎌倉投信、そして新井さんの考え方をじっくりお聞きした後編をお届けします。

前号のつづきです。話は佳境に入っていきます。インタビューの後半をどうぞ!

前半からの全体はこちらからお読みいただけます。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

○現場を信じることができなくなったときに企業は大企業病になる

枝廣 日本はどこで長期的な思考を失ったのでしょう。

新井 やはりバブル崩壊と、それに伴う不良債権処理としてバーゼル規制がかかったこと。こここそが転換点だと思います。

※バーゼル規制・・主要国の中央銀行が加盟するバーゼル銀行監督委員会が定めた、国際的な金融活動を行う銀行について信用リスクなどを担保するため一定以上の自己資本比率を保つこと等を求める指針。

現在、当然ながら担保がなければ不良債権のように扱われてしまいます。この掛け値だったら「これは不良債権になる、ならない」を人が判断するというより、機械が判断してほぼ決まってしまう。つまり「管理型になった瞬間に終わるんだな」と思います。でも、心はあったはずなんです。みんな想いがあったけれども、「管理」に縛られてしまった。これは大企業にも言える。現場を信じないというのもそうですね。

そうではないあり方もあります。ヤマトホールディングスさんが鎌倉投信の投資先になっている理由は、大企業になっても現場を信じているから。現場を信じることができなくなったときに、企業は大企業病になる。完全な管理下におきたいというのは、評判リスクを避けたいからだけでしょう。そこをヤマトさんは、傷付いても現場を信じ切る。たとえばクール便の問題があっても、メール便の問題があっても、現場を信じ続ける姿勢は変えない。この会社は「おかしい」んです(笑)。

枝廣 大きくて、「おかしく」いられるって、すごいですね!

新井 すごいです。あれだけの大企業ですけど、やっぱり違います。1個1個が違う。何が違うかと言うと、意識がすべて「現場」に向いている。現場のために本部があるとみんなが思っている。現場を支えるためにどうしたらいいかを考えるわけです。それがうわべだけではないんです。本気で言っている。行動でわかります。だから、彼らは外からどんなに言われても、魂を失わない。それが企業文化そのものになっています。

いい会社というのは、やはり現場を見ないとわかりません。数字ではわからない。でも感動的な話ってそこにあるんです。投資先ではないですが、伊那食品工業さんもそうです。朝7時から社員全員で清掃を行っている。それだけの思いを社員がもっているかどうか、それだけです。ゴミがそこに落ちていたら、社員が恥ずかしいんです、自分の愛している会社だから。他人ごとでなく自分ごとになっているんです。やりたくないことを無理にやらせているのであれば、結果は伴わないでしょう。企業経営はきれいごとではなく、大変なんです。

枝廣 そういう会社が増えていくといいですね。

新井 そうなんです。だから私たちは「いい会社」をお客様に見て、知っていただいて、「こんなすてきな会社があるんだ、自分のお金が役に立っていることを誇りに思う」と思っていただき、喜びに変えてほしいんです。

○ステークホルダーは「地球」

枝廣 本のなかで、「いい会社の見つけ方」として「大量生産・大量消費を目指さない」と記されています。「必要なものを、必要な分だけ。その考え方が、現代を生き抜く商品やサービスを生むと思います」とあって、その通りだと思います。そのような会社が増えることが鍵だと思っているんですが、このあたりについてはどのように見ていらっしゃいますか。

新井 一番前を行っておられるのは、こちらも投資先ではありませんが、パタゴニアさんだと思っています。あのような会社が増えてくれたらいいなと。

まず「大量生産・大量消費を目指さない」と掲げてほしい、というのが1つ目です。製造業でもサービス業でも、まず大量生産・大量消費を否定していただくことが最も必要だと思っている。それを現実に言っている会社は存在しています。

たとえば鎌倉投信の投資先で言うと、長野にあるKOA株式会社です。スマートフォンなどに入っている電気の抵抗器を作っているメーカーで、この時代、とても需要があるので、大量生産・大量消費そのものを歓迎するだろうと思うのですが、違うんですよ。メーカーにもかかわらず、ステークホルダーに「地球」と書いてある。

枝廣 すごいですね。

新井 大量生産・大量消費でない社会になったとき、自分たちがどうあるべきかということを考えてずっと計画を練っています。森の中にあるような会社で、森林塾も運営されているんですね。そういう会社を私たちは守らなければいけないんです。

