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インドの危うい「食糧バブル」

2014年02月02日
 
インドの危うい「食糧バブル」

昨年暮れに出されたアースポリシー研究所・所長のレスター・ブラウン氏のプレスリリースを実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。「食糧バブル」って何でしょう? 金融バブルに負けないほど(いや、それ以上に)恐ろしいものではないかと思います。。。ご一読下さい。

レスター・R・ブラウン

http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2013/update119

インドは今や、中国と米国に次ぐ世界第3位の穀物生産国である。より収穫率の高い品種の採用と灌漑の普及によって、生産量は1960年代前半以降で3倍にも増加した。しかしインドの穀物収穫高の3/5に用いられる灌漑用水のうち、困ったことに、干上がり始めている井戸からの割合が増えつつある。これが、増加を続けるインド人口に対する食糧供給の大きな混乱を招くのだ。

ここ数年で約2,700万本の井戸が掘られた結果、インド各州では地下水位が低下した。2005年には、基本的に慎重な見方をする世界銀行ですら、インドの食糧生産の15%は地下水の過剰な汲み上げによるものだと警告している。状況は依然として改善されておらず、約1億9,000万人のインド人がこのまま使い続けることはできない水を利用して食糧を得ている。これでは約1億9,000万人のための食糧基盤が、ほとんど警告を発する間もなく消えてしまうかもしれない。

その上、インドの穀物は地球温暖化に脅かされている。氷河はアジアの主要河川にとって、乾期における貯水池の役割を果たしている。ヒマラヤ山脈やチベット高原の氷河が縮小すると、近い将来には融氷水が増えるが、その後の水量は激減するだろう。厄介なことにモンスーンのパターンも変化しつつあるため、このモンスーンがもたらす毎年の洪水は予測しにくくなっている。

インドに起こっているのは「食糧バブル」である。つまり持続不可能な方法で灌漑用水を使い、食糧生産を増加させている状況だ。しかもこれが、5歳未満の子供の43%が低体重である国で起きている。国際援助団体「セーブ・ザ・チルドレン」のために行われた調査によると、1/4の家庭の子供に「食べ物のない日」(食べ物をまったく口にしない日)があるという。半数近くの家庭が1種類の主食だけで生き延びており、その結果、食生活が多彩であれば得られる必要不可欠な栄養素が摂取できていない。

貧困はある程度緩和されたとはいえ、世界銀行によるとインド人口の2/3はいまだに1日2ドル(約210円)未満で生活している。そして人口は2年ごとに3,000万人近く増えており、これはカナダ一国分の人数が扶養人口として加わるのに等しい事態である。20年以内にインドの人口は中国を抜いて15億人に達すると予想されている。

国民全員に食糧を行き渡らせようとするなら、インド政府は、食糧安全保障法(2013年9月成立)が打ち出している食糧配給制度の強化を超える措置を講じなくてはならない。食糧バブルが突然、壊滅的な形で崩壊する事態を避けるには、インドの食糧システムにとっての根本的な脅威に対処する努力が必要になるだろう。

これには人口増加にブレーキをかけるための、保健・家族計画・教育におけるイニシアチブの強化が含まれる。気候変動に対してインドが及ぼす影響を抑えるため、エネルギー・運輸政策を見直す必要もある。気候変動で水不足が深刻化する恐れのある国で石炭火力発電所を建設しているなど、信じられないほど近視眼的な発想である。

地下水の過剰な汲み上げはなかなか止められない。理由の一つには、それが目に見えず、井戸が枯れて初めてわかるということがある。7月、インド政府は遅ればせながら、水の利用可能性と枯渇へ向かうスピードへの理解を高めるべく、国内の帯水層の分布図をまとめるための支出を増やすと発表したが、これはただの一歩にすぎない。

地下水の過剰な汲み上げを促しているエネルギー助成金は、段階的に廃止されなければならないだろう。伝統的な集水方法――モンスーン期間中に得られる余分な水を小さな池に集める方法――は水不足の緩和策として役立てられる。農民も今までより効率的な灌漑技術を用い、水をそれほど必要としない穀物を栽培する――例えば小麦を増やし、米を減らす――ことによって水の使用量を減らすことができる。

今日の状況を見ると、私が1965年にインドで感じたことが思い出される。当時私は米農務長官オーヴィル・フリーマンの命により、インドの次期5カ年計画の評価に手を貸すために同地へ派遣されていた。国内のほぼ全域に干ばつ状態が見られた。これでは見込まれていた需要を満たすだけの収穫量は到底得られないだろう、とすぐにわかった。食糧支援がなければ、飢饉は避けられないだろうと思われたのである。

私はフリーマンに注意を促し、米国とインドの政府関係者に会って計画案を作成した。こうしてリンドン・B・ジョンソン大統領の、米国からインドへの穀物出荷とインド農業の再編成を結びつけるという「短いリード(short tether)」政策が生まれた。1965年に米政府が行ったインドへの1,000万トン――同年の米国の収穫量の1/5――の穀物出荷は、史上最大の食糧援助の取り組みとなった。

食糧安全保障は今日、半世紀前と同じくインドの第一の課題である。1965年に必要とされた穀物の量が9,500万トンだったのに対し、今では2億4,000万トン近い穀物を生産しているにもかかわらず、である。

多くの井戸が同時に枯渇したら、飢饉を目の当たりにすることになるのだろうか?それとも米国が、また助けに来てくれ、と頼まれるのだろうか?

現在、米国の穀物収量は1/3が自動車燃料、1/3が家畜の飼料に回っているため、米国の輸出量は減っている。人口が拡大するとともに、そして食物連鎖の段階を上り、大量の穀物を使って生産される動物性食品を消費する人が増えるとともに、世界全体の穀物需要は急速に高まっている。

穀物を巡る状況が厳しくなることは、誰にとっても食料価格が上昇することを意味する。この傾向は、水使用の効率化と、人口および気候の迅速な安定化に世界規模で取り組まない限り続くだろう。

その間にインドの井戸があまり早く枯渇しないことを願っている。


この記事は、もとは2013年11月29日付の『ロサンゼルス・タイムズ』紙に掲載された。レスター・R・ブラウンはアースポリシー研究所の所長であり、『仮邦題:新境地を開く:わが人生と満員の地球、空っぽのお皿』(Breaking NewGround: A Personal History and Full Planet, Empty Plates)の著者である。データおよびさらなる資料はwww.earth-policy.orgをご覧ください。

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翻訳:野村、チェッカー:保科

 

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