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エダヒロの本棚

がんばっている日本を世界はまだ知らない vol.2
著書
 

枝廣 淳子、ジャパン・フォー・サステナビリティ(共著)
海象社

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日本の環境への取り組みを満載したシリーズ第2弾!今回は、2004年のニュースレターや活動をテーマごとにわかりやすくご紹介しています。ワクワクする日本もさらにパワーアップ。地方自治体、企業、団体など、まだまだ知られていない日本各地の取り組み、元気をお届けします。また「21世紀型の新しい組織のあり方」としてのJFSの仕組みや活動、そのヒミツも本邦初公開!

はじめに

 今年もこうして『がんばっている日本を世界はまだ知らない』をお届けできることをとてもうれしく思います。何かを「やりたい!」「やろう!」と思うことと、実際にそのことをカタチにし、続けていくことは別物です。
「せっかくの日本のよい取り組みが世界には知られていないよ。発信しようよ!」という私たちの思いが、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)という場を作り出すことでカタチになり、多くの方々のおかげで、こうして「混迷を深める世界にあって、いつも希望と夢と元気がこんこんと湧き出している泉」のごとき活動を続けられていることを、心から幸せに思います。
 同時通訳者、翻訳者、環境ジャーナリストとして仕事をする中で、環境の分野でも、情報の輸入過多状態――日本にはたくさん海外の情報が入ってくるけれども、日本の情報はほとんど海外に出ていっていない――であることをつねに実感していました。「スウェーデンでは」「アメリカでは」と通訳をしながら、「日本にもいい取り組みがあるのになぁ」「日本には昔ながらの知恵もあるし、江戸時代だって循環型社会だったんだけどなぁ」と思うのです。海外にとって、「日本からの情報がない」ということは、「日本では何もやっていない」ということになります。「本当はいいことをいっぱいやっているのになぁ。もったいないなぁ」といつも思っていたのでした。
 もちろん日本にも、英語版の環境報告書を作成している企業はたくさんあり、英語ページを用意している政府や諸団体のホームページもたくさんあります。しかし、ただ「あります」というだけで、その情報を使ってもらえる人にほとんど届いていない、というのが実感です。英語情報があっても、きちんと伝えるチャンネルがないために、せっかくの英語情報を生かし切れていないのです。
 そうした思いから、2002年8月に多田博之氏とともにJFSを立ち上げました。理事の東京大学の山本良一教授、千葉商科大学の三橋規宏教授、アースポリシー研究所のレスター・ブラウン所長のほか、多くの法人会員や個人サポーター、ボランティアの方々のご支援・ご協力を得て、幸せな活動を続けることができています。
 JFSの発信している情報は、「こういう社会になってほしい=持続可能な社会」をかいま見せてくれるようなポジティブな情報です。毎月30本、日本のさまざまな進んだ環境の取り組みを記事としてウェブのデータベースにアップしています。ちょうどパッチワークのキルトの一片一片のように、私たちの望んでいる持続可能な社会をさまざまな角度から撮ったスナップショットになっています。しかも、その活動や取り組みはすでに行われているものばかりです。このような取り組みがあちこちで広がり進めば、ジグソーパズルのように「持続可能な社会」の姿が完成していくことでしょう! 毎日、発信する情報の準備をしながら、ワクワクしています。
 このほか、毎月英語でニュースレターを出しています。個別記事の集合を大きく俯瞰したときに、「今日本では何がホットなのか」「日本はどこへ向かおうとしているのか」という全体像を伝えるとともに、自治体や企業の取り組みを深く紹介することで、実際に物事を動かそうとしている世界の人々に役立ちたいと思っています。オピニオン・リーダーやキーパーソンをはじめとする現在175カ国の5000人を超える、政府、自治体、企業、NGO、大学、マスコミ、一般の方々にニュースレターを届けています。(英語版とダイジェスト版は、ウェブサイトから無料で登録できます。)
 本書は、立ち上げ直後の2002年9月~2003年12月までの海外向けの英文ニュースレターの記事とJFSの活動、海外からのフィードバックをまとめた『がんばっている日本を世界はまだ知らない vol.1』の続編となります。2004年1月~12月のニュースレターや活動が素材です。日本の取り組みといっても、私たち日本人も知らないことがたくさんあります。日本の各地で展開している取り組みを見て、一緒にワクワクしていただけたら、そして多くの組織や地域での「私たちもやろうじゃないか」という動きのきっかけになったら、とてもうれしいです。持続可能な日本の姿とそこへの進捗を測る指標を作ろうという「指標プロジェクト」をはじめ、JFSの多彩な活動も知っていただけます。
 JFSの活動は現在、60数社の法人会員、約250人の個人サポーターからの会費に支えられています。毎月30本の情報発信をはじめとするさまざまな活動は、300人近いボランティアが多くのチームに分かれて、有機的なネットワークを組み、作業を行っています。この新しいタイプのネットワーク型組織についても、今回7章で詳しく取り上げました。
「日本の取り組みを世界に発信することで、世界と日本を持続可能な方向へ動かしていこう!」という私たちの使命に思いの重なるところがありましたら、サポーター、ボランティアとして、ぜひご一緒に! 楽しいですよ~!

