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東日本大震災後の日本のエネルギーをめぐる状況はどう動いてきたのか?

2013年02月25日
東日本大震災後の日本のエネルギーをめぐる状況はどう動いてきたのか?

2011年3月11日に起こった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、日本でのエネルギー(特に電力)をめぐる状況は大きく変化・変動しています。私なりの見方で、5期に分けて、この2年間の主に原発をめぐる動向を整理してみたいと思います。

●東日本大震災前の状況

2011年2月時点で、日本には54基の原子力発電所があり、電源構成は原子力31.3%、火力63.1%、水力5.1%、再生可能エネルギー0.5%でした。2010年に策定されたエネルギー基本計画に基づき、「発電電力量に占める原発の割合を2030年には約50%まで増加」「そのために14基以上の原発新増設」をめざしていました。この原発依存度の増加の大きな理由は地球温暖化対策の必要性でした。

●第1期:3.11後、原発が次々と運転停止

2011年3月11日に起きた東日本大震災(地震・津波)によって、福島第一原子力発電所の6基のうち、1~3号機は炉心損傷・冷却機能喪失・建屋損傷を起こし、定期点検中だった4~6号機のうち、4号機も水素爆発を起こして建屋を大きく損傷しました。

東京電力では、福島第一原発の4基のほか、第二原発の原発4基、火力発電所6基も被害を受けて運転を停止。東北電力の有する原発全4基、日本原子力発電の1基も震災によって運転を停止しました。電力供給力が大きく損なわれたため、計画停電(輪番停電)が行われることとなり、暮らしや経済活動に大きな影響を与えました。

日本の原発は13ヶ月ごとに定期検査を受けることになっており、震災で停止しなかった全国の原発も順次、定期検査のために運転を停止する一方、国民感情や地元不安もあって定期検査後の運転再開ができず、原発比率は低下していきました。

●第2期:エネルギー基本計画の作り直し開始、すべての原発が運転停止

当時の菅首相が「エネルギー基本計画の白紙からの見直し」を指示し、「原発への依存度低減のシナリオを描く」ことを第一の原則として、閣僚らの「エネルギー・環境会議」が2011年6月に設置されました。経済産業大臣の諮問機関である資源エネルギー庁・総合資源エネルギー調査会に、有識者25名からなる「基本問題委員会」が設置され、エネルギーミックスの選択肢を作るための議論が始まりました(私も委員の一人でした)。

この間も全国の原発は定期点検に入っても再稼働できないため、原発依存度はどんどん低下していき、2012年5月5日には日本中の原発が止まりました。同時に、電力供給を補う火力発電の比率が高まり、燃料となる石油や液化天然ガス (LNG) の輸入が急増したため、2011年、日本は31年ぶりに貿易赤字に転落しました。

●第3期:大飯原発の再稼働と反対デモ、エネルギー政策をめぐる国民的議論

特に原発依存度の高かった関西電力では、代替燃料コストが経営を強く圧迫するうえ、節電効果を見込んでも約15%の電力不足になり、計画停電をせざるを得ない、として再稼働を強く求めました。

関電は大飯原発3・4号機について、従来の安全基準以上の災害などが起きた場合、原発に重大事故が起こり得るかどうかを判定するストレステストの1次評価結果を提出し、内閣府原子力安全委員会と政府も「妥当」と判断しましたが、大飯原発に隣接する滋賀県や京都府など近畿・中四国の7府県4政令指定都市が加盟する関西広域連合が強く反発し、再稼働の動きは膠着状態となりました。広域連合が5月末になって突然事実上の再稼働容認に転じ、7月に大飯原発3、4号機が再稼働されました(現在時点でも、日本で稼働している原発はこの2基だけです)。

大飯原発再稼働に対し、多数の市民が反対デモに参加しました。6月からほぼ毎週金曜日ごとに大規模なデモ集会が官邸前で開催されるようになりました。主催者発表で約20万人、警察発表で約1万7千人が参加した日もありました。7月16日に代々木公園で開かれた「さようなら原発10万人集会」には主催者発表で約17万人、警察発表で約7万5千人が参加、これまでデモ活動は活発ではなかった日本での新しい動きとして大きな注目を集めました。

2012年5月末、基本問題委員会が提出したエネルギーミックスの選択肢案をもとに、エネルギー・環境会議が6月末に最終的に3つの選択肢を国民に提示、8月中の最終決定をめざして、「国民的議論」が展開されました。

広く国民からの意見や声を集めるための「パブリックコメント」、全国11カ所での「意見聴取会」、そして新しい試みとしての「討論型世論調査」が行われ、「2030年までに原発依存率をゼロにする」選択肢が、討論型世論調査では47%、意見聴取会の参加者では68%、パブリックコメントでは87%といずれも他の選択肢よりも高い支持を集めました。