彼らがほかの機関投資家から何を言われるかというと、ROE(自己資本利益率・Return On Equity)が低い、と。ROE以外にも大切なものはあるでしょう。

子どもの教育と一緒で、偏差値のみが大事だと言っているのと変わらないんです。企業というのは個性があるべきなんです。多様でなければ価格競争に陥るとわかっているのに、ROEしか掲げなければ、価格競争に巻き込まれる会社をどんどんつくるだけですよ。そうではない会社をつくっていかなければなりません。

KOA株式会社のROEが低いのには理由があります。実は、本社工場以外に村単位で工場があるからです。なぜ村単位であるかと言うと、もともと養蚕が盛んな地域だったんですね。そこで、養蚕業に代わる産業として、電器という分野に参入しました。電器の抵抗器は一番短いラインの場合、2メートルぐらいの場所があればいいので、養蚕業が行われていた村単位のまま、工場のラインを置いたんです。それを「無駄ではないか」と言われるわけです。

「本社にまとめれば1個所で済むし、効率的になるだろう」と一般的には言いますが、そこに効率性を追っては駄目だと思います。地域の雇用がなくなれば、当然ながら若い人は出ていってしまいます。過疎化がどんどん進む。そんなことをしてはいけない。

だから各村でやっている工場の意味を、僕らは社会価値としてきちんと表現しないといけません。これからやろうとしているんですけど、その村に工場があることによって社会価値がどれだけ生み出されているのかということをきちんと数字で報告する。そうすることによって、彼らの職を守り、維持できるようにする。株主として「この経営方法を続けなさい」と言い続けることをやらなければいけない。これは私たちが、ある種「ヘンタイ」なので、やり続けようと思っていることです。

○「ヘンタイ」のリーダーとして

新井 一昨年は別の会社で同様のことをやりました。投資先にエフピコさんという会社があるのですが、エフピコさんは重度の知的障碍者を中心に、約400人の障碍者を正社員として雇用していて、障碍者雇用率が15%くらいです。日本の上場企業ではダントツのトップです。

そこで現在は、取引先の障碍者雇用を支援しようと、エフピコの特例子会社社長の且田さんが取引先30社の顧問を無料でされています。条件は2つ。「障碍者を本業で雇用すること」と「全員正社員で雇用すること」。この2つさえ守れば、無料で顧問を引き受けるとおっしゃっています。

でもそれは、自社のどこにも、CSRレポートにも、掲載されない情報なんです。自社ではなく、他社のお手伝いですから、他社の事例になってしまうからです。

そこで大学の先生にお願いしてその活動の一部を数値化していただき、会社にそのレポートを出して、この取り組みを続けさせてくださいと言っています。インプットに対してアウトプットが十何倍もある。これは海外の事例よりも素晴らしい実績です。

さらに、なるべく対外的に発信していこうと、今は総務省や日本財団にレポートを提出しています。出せば出すほど、「続けるようという圧力」が大きくなるから、やっています。

枝廣 面白いですね!

新井 変わっていますよね、相当。やっぱり「ヘンタイ」のリーダーでなければいけない。でも僕は、株主はそうあるべきだと思う。企業の社会価値を上げれば、結果ファンが増える。商品やサービスが飽和している中で消費者が何を選択するかというと単純に、「共感」です。

ほかの運輸会社さんとヤマトさん、どちらを選びますかといえば、純利益の4割、142億を東北に寄付する会社のほうがいいに決まっていると思いませんか。サービスはほぼ同じです。そういう選択をしてもらえるよう、社会価値を上げていけばいい。その結果として、お客様の満足にもなる。

そういう社会価値を上げていく活動を、株主としてやっていけばいいんです。企業の社会価値を上げていく。「この会社はいい会社だ」と言う。いい会社になるように一生懸命支える。本来、株主はそういうものだと思っています。

○とがっているところをもっととがらせるための数字

枝廣 鎌倉投信では、投資の果実 =「資産形成」×「社会形成」×「こころの形成」だとされていますよね。資産形成は数値化できますが、一方、社会の形成とこころの形成はどうやって見える化するのでしょうか?

