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アースポリシー研究所「近年の増加後も海洋公園は大洋の3%未満」

2014年03月12日
生態系
 
アースポリシー研究所「近年の増加後も海洋公園は大洋の3%未満」

世界の海はどういう状態なのでしょうか? ちゃんと守れているのでしょうか? レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

近年の増加後も海洋公園は大洋の3%未満

J・マシュー・ローニー

http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2013/update120

1975年5月、乱獲や海洋汚染への高まる懸念を受けて、33カ国の科学者や政府関係者が東京に集まり、海洋公園や保護区に関する最初の国際会議が開かれた。出席者たちはより多くの海洋水域を保護するために速やかに行動を起こす必要性を認め、水界生態系保全のため明確に管理される海洋保護区(MPA)の世界規模のシステムを作ることを満場一致で求めた。

今日、海洋資源はかつてないほどの脅威にさらされており、世界は思い描いていたMPAネットワークとはかけ離れたものになっている。2010年以降、保護区の面積は倍になってはいるが、現在MPAに指定されているのは、わずか海洋面積の2.8%――ほぼ合衆国に匹敵する約1,000万平方キロメートルの広さ――でしかない。また保護の程度にも違いがある。

たとえば、海底での採掘を許可しているMPAもある。そしてほとんどのMPAでは、少なくともある程度の漁を認めている。一方、漁やそのほかの破壊的な活動を完全に禁止している海域もある。これらの「禁漁」MPAは、海洋保護区とも呼ばれ、最大の保護価値を提供していると考えられている。しかし、そのような海域は世界の海洋保護区の半分以下に過ぎない。

管理の行き届いた禁漁区は、域内のすべての生息地と海洋生物を保護することで、効果的に生物の多様性を維持し、隣接する漁場をも回復させることが可能なことから、生態系とその漁場に依存している人間の両方に大きな恩恵を与えているということが、多くの経験と科学的研究からわかっている。

一般的に、保護区が設定されると、魚の個体数が増加し、個々の魚の体長も大きくなっている。通常、過度に乱獲されていた魚が最も恩恵を受け、すぐに個体数回復の兆しがみられる。

漁場を閉鎖すると、食料の供給や暮らしに支障が出るのではないかと心配されがちだが、保護区を設定することによりしばしば逆の効果があることがわかっている。なぜならば、そこには物理的な境界線があるわけではなく、魚はMPAの境界を越えて、釣り人のいる水域に入るかもしれないからだ。

成熟した大きな魚はより多く産卵するが、それが卵や稚魚として保護区から出ていくこともあり、やがては枯渇した漁業資源を補うことになる。将来的に漁業を支える保護区の力は、食の安全保障にとって大きな意味を持っている。

世界中で約30億の人々は、動物性タンパク質の少なくとも20%を魚から摂取しており、90%近くの魚類が持続可能なレベル、またはそれを超えて捕獲されているためだ。また漁業以外にも恩恵がある。保護された地域にはより多くの観光収入が入り、MPAの管理コストを相殺できる。

(表参照)

フィジー、インドネシア、フィリピン、ソロモン諸島の海洋保護区近辺に住んでいる人たちへの調査がこの点を裏付けている。ザ・ネイチャー・コンサーバンシーがまとめた、「(仮邦題)自然の投資銀行」(Nature's Investment Bank)と題する報告書では、MPAの外側で漁獲量が改善されたことや住民のタンパク質摂取量が増えたこと、特に観光ビジネスによる新規雇用の増加で、貧しい暮らしさえもが改善されたことが指摘されている。

このように、海洋保護区は、世界の海に対する負荷が増大し続けるなか、海洋資源を保護する上で欠かすことのできない重要な手段として、広範囲で見られている。魚に産卵場所を提供し、海岸線を守り、そして数百万の住民の暮らしを支えてくれる、豊かな海を育むサンゴ礁を取り上げてみよう。

世界中のサンゴ礁の約75%は、乱獲、海洋汚染、海水温度の上昇、そのほか多くの要因によって、危険にさらされている。2013年のベリーズでの研究は、サンゴ礁を漁業や企業活動から守ることがその再生力を強めることを証明した。海洋保護区内では、サンゴ礁が再生する可能性は、ハリケーンのような大きな災害を受けた後も、保護区域外より6倍も高いということだ。

世界最大のサンゴ礁、オーストラリアのグレート・バリア・リーフは、1979年にMPAとして設定された、おそらく世界で最も有名な場所だろう。面積が約34万平方キロメートルのこの海洋公園には、信じられないほどの生物多様性が存在する。魚類の数は1,600種以上、年間の観光収入は約40億ドル(約4008億円)に上る。

海洋保護区の区画割が進んだのは1980年代、しかし、当時のMPAはわずか4.5%を禁漁区にしただけで、保護対象とした生息地は非常に偏ったものだった。しかし、2004年、生息環境が明確に異なる70の場所すべて――そのうち30がサンゴ礁、残りはマングローブのようなサンゴ礁以外――について、保護を強化するため区画の見直しが行われた。現在、これらの「バイオリージョン」では、いずれも少なくともその20%が禁漁区とされ、全体ではグレート・バリア・リーフ海洋公園の1/3が漁業禁止となっている。