この結果を受けて、エネルギー・環境会議は9月14 日に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定しました。冒頭に「原発に依存しない社会の一日も早い実現」と明言し、「40 年運転制限制を厳格に適用」「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働」「原発の新設・増設は行わない」ことを原則として、「2030 年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」ことを決めました。

●第4期:政局の混乱により、エネルギー政策や原発のゆくえも混乱

この「革新的エネルギー・環境戦略」に対して、産業界や原発立地地域から強硬な反対意見が噴き出しました。強い反対勢力に、9月19日の閣議では「革新的エネルギー・環境戦略」自体を閣議決定することができず、参考文書の扱いとなりました。

その後は基本問題委員会も開催されなくなり、エネルギー政策をめぐる動きが滞っているうちに、衆議院総選挙が執行されることになりました。

民主党は「2030年代に原発稼働をゼロにする」ことを公約に掲げ、第三極のひとつとして発足した「日本未来の党」も「卒原発」を基本原則にするなど、原発が論点のひとつとなりましたが、自民党は「10年以内に電源構成のベストミックスを確立する」として、原発に対する中長期的な方向性は出しませんでした。

●第5期:自民党政権となって、原発ゼロ見直しへ

選挙の結果、野党第一党の自由民主党が単独で絶対安定多数(269議席)を確保する294議席を獲得し、公明党の31議席と合わせて衆議院再可決が可能となる3分の2を超える325議席を獲得し、政権を奪還しました。

12月26日に発足した第2次安倍内閣は、2013年1月末に、民主党政権が掲げた「2030年代の原発稼働ゼロ」目標をゼロベースで見直す方針を示し、経済産業省ではエネルギー基本計画の議論を3月をメドに始めることを決めました。これまで議論を進めてきた(私も委員を務めていた)基本問題委員会とは違う有識者会議を設定するとしています。

現在の日本の電源構成は、原発が2基のみの稼働で2.7%、水力6.2%、再生可能エネルギー0.6%、火力が90.6%です。

電力会社の経営はLNGなどの燃料コストの激増により悪化しています。電力会社10社の2012年4~9月期連結決算をみると、原発を保有する9社のうち、8社が最終赤字となり、原発比率が高い会社ほど赤字が大きくなっています。すでに電力料金の値上げに踏み切った東京電力のほか、4社が値上げ申請を出しており、特に産業界を中心に「電力料金が上がると、利益がすべて飛んでしまう」「日本での事業が続けられなくなる」といった不安・反対の声が高まっています。

●今後について

原発がほぼ止まっている一方、再生可能エネルギーは日本が最近になってやっと本気になって政策支援なども始めたものであるため、当面はまだ原発の代替をするほどの規模にはなりえません(10年前に始めていたら、今頃は電源構成の一翼を担えていたのでしょうに!)。

また、短期的には省エネが最も有効な解決策であり、元が取れる投資ではあるものの、この初期投資をバックアップするという観点での政策支援は現時点では十分ではありません。

朝日新聞社が2月16・17日に行った全国定例世論調査(電話)によると、原発の今後について5択で聞いたところ、「すぐにやめる」が13%、「2030年より前にやめる」は24%、「2030年代にやめる」は22%、「2030年代より後にやめる」12%で、「やめる」は計71%、「やめない」は18%でした。

原発事故への不安や政府・事業者の対応への不信感が払拭されていないこともあり、「原発のない将来」を望む声が変わらずに大きいものの、当面は原発を稼働しない分は代替火力に依存せざるを得ません。年間3.2兆円もの調達コスト増が電力料金値上げを通じて産業界や暮らしに与える影響への懸念も高まっており、再稼働への圧力も増しつつあります。 

政府は「原子力規制委員会が今年7月に安全基準を出すことになっており、その基準に基づいて安全性が確保された原発は再稼働する」というスタンスです。

原発のゆくえ・エネルギー政策については、「短期的にどうすべきか」と「中長期的にどうすべきか」の議論を分け、折り合いをつけながら進めていく必要があると私は考えています。

電気料金値上げはデフレ経済から脱却しようとするアベノミクスの足を引っぱってしまう、という議論も一理ありますが、一方で、大飯原発の再稼働が「この夏の電力逼迫を乗り切るために必要」と押し切られたものの、そのまま稼働が続いている状況に、原発慎重派は「短期的な必要性で再稼働を認めると、なし崩し的に原発推進につながっていくのではないか」という不安・不信を抱いています。

3月に立ち上がるというエネルギー基本計画を議論する新しい会議体にはぜひ、全体像を国民全体で共有しながら、短期・中長期の必要性の折り合いをつけていけるような議論を期待しています。

 

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