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エダヒロの本棚

朝2時起きで、なんでもできる!3
著書
 

枝廣 淳子(著)
サンマーク出版

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『朝2時』第3弾では、みんながやってる「アイデア編」として、みなさんからのフィードバックを元に、12人の「くふう名人」たちの時間テク、英語マスター術など、夢をかなえるあれこれを、エダヒロ流のヒントやコツと合わせて紹介します。どの方のくふうややり方も、「へえ、なるほど~」というもので、「じゃあ、自分はどういうことができるかな?」と発想の連鎖が進み、きっと新しい何かにつながります。

はじめに

『朝2時起きで、なんでもできる!』を出してから、朝早く届くメールが増えました。ときには「本当に起きているのー?」という疑い深い友人からの確認の(?)メールが来ることもあります。朝四時か五時を過ぎると、いっしょにNGOの活動をやっている仲間とのやりとりも始まり、「類は友を呼ぶのかなあ? それとも、早起きは伝染するのかなあ?」と思ったり。
『朝2時』を読んでくださった方からも、よくメールやお手紙をいただきます。
「本を読んで、背中を押された気がしました。さっそく、前からやりたかったことを始めました」
「二時は無理ですが、五時に起きるようになりました。家族が起きてくるまでの時間、コーヒーを入れてゆっくり新聞や本を読んでいます」
「翻訳者になりたい、という夢を思い出しました。少しずつ時間を見つけて勉強しています」など、他人事ながらうれしく思います。
 私が『朝2時』を書いたのは、「私はこういうふうにやってきました~。こんなふうに考えています」というだけの思いでした。
「あなたも早起きをしなさい」
「みなさんも自分のビジョンをもちなさい」
 ……なんていうつもりはまったくありませんでした。だって、それぞれの人生ですもの。ただ、「こんな変わったのもいますよ~。こんなのもアリですよ~」という「例」にはなれるかな、と思ったのでした。朝二時に起きるなんて、二九歳から思い立って猛勉強して同時通訳になるなんて、ヘンでしょう? それでも(というか、だからこそ)ハッピーなやつがいる、と聞けば、「自分もちょっとぐらいヘンでもいいかも」と、選択の幅が広がるかもしれないな、と。
 英語では"out of box"などといいますが、私の本が、自分の「いまの箱」から一歩出てみるきっかけとなったのだとしたら、そして、その結果、思いもよらない自分の気持ちややりたいことが見つかったのだとしたら、とてもうれしいことです。著書にサインを頼まれるとよく、「あなたはあなたのままでいい。でも、いまのあなたでなくてもいい」と書くのですが、自分についても人についても、本当にそう思うのです。
 このように「私もこんなふうにやっています」という声をたくさん聞く一方、「枝廣さんだからできるんですよ」ともよくいわれます。そのたびに「そんなことないのになあ。たしかに、こういうヘンなのは珍しいかもしれないけど、でもそれぞれ、自分なりのヘン(箱から出てみる)をやっている人もいっぱいいるのになあ」と思っていました。
『朝2時』の担当編集者の青木由美子さんと雑談していたときに、「枝廣だから、じゃなくて、ほかの人たちもこんなふうにやっていますよ、こんな工夫をしていますよ、という本を作ったら、もっとたくさんの人の参考や刺激になるんじゃないかなあ?」と提案したところ、「それはおもしろいですね!」と本書を企画してくれました。
『朝2時』の読者を中心に、アンケートや体験談を集めました。それぞれの試みや工夫、喜びや展開に、「なるほどー」「そうか、こういう工夫もできそうだ」と刺激を受けました。なかでも刺激的な一二人の方からは直接お話をうかがい、「なるほど!」や「へえ!」の連発で、夢中になってメモをとりました。お話に触発されて、私の中でもいろいろな思いつきや考えが次々と出てきます。今後のプロジェクトになりそうなネタもいくつかもらったほどです。
 みなさんのお話を「タイム・マネジメント/早起き」「ビジョン」「英語/学習」「家族/人間関係」という四つのジャンルにまとめ、それぞれについて、私がいま考えていること、工夫していることなども書きました。参考や刺激のひとつになったらうれしいです。

