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エダヒロの本棚

地球とわたしをゆるめる暮らし
著書
 

枝廣 淳子(著)
大和書房

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私たち一人ひとりがいきいきと生きるとともに、持続可能な地球にしていくために大事なこと--「ゆるめること」。いつも張り詰めているのではなく、自分の意思で自分をゆるめられることは、しなやかな強さをつくり出す上でのコツなのです。本書では、毎日の暮らしの中でちょっと試してみられる「自分をゆるめるヒント」を55個挙げています。ぎゅっとがんばって効率よく動く時間とゆるめる時間のメリハリをつけ、さらに加速し続けそうな時代をしなやかに軽やかに乗り切っていきましょう。

はじめに


――いつも何かに追われている気がする……。
――何をやっていても心から楽しめない……。
――少し休みたい……。
――ここしばらく「!」が付くような経験をしていない……。

 こんなことを感じているあなたは、いつもネジをまかなきゃいけない、「ゆるめられない病」にかかっているのかもしれません。
ひょっとしてあなたは、「時間をかけちゃいけない」と思っていませんか?
たとえば、いつもできるだけ効率よく、お金や結果に結びつく行動をする。
何もしないでぼーっと過ごしたりせず、手帳にびっしり予定をつめる。
こんなクセがついているとしたら、あなたはいつのまにか、「ゆるめちゃいけない教」信者になっているのかもしれません。

現代は、言ってみれば「加速する時代」です。
地域からお祭りが消え(お祭りに参加したって、何の儲けにもならないでしょ?)、メールやケータイのおかげで、せっかくの休日も、平日と同じように仕事が押し寄せるようになりました。
ゆるめることができなくなった心は疲れ切って、荒れたりすさんだりしています。
 そうして、狭い範囲で短期的にしか物事が考えられなくなってくると、わかりやすい単一の基準ですべてを判断するようになっていきます。
「儲かるか、儲からないか」だけで考える。
買い物も「安いか、安くないか」だけで選ぶ――本来、値段はいくつかある購買基準のひとつでしかないのですが。
 こうして、大事なことや長期的なことを十分に考えられなくなってくると、自分自身と地球とのつながりに思いを馳せたり、未来世代のことを考えたりすることもできなくなります。これが、温暖化をはじめとする地球環境問題が深刻化している根本的な原因だと私は考えています。
 自分と地球とのつながりを感じたり、未来世代に思いを馳せたりすることができれば、地球を傷つけるようなことはしないはずです。
しかし、そのつながりが切れてしまっているため、自分が何をやっても、まるで地球には何の影響も及ぼさないかのように、各人や各国が自分の好きなように振る舞ったり、経済を無限に成長させようとしたりしています。
その結果、人間は地球が吸収できる量の二倍以上の二酸化炭素を出すようになり、温暖化が進んでいるのです。

 では、どうすれば大事なことを考えたり、感じたりする時間を生み出せるのでしょう?
自分もラクに生きていくことができ、地球への悪影響も減らしていく方法は?
 それこそ加速するのをやめて、ゆるめることです。
スピードを上げつづけるのではなく、スピードを落とす時間を、ときどき持つのです。
 もちろん、「いつものんびりしている」ということではありません。集中度を上げて効率よく仕事をする時間と、ゆるめる時間のメリハリをつけるよう、自分の手綱を自分で握るということなのです。
ゆるめることができれば、先のことまで考えられるようになります。いま自分がやっていることが、子どもたちや孫たちの世代に与える影響についても考えることができるでしょう。
「不効率だ、不経済だ」と言われて切り捨てられていた大事なことにも、手をかけられるようになります。
「手をかける」ということは、そこに時間の経過を盛り込むということ。
その時間とプロセスを楽しむことこそ、「生きる」ということではないでしょうか。
ゆるめることは、さぼることではありません。しなやかな強さをつくり出す大事なことなのです。
 竹を考えてみてください。強い風が吹いたり、重い雪が降り積もったりしたとき、竹はしなることで折れるのを防ぎます。そして、風が行き過ぎ、雪が落ちれば、また元のまっすぐな姿に戻ります。
もし竹が一瞬もゆるめることなく、硬直して立っていたら、強い風や重い雪にポキンと折れてしまうでしょう。竹はちゃんと、自らをゆるめることを知っているのです。
私たちにとっても同じこと。
竹のようなしなやかな強さをもっているかどうか――これは、ますます変化が激しくなる時代を生きていくうえでの大切なサバイバル・スキルなのです。
常に張り詰めた状態で走りつづけるのではなく、ときにはゆるめて、しなる――そのメリハリがつけられれば、生きることがラクになり、何があっても生きていける力も生まれます。
 人生は短期戦ではありません。山あり谷ありの長期戦です。
短期的には最も効率がよいように思える「全速力で休みなく」という生き方は、実は、長期的に見ると、効率的でも効果的でもないのです。
ゆるめられる人は、短期的にはおくれを取って見えることがあったとしても、長い人生を通してみれば、ずっと効率的かつ効果的に生きていくことができます。ゆるめる時間のROI(投資資本利益率)は、実はとても大きいのです。

