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これまでのやり方で「国が前面に立って高レベル放射性廃棄物の取り組みを進める」とどうなるか

2014年01月09日
これまでのやり方で「国が前面に立って高レベル放射性廃棄物の取り組みを進める」とどうなるか

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今月末には閣議決定される予定の、新しいエネルギー基本計画では、「高レベル放射性廃棄物について、国が前面に立って取組を進める」としています。みなさんはどういうご意見をお持ちでしょうか?私は現在の政府の進め方には3つ問題があると考えています。

新しいエネルギー基本計画案では、「高レベル放射性廃棄物について、国が前面に立って取組を進める」ことについて、このように書かれています。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

使用済燃料は世界共通の悩みである。

原子力利用に伴い確実に発生するものであり、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を確実に進めることが不可欠である。このため、使用済燃料対策を抜本的に強化し、総合的に推進する。

高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める。

これに加えて、最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理することは核燃料サイクルの重要なプロセスであり、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けて政府の取組を強化する。あわせて、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発を進める。

核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、引き続き着実に推進する。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

この点について、私はこのように考えています。

・今後脱原発をしたとしても、すでにある核廃棄物をどうするかという問題は残るので、いずれにしても最終処分地はつくっていかないといけない。

・ときどき原発推進派から「すでに核廃棄物があるのだから、原発を動かしても同じ」という、"毒を食らわば皿まで"的な意見を聞くが、原発を使い続ければ、核廃棄物が増えていく。

・処分方法も場所も決まっていない現在、核廃棄物を増やし続けるべきではない。処分方法と場所が決まってから、今後も原発を使うかどうかを考えるべき。

・最終処分地について、自治体に任せて待っていても手が挙がらないだろう、進まないだろうという認識はおそらく正しいと思う。

・ただ、現在の進め方には3つ問題がある。

・1つ目は、「待っていても進まない」という認識は正しいが、「それはなぜか」
という分析は正しいのだろうか? 「自治体が住民にちゃんと説明できていな
いからだ、自治体では住民の不安を鎮められない」という見立てで、「国がき
ちんと科学的に説明すれば納得するだろう」と思っているとしたら、違うので
はないか。

・自治体の住民への説明が不足・効果的でないという以前に、根本的に、これだけの地震国の日本で、原発を維持して増え続ける核廃棄物を地層処分することへの不安や不信が根本にあるのではないか。

・「国が科学的に説明しますから、ここでやりましょう」と言われても、根本的な不安とか不信は払拭できないだろう。

・地層処分の科学的な説明だけでなく、日本は原発をこれからどうしていくのか、という大きな枠組みが不確定な間は、話が進まないのではないか。

・2点目は、今回、自治体に任せていられないということで、国が前面に出るわ
けだが、短期的に進めるつもりだったら失敗するだろう。逆効果になるおそれ
がある。

・最終処分地を決めることができた世界の数少ない例であるフィンランドにしてもスウェーデンにしても、何十年という時間をかけて、徹底的に情報公開して、信頼関係をつくって、それで受け入れが決まった。

・国が今回、「国が前面に出る」といったとき、長期的に腰を据えて、しっかりと国が住民が向き合って、情報開示をして、対話をしていこうというのだったらよいが、「治体ではなかなか決まらないから、短期間に決めるために国が出ていくよ」いうことだと、うまくいかないだろう。

・基本問題委員会の時にも繰り返し言った(そしてほとんど通じなかった)ことだが、人々が何かを受け入れるのは、理性的な説明や説得の一方的な受け手となる時ではない。説明されたことに対して、能動的にワガコト化して、自分に引き付けて考え、「こういうときはどうなんだろう?」といった問いを発しながら、情報を求め、考えて、自分の意見を口にして、ほかの人の意見を聞いて、また考えるという、対話のサイクルがあってはじめて、何かを受け入れることができるのだと考えている。

・対話のサイクルには時間がかかる。国がそのかかる時間もわかったうえで、「前面に出て進める」つもりなのだろうか。その覚悟があるのだろうか。

・3番目は、高レベル放射性廃棄物の定義そのものについて。日本では、「高レベル放射性廃棄物」といったとき、いわゆる使用済み核燃料を指すのではなく、 使用済み核燃料を再処理した後の廃液やそれを固めたガラス固化体を指す。

・つまり、再処理とや燃サイクルを前提とした上での高レベル放射性廃棄物の最終処分地ということになる。

・原発の今後に関して、再処理や核燃サイクル自体をどうするかを考え直す必要がある現在、それを前提として話を進めることはおかしいし、問題だと思う。

~~~

報道によると、今回の基本計画に「原発の新増設」を盛り込むべきだという委員の意見もあったが、「国民感情的に今はそのタイミングではない」と外したとのこと。

本当に原発を新増設する必要があると信じているなら、たとえ国民感情が逆風になったとしても、しっかり打ち出し、説明し、説得すべきでしょう。それを「いまは出さない方がよい」という"距離感"で政策を操作するのはおかしな話です。(政策の出し方を調整しているだけだよ、と言われるのかもしれませんが、、、)

原発の新増設をどうするのか、つまり、日本はこれから原発をどうしていくのか、エネルギーをどうしていくのか、という本質的な方向性の話を、時間がかかることを前提に、先送りせずに、しっかりと議論し、対話し、進めていってほしいと思います。

 

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