 私は最近「自分マネジメント」の話をよくします。「自分マネジメントを身につけるセミナー」も開催しています。「自分マネジメント」とは、自分の目的や目標に向かって、「自分をあやし、なだめ、励ましつつ、進めていくしくみ」のことです。
 たくさんの人が、「あれがやりたい!」「この資格を取りたい!」という熱い思いに燃えて、何かを始めるでしょう。でも、二、三日徹夜をすればできる、というものでないかぎり、「熱い思い」だけで駆け抜けることはできません。しばらくすると、当初の熱い思いはさめてきます。最初に予想していなかった問題が出てくる。思ったように進まない。このまま続けても目的地にたどりつけるのか、不安になってくる……。こういう状態で、「もうやめた」と挫折してしまうことがよくあります。そして、「やっぱり自分はだめなんだ。また挫折してしまった」と落ち込んでしまう。
 これはとても、もったいないことだと思うのです。あらかじめ、何か月も何年も、当初の熱い思いだけで続けていくのはしょせん無理なのだ、と思ったほうがいい。雨も降れば槍も降るのです。必要なのは、そんななかでも「自分に続けさせるしくみ」です。そのしくみもなく、自分の「熱い思い」だけを原動力に、目的地まで行こうとするのはツライはずです。少なくとも、それほど強い意志も、何事にもめげない聖人のごとき人格を持っていない私には、無理です。
 そこで、私は何かやりたいことがあったとき、当初の熱い思いがさめても、自分を進ませてくれる「自分マネジメント」のしくみを、いろいろと工夫してきました。
「マネジメント」は、日本語では「管理」と訳されます。でも、辞書には載っていませんが、「マネジメントとは一二〇%活かすこと」だと私は思っています。「管理」する相手を、ぎりぎりと締めつけて思うように動かすことではなく、相手のもっている力を本人よりもよくわかり、花開く環境を整え、上手に引き出し、一二〇%活かすことがマネジメント。つまり、マネージャー(管理職)とは、部下を統制したり締めつけたりして従わせる役割ではなく、部下のもてる力を最大限に引き出して、一二〇%活かす役割なのです。
「自分マネジメント」とは自分をぎゅうぎゅう締めつけたり、叱ったり非難したりして、思う方向に動かすことではありません。まだ気づいてないものも含めて、自分のもっている力を最大限に発揮できるよう、自分や自分のクセを知り、必要なときには「アンヨはじょうず」と自分をあやしたりなだめたりしながら、自分をうまく励まして、めげずに進みつづけることです。「自分のコーチになる」のがポイントです。
『朝2時』①②には、私が自分を実験台に実証してきた「自分に効くしくみや工夫」を書きましたが、本書に登場するいろいろな方の「自分マネジメントの工夫」にもぜひ注目してください。ヒントになることがいっぱいあると思います。

 ところで、私は家では「自分マネジメントができないお母さん」です(外では自分マネジメントを教えているのに……)。そのぶん、子どもたちがしっかりしているので助かります――よくしたものです(子どもたちにとっては、自衛なのかもしれませんが!)。
 このあいだ、大好きな花火を見に、近くの多摩川まで出かけました。直前まで仕事にかかりきりで、「そろそろ行かないと間に合わなくなるよ!」と子どもたちにせかされ、家を飛び出したあと、「あ、敷物を忘れた!」と私。小学校五年生のあかりが「だいじょうぶ、持ってきたから」。「あ、ありがとう」と私。
 駅のそばまで来て、「あ、お茶を入れてくるのを忘れた!」と私。中学二年のみさきが「私が水筒に入れて持ってきた」。「あ、入れてくれたの、全然気がつかなかった。ありがとう」と私。
 そのうえ、「花火大会の近くは高いから、駅の近くで買ったほうがいいよい」と、私のビールの心配をしてくれたり、お小遣いで焼き鳥を買ってきてくれたり。「うちでいちばん人間ができているのは、みさきとあかりだねえ!」というと、夫もうんうんとうなずいています。
 私はいつものように缶ビールを握りしめ、「日本人に生まれてきてよかった!」と、うるうるしながら、花火を見上げていました。いろいろな色やパターンの花火が次々と上がります。あ、あれは今年初めて見る色だ。迫力の一尺玉に、多彩色のスターマイン……。見上げながら、もしこの花火が全部同じ色・形・パターンだったら? と思いました。それがどんなにステキな花火だったとしても、どれも同じだったら、どんなにつまらないことでしょう。
「いろいろあっていい。いろいろあるほうがいい」
 地上で見上げている私たち観客にはいっさい関係なく、夜空に花火が広がります。観客がいてもいなくても、ほめていてもけなしていても、花火はまったく気にせずに、それぞれの花を夜空に広げます。いいなあ!
 本書に広がるたくさんのそれぞれの花火を、どうぞ楽しんでください。そして、あなたも、あなただけの花火を空いっぱいに広げられますように!
 花火って、きっちと夜空で「イエーイ!」って花を開かせているのだと思うのです。