 人は、昔からこのことを知っていました。
活動的な昼の時間のあと、ゆるめる夜の時間がある。五日か六日間、一生懸命働いたあと、日曜日に休息日を取って、体も心もゆるめる。
農繁期に懸命に仕事したあと、お祭りなど、みんなでゆるめる時間を持つ。
どの文化にも、ゆるめることでメリハリをつけ、しなやかな強さを確保しようとする、人類のサバイバルのための仕組みが内包されていたのです。
 ところがいまはどうでしょう?
とても忙しく、あわただしい時代です。常に緊張し、張り詰めている状態で生きている人が、なんと多いことでしょう。それはその人の責任ではなく、そのような社会と時代になっているからなのです。
次々とやってくる締め切り、あちこちから押し寄せる課題や問題、グローバル経済や金融不安など、さまざまな不安やプレッシャーに、私たちはみな常に張り詰め、緊張し続けています。
「これでは長期的にもたない」とうすうす感じつつも、「いまは無理をしてでも何とかしなければならない」という状況に陥りやすい時代なのです。
だとしたら、「自分をゆるめる」ことは、自分で意識してやらなくてはなりません。 

 ゆるめることができるようになると、心が動くようになります。
大きな「!」も小さな「!」も、毎日の暮らしの中でたくさん感じることができるようになってくるでしょう。
心が動く瞬間こそが、「生きている」と実感する瞬間です。
心が動く瞬間が増えていくにつれ、生きている実感が熱く、強くなっていくことでしょう。そうして、自分の人生の手綱を自分で握ることができるようになります。
 大事なものとのつながりに思いを馳せたり、ゆっくり考えたり試してみたり、短期的な結果よりも長期的に大事なことを重視したりするようになれば、温暖化をはじめとする環境問題も解決に向かうと私は信じています。
 世の中のペースは、すぐにはゆるむことはないでしょう。ますます加速する可能性があります。
だからこそ、自分なりの「ゆるめるためのスキル」を身につけておいてください。それは自己防衛のためでもあり、地球を守るためでもあるのです。

 本書では、毎日の暮らしの中で、ちょっとしたきっかけでできる「自分をゆるめるヒント」を五五挙げました。ほかにも、自分なりの「ゆるめるヒント」をぜひ探してみてください。
年がら年中だらりとゆるんでいる状態が理想ではありません。
いったん自分をゆるめてしまったら、元には戻れなくなるのではないかと心配する人もいます。自分に対する自信のなさから、ゆるめることを自分に許していない人もたくさんいます。
でも、人間は本来、必要なゆるめる時間がとれれば、またシャッキリと立ち上がり、駆け出すことができるようになっています。もし、いまそれができないとしたら、それほどにまで張り詰めているのでしょう。
 ネジをギューギューと強く締めすぎると、ゆるめられなくなってきます。さらに締め続けると、ネジは壊れてしまいます。そんな状態になる前に、自分で自分をゆるめるコツを身につけることです。
あなたもぜひ、スピードと効率で走っていく時間と、身も心もゆるめてしなやかな強さを養う時間とのメリハリを自分でつけられるようになってください。
そのきっかけづくりに本書が役立つとすれば、これ以上、うれしいことはありません。

枝廣淳子


 

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