新井 まず、お客様の幸せは測りようがないので、「幸せですか」と私たちが問い続けることです。聞くだけです。お客様に聞けばわかりますから。

社会形成は、私たちが数値化したり、何かを測って標準化するというのは、個性をなくす危険性があると思っています。いい会社というのは、個性が際立っていなければいけない。とがっていなければいけない。だから、とがっている所をもっととがらせる行為をする。

先ほど言ったエフピコさんで、取引先の障碍者雇用支援をやっている人たちに対し、社内の左脳系の人が「自社の数字にならない」と言い始めるんです。それを納得させるためには数字で対抗するしかない。数字で左脳系の相手を抑え込むために、大学の先生にお願いする。

リサーチ費用は鎌倉投信が出しています。投資先企業に「出してくれ」なんて言うつもりはありません。なぜなら、鎌倉投信が必要だからです。それは企業に言わなければいけないし、お客様にも伝えなければなりません。役に立っているのかどうかを理解し、かつその会社を自分が支えているんだと思っていただけるようにならないといけません。右脳と左脳の両方をバランスよく使うことが必要だと思っています。

枝廣 環境活動を始めてからずっと思っているんですが、私たちがやらないといけないのは「今の土俵で戦いつつ、土俵を変えていくこと」ですよね。今の土俵で戦うには数字が必要ですけど、違う数字にシフトしていくことで土俵を変えられることもできていくのでしょうね。

新井 社会性など、数字で全部が測れるわけがない。ですが、数字があることで相手を説得できるのであれば、モノは使いようです。口説けるなら利用する。それぐらいの位置づけです。数字で何でも測れると思ったときに、お金だとか、成長だとか、効率だとかいう話が前面に出てくる。数字で測れないもののほうがよほど大事だとわかっていれば、愚かな選択をしないで済むはずです。

枝廣 アルゴリズムとかプログラムでやろうと思うと数値しか使えないから、きっと数字ありきになってしまうんですね。

新井 僕は金融マンとして、15年くらいずっと数値化でやってきたんです。その限界を知りました。人って、もっとすばらしいものである。数字で全部できたら、皆さん、仕事はいらなくなるでしょう?

枝廣 同じように金融界でずっとやってきた人たちも、その限界に気づいてもよさそうなものだけれど......。

新井 人に自己否定はできません。この業界で数値化を否定したら、結局、自分の存在を否定することになりますから。僕は、病気で一度終わったかもしれない人生なので、言うことができる。まだ生かされているということは、社会の役に立て、ということなんだろうと思っています。

○「お金」と「働く」-関係性を考える教育を

枝廣 そのうち新井さんたちのありかたが本流になっていくといいと思うし、そういう日が来ると思うんですけど、それまでの時代は、前にいらしたような職場で仕事をやっている人たちが扱うお金と影響が大きいですよね。そのような中で、どこから変えたらいいのでしょう。

新井 僕が今注力しているのは、子どものお金の教育です。2017年5月に高校生向けに「お金」と「働く」というテーマで本を出す予定です。そもそも、年収は1千万円ないと幸せになれないとか、勉強を必死にやらないと駄目になるとか、子どもたちは勝手に大人がつくっている像で教育されています。

でも、実際にはそんなことはない。幸せというのはお金の中に存在するわけじゃないのに、小さいころからお金だと洗脳されているんです。それを解放しなくてはいけない。子どもたちに、「そもそもお金は目的にならないから、あなたたちはまず幸せになることから考えようよ」という本です。

枝廣 私は教えている大学で、最初の授業で「経済成長って何だろう」という話をみなで考えてディスカッションするんですけど、ほぼ何の疑いもなく「経済成長するとお金が増えて幸せになる」と言う学生が多い。すごい刷り込みですね。経済成長率と、貧困や人々の幸福度は相関していないというグラフを見せたらショックを受ける。「だから、自分の幸せは自分で考えなきゃね」という授業をやっています。

新井 結局、「お金」と「働く」って、密接に関係しているんです。にもかかわらず、そもそも何のために働くのかということを考えもしない。大学入学前に考えなければいけないんです。そもそも、人ってなぜ生きるんだろうと。幸せになるために生きるんでしょう、と。幸せになるためにいろいろな手段があって、その1つとしてお金が存在する。手段の1つでしかなくて、お金が全部ではないんです。それに早く気づいたほうが人生幸せになる。