 二〇〇四年の夏の終わりに
  枝廣淳子

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あとがきにかえて ――「いつのまにか枝が広がり……!」

 二〇〇四年四月に、自分の会社を作りました。「e's(イーズ)」といいます。「English」「Ecology」「Empowerment」などの集まりです(あ、「Edahiro」もeです!)
 米国での二年間の生活を終えて帰国したのが一一年前。一〇年前に、念願の通訳者としての仕事が始められて大喜び。そこから、環境分野での講演や執筆に広がり、この二、三年は、ビジョンや自分マネジメントなどの自己啓発の分野でも活動するようになっています。
 ヒトゴトではないのですが、振り返るたびに、「おもしろいなあー」と思います。
 どうも「次々と新しいことや、やりたいことを思いつくクセ」と、「思いついたことを実現する方法を考えるクセ」がついてしまったようなのです。
 そのうえ、自分一人では実現できないことを実現するしくみがわかってきたので……鬼に金棒というか(?)、「走り出して止まらない!」モードに入ってしまったようなのです。これからますますおもしろくなりそう! です。

思いついたら、できちゃった!
 どうしてこういうクセがついてしまったか? ある「思いつき」を思い切ってやってみたら、なんとかできちゃった。できてみたらおもしろかった。やっているなかで、どうやればもっとやりやすいか、いくつかコツやヒントがつかめた。じゃあ、別の「思いつき」で試してみよう。あら、こんどはこういうことがわかった。それにこんないいコトにつながった。おもしろいなー。どんどん思いついてもいいんだナ。次は何をやってみようかな? ……という、大小の思いつきをカタチにする「できたじゃない?」という成功体験の連鎖のおかげなのです。
 ひとつの例ですが、私の師事・支持するアースポリシー研究所のレスター・ブラウン所長を招いて、研究所の資金集めの会を開くようになりました。自分が主催して講演会を開催するなんて、数年前には「自分には無理」という以前に、「自分がやる」という可能性すら考えられなかったようなことでした。でもある日、なんとかレスターをサポートしたくて、自分に何ができるかな~と考えていたとき、「思いついちゃった」のです。
 ……そうだ、一般の人向けに講演会をやろう。レスターから直接、最前線の話を聞いてもらおう。ただ、レスターの講演だけだとちょっと堅いから、レスターのことを知っている私が聞き役になって、レスターの子ども時代の話や活動への思いなど、ふだんの講演では聞けない話も聞いてみよう。せっかく皆さんに来てもらえるなら、ただ話を聞いて終わりではなく、次につながる場にしてもらいたいな。そうだ、NGOや企業など、それぞれの活動を展示・説明してもらう場を作れば、参加者もいろいろな情報や取り組みを知ることができて、つながりのきっかけになるかもしれない。初対面の参加者同士も話ができるように工夫できないかな……。

思いを「切った」らできちゃった!
 そんな「思いつき」を実行に移すには、かなりの「思い切り」が必要でした。やったこともないので、やり方もわからず、成功の確率もわかりませんでした。結局は「やってみるしかない。やってみないとわからない。失敗しても失うものはあまりなさそうだし、やってから考えよう」と、次々と出てくる疑問や心配や不安な思いを「切った」のでした(「思い切り」とは本当に字のごとしだと思いました!)。
 こうして、「エコ・ネットワーキングの会」という会を臨時に作り、その代表として、会場選びや交渉、告知や参加のお誘いなど、五里霧中の数か月の準備期間のあと、当日、でっかい手作り名札をつけた(初対面でも話をしてもらえるように!)参加者が会場をいっぱいにしてくれました。当日は朝から、夫と二人の娘たちはもちろん、私の実家も夫の実家も総動員して、配布物の準備(まるで家内工業みたいでした)。多くの友人にも受付や会場の整備などを手伝ってもらい、無事終了。研究所にたくさん寄付もでき、参加者にも喜んでもらえて、「自分でやるなんて考えられなかったことも、やってみたらできた」という大きな経験になったのでした。