2005年春
ジャパン・フォー・サステナビリティ共同代表 枝廣淳子

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あとがきにかえて―JFSボランティアの魅力

 昨年の第1巻に続き、この出版プロジェクトに参加させていただきました。JFSとは何年も前からお付き合いしてきた気がしますが、短期間とはいえ、これほどJFS三昧の日々だったのは思えば初めてです。
 今回ご一緒したボランティアの仲間は、青豆礼子さん、荒木由紀子さん、岸上祐子さん、五頭美知さん、佐藤千鶴子さん、佐野真紀さん、田村優子さん、中小路佳代子さん、野島直子さん、八木和美さんの11名です。原稿の元になっているニュースレターを書いた方も含めればもっと大勢になります。
 自分もかかわっていながら、ふと他人事のように「JFSのこの求心力は一体何なんだろう?」と思うことがあります。それぞれに仕事や家庭があり、忙しい方も多いのに、ときに本業そっちのけ(!)のような熱心さで、さまざまな活動に取り組んでいる方が多いのです。
「環境にいいことを何かしたい!」「持続可能な社会になったらいいなあ!」という思い持つ人は少なくないでしょう。でも一方で「環境問題ってややこしくて、どこから手をつければいいんだろう?」というのも、多くの人の正直な気持ちではないでしょうか。そんなとき、自分の得意分野やできる範囲で活動を始められる「場」を提供してくれる、いわばプラットフォームとなっているのがJFSなのでしょう。
 フルタイムでNGOにかかわる余裕はないけど、少しは環境の活動にかかわっていたい。今は忙しいけど、来月になったら何か手伝えなるかも。なかなか家を空けられないけど在宅でできることなら――。そうした柔軟なかかわり方ができるのがJFSでの活動の魅力です。私がいちばん刺激を受けているのも、こうした組織と活動スタイルの柔軟さかもしれません。
 仕事にせよボランティアにせよ、1つの組織だけに縛られる時代ではないのかなと思います。ある課題を解決するにも一部の専門家だけではもはや難しいように、1人の「思い」を形にするにも1つの組織に属しているだけでは足りないのかもしれません。今いるところ――仕事、人間関係、その他諸々――に不満はないけれど、もっと新しいこと、これまでと違うことにも挑戦してみたくなる、そんな気持ちを満たすのに、マイペースで(ときにはハイペースで!)柔軟なかかわり方ができる場があるのはとてもありがたいと思います。
 貴重な時間を割いて、一緒にこの本づくりに参加してくれた皆さん、お疲れさまでした。メールでしかやりとりのなかった方もいましたが、ぜひ今度お会いしたいですね。
 最後になりましたが、海象社の山田一志さんにはたいへんご尽力いただきました。JFSのこの1年間の取り組みを、そして私たちボランティアの思いを形にしてくださり、どうもありがとうございました。

2005年春
出版プロジェクトチームを代表して 小島和子

 

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