現在まで、漁業を禁止している海洋保護区のほとんどは、その範囲が狭く、海岸線に近い。しかし、数十万、いや数百万平方キロメートルもの海域を使った緩衝地帯の設定を求める声も高まってきている。島の周囲に広大な緩衝地帯を設け、そこで公海に生息する海洋生物を保護しようというのだ。そうすれば、おそらく、ウミガメやサメ、マグロなど、広範囲に及ぶ海洋生物種の完全な生活環が保護されることになるだろう。

ピュー慈善信託が支援しているグローバル・オーシャン・レガシー・プロジェクトは、こうした理念を推進する顕著な例だが、これに参画する科学者や国、地方の行政機関は、"2022年までに世界中に第一世代の大海洋公園"を作ろうとしている。例えば、2006年に米国が指定したパパハナウモクアケア海洋国家遺産、これもそうした理念の一つの現れだ。これによって北西ハワイ諸島の周囲36万2,000平方キロメートルの海域が保護されている。当時はここが漁業禁止区としては世界でずば抜けて大きい海洋保護区であった。

2010年になると、この公園よりもさらに広い海洋公園がピュー慈善信託の支援によって誕生した。英国がインド洋のチャゴス諸島に、英国本土よりも広い64万平方キロメートルにも及ぶ保護区を設定したのだ。

また2012年に、ピュー慈善信託が一般への宣伝活動を積極的に展開すると、オーストラリア政府がグレート・バリア・リーフに隣接する海域のコーラル・シーに100万平方キロメートルものMPAを設け、その半分を禁漁区にすると宣言した。さらに、この慈善信託は南太平洋にある英領ピトケルン島の周囲にも海洋公園の構築を提案しており、それが完成すれば、世界の禁漁区に83万平方キロメートルの禁漁区が新たに追加されることになる。

しかし、大規模な保護区を創設しようとする最近の試みが全てうまく進んでいるわけではない。2013年11月はじめ、南極海に二つの巨大な保護区を設けようとする国際協議が、ロシア、ウクライナ、中国が国の漁業が打撃を受けることを危惧したことで、不調に終わった。南極海の280万平方キロメートルの海域での漁業を禁止することになるこの提案が行き詰まったのは、この年はこれが3度目。提案国は、2014年に再度この保護区の検討を呼びかけるだろうが、最近のこのような後退した動きをみると見通しは暗そうだ。

MPAの数と面積を世界中で増やすことに加え、もうひとつ海洋生物を保護する上で優先的に取り組まなければならないのは、既存の海洋公園を充実させることだ。MPAのほとんどは、今のところ運営スタッフが不足し、資金も足りていない。その結果、監視や取締りが思うようにゆかず、多くの公園が「ペーパーパーク」と呼ばれる状態にある。(つまり、書類上だけで保護したことになっている)。

幸い、カリビアン・チャレンジ・イニシアチブと呼ばれる一つの心強い試みが、この問題の解決に向けて始まろうとしている。この運動は、カリブ海にある10カ国がザ・ネイチャー・コンサーバンシー、ザ・グローバル・エンバイロンメント・ファンド、ドイツ開発銀行から4,200万ドル(約42億円)の融資を受け、その資金を専ら既設の公園(海洋、陸上ともに)の管理レベルの向上と、最初から効果の狙える公園の新設に充てるというものである。

それぞれの国は、浅瀬に近い海域と沿岸部の少なくとも20%を、2020年までに管理の行き届いたMPAにするという全体目標に向けて動き出しており、資金の配分は2014年初頭から始まる予定である。

ところで、地球規模でMPAのネットワークを運営するにはどれだけの資金が必要になるだろう? この点について、2004年、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された論文が、世界の海の最低でも20%を保護する世界規模のネットワークの管理に必要な額を試算している。

80を超える既設のMPAを対象に計算した結果、執筆者たちは控えめに見積もったにしても、年間125億ドル(約1兆7,500億円)の経費がかかるだろうという。彼らが10年ほど前に出した額は、今も変わっていない。政府が乱獲のために毎年支出している補助金は推定200億ドル(約2兆400億円)、それよりも少ない額で広範囲の海の生態系が保護できる。

計画、管理ともに優れたMPAは、漁場と海の生態系を回復させる方法の一部分でしかない。重要な方法は、漁獲量の制限強化や、有害な漁業補助金の撤廃、農場や都市、工場から海に流れ込む汚染物質の大幅削減など、ほかにもある。二酸化炭素、つまり、地球温暖化の元凶である温室効果ガスの排出を減らすことも、気温の上昇幅や、すでに海の生態系を破壊している環境変化化学物質を少なくするには、欠かせない方法だ。これらの問題すべてに同時に取り組むことによってのみ、我々は、海の衰退を逆転させる大きなチャンスを手にすることになるだろう。