日本ほど幸せになれる国はないです。前提条件が揃っています。1つは何かと言うと、もう人口は増えないです。これは大きい。ラクです。人口増加に対して問題意識を持たないでいい。これほどハッピーな国はないです。でも、誰もそうは言ってくれないですよね。

枝廣 すごく不幸だと思っていますよね。

新井 何て幸せな国だろうと僕は思います。もう1つ、日本の企業文化の中に「三方よし」がすでにある。みんながベースとして三方よしを考える社会が日本にすでに内在する。こういう国はない。歴史が存在し、縄文時代から争わないことが千年以上続いている奇跡的な国で、前提条件が揃っているんだから、最も精神性を重視する社会に移行できるはずです。

マズローの5段階説ではないですが、モノとかサービスは足りている、もういいじゃないかと。精神を満たすものをどんどん増やしていく社会にすればいい。「もったいない」も「おもてなし」も存在する。こんな精神性が強い国はないです。社会課題だらけだからこそ、素晴らしいものをつくり上げることができる最前線の国。日本は世界で最初に次のステージに行けるポテンシャルを持っている。

枝廣 定常経済という考え方や、経済成長に頼らずに心の豊かさなど本当に大事なものを大切にしようとする社会に少しずつ移行していますし、流れはもっと加速すると思っています。そのときに、先ほどおっしゃった現在の5%程度の成長という点はどうなるのでしょうか? いい会社はもちろん成長するのでしょうけど・・・

新井 具体的に言ってしまうと、日本は自動車と電機という二大産業で成り立ってきたわけです。残念ながら、その構造は崩れるでしょう。今後どんなにベンチャーが大きくなったとしても、大きな産業が小さくなるスピードのほうが速いので、結果として雇用が減じてしまう。それは事実だけれども、成長する分野は必ずある。それが、私たちが目を付けている社会課題に対応してくれている会社です。これらの会社は「社会に必要とされる」から、成長すると思います。

ただ、構造変化後の次のステージに移ったときには、そこまでの成長はいらないと思う。モノやサービスがそんなにいらないのであれば、お金で測れない、GDPに出てこないような取引量がもっと増えると思います。

○やるべきことはなくならない

枝廣 最後に2つお聞きします。1つは、新井さんが次に力を入れていくのは何か。もう1つは、私たちの暮らしや日本経済は、このまま続いていくのか。

新井 後の質問から先に申し上げると、私たちはそもそもこの「結い2101」というファンドを設定した時に「社会課題を解かない限り、日本株の長期的な上昇はない」と考えていました。もう成長はないと思っているんです。でも、社会課題を解いていく会社は必ず必要とされるので、そういった会社は成長します。そのほかは衰退していって、大きな日本株全体の成長はないだろうというのが、もともとの考えです。

私たちが次にやっていかなければならないことはたくさんあります。鎌倉投信が目指しているという意味においては、1つは、社会課題にまだまだ自分たちが対応できていないこと。第一次産業の中でも水産業については、僕らはどうあるべきか、どういう投資先を考えていくべきかは、まだ模索中です。

それ以外の社会課題で言うと、たとえば一度罪を犯してしまった人を、どうやって社会復帰させるかということです。日本には失敗を許せない文化が存在しているので、これが最も難しい社会課題だと思います。

社会課題というのはこれからもたくさん出てくると思うので、最前線の人たちに話を聞いて、その中で動いていかなければいけないと思っています。ですから、やるべきことはなくならない。自ら動いて、社会起業家を育成し、しっかりサポートしていきたいですね。

次のステージという意味では、実は鎌倉投信自体は残高(ストック)のビジネスですから、お客様の財産が増えていくにつれ、結果的に鎌倉投信も報酬が増えていきます。一定のコストを除けば、ここから先は利益が膨らんでいくだけですので、その一部を寄付などの社会貢献に回すということを決めています。

そのため、今度は寄付先として「いいNPO」のリスティング(一覧表にして公開すること)を検討しています。私たちがやりたいのは、贅肉だらけのNPOや財務、経営、開示が駄目なNPOをなくし、筋肉質の、きちっと食べていけるNPOをつくっていくこと。「いい会社」と「いいNPO」がリスティングされて、ようやく鎌倉投信が成就するかなと思っています。僕の妄想なので、すみません(笑)。