(表)海洋保護区の好例

○グレート・バリア・リーフ海洋公園(オーストラリア)

2004年に新たな海域が禁漁区に指定されて2年以内に、スジアラ――公園内の主要なリーフ釣りの対象魚種――の個体数密度が75%になるまでに増加した。2012年の論文によれば、保護区は調査対象水域のサンゴ礁生息地の28%を保護しているが、そこはその周辺30キロメートル(19マイル)以内のスジアラやスパニッシュ・フラッグ・スナッパーの幼魚全体のおよそ半分が生まれた場所となっていた。

○東部タスマニア(オーストラリア)

東部タスマニア沿岸部の水温の上昇率が地球全体の平均よりも4倍も高いことから、ガンガゼウニの生息域が拡大し、広範に広がるケルプ床が食い荒らされている。しかし、漁獲禁止のMPA海域内では、その海域で昔から乱獲されていたイセエビがウニを捕食するのに十分な大きさに成長し、ウニの増加を抑えて、ケルプ床崩壊の拡大を防いでいる。

○シャーク・リーフ海洋保護区(フィジー)

フィジー最大の島の南岸にある3つの村では、ダイビング・ツアーの運営会社と協定を結び、伝統的な漁法を行っている漁場(コリコリ)の一部を禁漁区にしている。村人たちは、保護区への入場を許可した少人数のダイビン グ・ツアー客から入場税を徴収し、その総額は年間約20,000ドル(約204万円)に上っている。3つの村すべては、コリコリ全域でサメ釣りを禁止し、「フィジー・サメ回廊」と呼ばれる海域が生まれている。

○プエルト・ペニャスコ海洋保護区ネットワーク(メキシコ)

ネットワークは、岩石ホタテ貝とアクキカイ――両方ともカリフォルニア湾の経済的に重要な軟体動物である――の個体数の減少に対応するため2002年に始まった。その後2年以内には、ネットワークの下降下流域に位置する保護されていない海域でも、ホタテ貝とシマガンゼキボラの稚貝の密度が3倍に増加している。

○アポ島海洋保護区(フィリピン)

アポ島沿岸のサンゴ礁水域の10%を保護する禁漁区域の設定により、隣接する海域でのニザダイ科やアジ科の魚の漁獲量(島で獲れる魚の40~75%を占める代表的な魚である)が増加した。保護区は、漁業収入だけでなく観光収入も増加させている。

○ゴウカンマ海洋保護区(南アフリカ)

1990年に40平方キロメートル(15平方マイル)の海域が禁漁地区になって間もなく(海岸での釣竿とリールでの釣りを除く)、ローマン――サンゴ礁に生息する捕食魚――の近海での漁獲量が増加した。保護区を離れた最初のローマンの幼魚が捕獲できるまでに成長した1995年頃から、漁師たちは再び大漁を経験することになった。2000年までには、船一隻当たりの一日の水揚げが倍増している。

○メデス諸島海洋保護区(スペイン)

この海洋公園は1983年に設定され、そこに51ヘクタールの禁漁区と伝統的な漁法だけが許される460ヘクタールの海域が含まれている。ダイビング、シュノーケリングや他の観光客対象のアトラクションによる収入は、少なくとも年間1,000万ユーロ(約13億9000万円)になると推定されている。

○アナカパ生物保護区、カタリナ海洋科学センター海洋生物保護区、ハイスラーパーク生物保護区、サンディエゴ・ラホーヤ生物保護区(アメリカ合衆国)

南カリフォルニアでの調査は、海域を保護することが、その海域で釣られる魚―ケルプバス、バードサンドバス、カリフォルニア・シープヘッド――にどんなに影響を与えているかを示している。隣接する保護されていない海域と比べると、保護区内の魚は1平方メートル当たり平均2.5倍、数が多く、体長は30%大きい。また、8倍も多く産卵する。

○メリット島国立野生動物保護区(アメリカ合衆国)

このフロリダの保護区は1962年に設定され、1970年代から、隣接するレジャー用の釣り場に、世界最大級のレッドドラム、ブラックドラム やスポッティッドシートラウトなどを提供してきた。1990年代半ばには、メリット島保護区の近くで釣られたレッドドラム、ブラックドラムのそれぞれの漁獲量の世界記録の総量は、その他のフロリダの水域を合わせた漁獲量を上回っている。

出典:アースポリシー研究所、J・マシュー・ローニー
2013年12月
出典については、エクセルの完全表を参照

さらに詳しいデータ・情報については www.earth- policy.org.を 参照のこと。

この情報はご自由に友人、家族、同僚の方々に転送してください。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン 電話:(202) 496-9290 内線12 |rjk@earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
マシュー・ローニー 電話:(202) 496-9290 内線17 |jmroney@earthpolicy.org
アースポリシー研究所: 1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403, Washington, DC 20036

注:1ドル=102円、1ユーロ=141円で換算

(翻訳:ff、酒井)

 

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