枝廣 それはずっと考えておられたのですか。

新井 はい、起業した当時から。やっと成就できる入り口まで来たかな、という感じです。

○役に立っていると実感したとき、人は一番喜びを感じる

枝廣 お話を伺っていると、いろいろなことをされていますね。毎朝、株を売ったり買ったりという地道なこともされていて。

新井 やはり努力はし続けなければいけないし、プロとしてやるべきことはちゃんとやります。しかし、それ以外の時間は精いっぱい社会のために使いたいと思っています。お客様も「自分の代わりにやってくれ」と願っておられるから。僕は、お客様のお金を不労所得にはしたくない。だから僕は精いっぱい労働するんです。投資先の企業のために役に立ち、お客様に返るという循環をつくりたい。

光を感じるのは、上場企業の経営者の中でも少しずつ、私たちの価値観に共鳴してくれる人たちが増えてきていることです。それが救いだと思っています。

僕は人に恵まれた。人というのは、自分でなく周りの人がつくってくださるので、自分をつくってくださった方々に応えたい、応えるような人生を送ろうとしているだけです。鎌倉投信のお客様、株主やいろんな先生方が、本気で応援してくださっている。そのときに鎌倉投信がホンモノでなければ、その方たちが嘘をついたことになってしまう。だから、ご迷惑をおかけしないように、鎌倉投信があるべき存在でなければいけない。だから「ヘンタイ」を突っ走ろうとしています。

本にも書きましたが、僕の母親は身体障碍者です。障碍者がそばにいるということが当たり前だったので、障碍者に対する意識は普通の人と違う。障碍者にもモチベーションはある。プライドもあるし、かわいそうな人ではなく、普通の人間なんですよ。それが僕の根底にあるので、「彼らの中にも優秀な人もいれば、そうでない人もいる。だから優秀な人を雇いなさい」と言うんです。

彼らのモチベーションを上げることができない経営者が多すぎるんです。だから鎌倉投信は、形式雇用するような社会ではなくて、彼ら・彼女らが「仕事って楽しいね」「大変だけど楽しいね」と言えるような社会にしたい。エフピコさんで働く障碍者の社員が言うんです。「土日はいらない。早く月曜になってほしい」って。なぜか。自分の生きがいだからです。

「かわいそうな人」って、ずっと思われていたら、生きるのが嫌になります。そうではなくて、「君がいるからこの会社は成り立っているんだ」と言われたいですよね。役に立っているということを実感したとき、人は一番喜びを感じるんです。そういう社会をつくりたい。そのためには、それを伝え続ける"伝道師"にならないといけないんです。「ヘンタイ」であり続けなければいけない。

枝廣 お忙しいと思いますが、ご自分の持続可能性にも気をつけてくださいね。幸せなお忙しさだと思いますけれど。

新井 はい。僕は幸せ者です。皆さんが心配してくださる。教え子が健康器具を家に送ってきて、「血のつながっていない親だと、僕は勝手に思っています」と言ってくれて。幸せすぎて、泣きました。神様はどこまで僕にやさしいんだろうと。

「結い2101」の説明会に赤ちゃんを連れてきたお母さんから、「この子のために加入します。この子が大きくなったとき、いい会社がもっと増えてほしいと思うから」と言われた時も泣きました。本当にうれしい。こんな素敵な人たちがいる国ですから、素敵にならないわけがないです。

枝廣 本当にそのとおりですね!また続きをどこかで。ありがとうございました。

新井和宏さん
鎌倉投信株式会社 取締役 資産運用部長
2008年11月、志を同じくする仲間4人と、鎌倉投信株式会社を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い 2101」の運用責任者として活躍している。横浜国立大学経営学部非常勤講師(2016年3月まで)、特定非営利活動法人「いい会社をふやしましょう」理事。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

新井和宏さんのご本はこちらです。本当に大切なことを大切にする、そして、そのために綿密な戦略を立てて実行していくーー学びと刺激になります。

『投資は「きれいごと」で成功する――「あたたかい金融」で日本一をとった鎌倉投信の非常識な投資のルール』

最新刊も出たところです。ぜひどうぞ!
『持続可能な資本主義』

 

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