「好き」と「得意」を持ち寄れば……!
 しかし実際にはとても大変でした。「もう、二度とやらないゾ!」と思ったほどです。しかし、思ってもいなかったのですが、「いっしょにやりますから、今年もやりましょうよ」といってくれる人たちが出てきました。こうして、一回かぎりのはずだった「エコ・ネットワーキングの会」は三回のレスター講演会の収益で約二〇〇万円を研究所に寄付し、先日は初めてレスター以外のゲストとして、『カサンドラのジレンマ』(PHP研究所)の著者アラン・アトキソン氏を招いて、第四回を開催しました。
 第一回のあとに「いっしょにやりますから」といってくれた人たちは、そのうち「私たちがやりますから」といってくれるようになり、仲間が増えていきました。ありがたいことに、いまでは、私が「レスターが来るので、またやる?」と声をかけると、数十人のボランティアチームがすぐに立ち上がって、企画や準備から当日の運営まですべて行ってくれるしくみができています。いまも第五回の準備が始まっています。
 二年前には、日本の環境の取り組みを世界に発信することで、世界と日本を「持続可能な世界」へ推し進めていこうという環境NGO、ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)を多田博之氏と立ち上げました。これも自分にとって、大きな転換点になりました。
 日本各地・各分野の最新の情報を入手して、そのなかから世界に発信する情報を選択し、日本語で記事を書き、それを英訳し、ネイティブチェックをして、ウェブに載せていく。並行して「こういう日本の情報がありますよ!」と世界にセールスし、世界からのさまざまな問い合わせやメールに対応する。世界の情報や知見を日本に紹介するセミナーや勉強会を開催する。JFSが世界に発信している情報と世界からのフィードバックを本にまとめて出版する……。このような多彩な活動を「これは大事なことだ」という思いをもつ三〇〇人近いボランティアさんが、一〇以上のチームに分かれ、自分の「得意」や「好き」を持ち寄って行っています。

「ジャズプレイヤー型」で働こう!
「給料も払ってないのに、こんなすごい活動ができるのですか!」とよく企業の人に驚かれますが、そのときに必要な活動をプロジェクトとして、やりたい人・できる人が手を挙げてチームを組んで行う「ジャズプレイヤー型」の活動形態は二一世紀型であり、新しい働き方のモデルにもなる、と思っています。
 ボランティア組織をどのように作れば、お金がなくても、少人数の人に過剰な負担をかけずに、世界に通用する質の高い活動がつづけられるか?――立ち上げ準備を始めたときら、私はずっと考え、試行錯誤してきました。新しい組織論の本が書けるのではないかと思うほど、メンバーといっしょにいろいろ試しつづけています。
 現在ある一〇以上のチームでそれぞれが自立・自律した「現在進行形」であることが最大の特徴です。もっとも活動がやりやすいよう、メンバーがチームのあり方や作業プロセスを考え、改善しています。私は必要があれば相談に乗っていますが、「JFSの特徴は、何も決まったことや確立された方式がない、ということです。いまたまたまそういう作業プロセスになっていますが、メンバーがもっと活動しやすいように、どんどん変えてください」といいつづけています。そして、各チームが独自の工夫をしながら、何かをきっかけに大きく展開・進化していくようすに、「すごいな!」と目を見張っています。
 JFSは「日本から世界へ」の発信ですが、「世界から日本へ」も、出したい翻訳書や紹介したい海外の情報が増えるにつれて、自分一人ではとうてい手が足りなくなりました。オンラインで環境を題材に英語を勉強する会を四年前に立ち上げ、さらに、トライアルテストをして合格者約四〇名のチームを作りました。すでに翻訳書二冊を出し、たくさんの情報を日本に届けています。このチームも、メンバーが順番にまとめ役になって、私がいなくても活動できるしくみが整っています。

一人じゃないからできること
 フリーランスとして一匹狼の気安さを選んだはずの私でしたが、このような活動を通して、「組織の力」「チームワークのすばらしさ」をまざまざと感じるようになりました。一人で活動していると、対人関係のストレスもないし、自分ですべてをコントロールできますからラクです。その一方、どうしても活動がゲリラ活動的になり、大きなことはなかなかできません。
「エコ・ネットワーキングの会」やJFS、和訳チーム、去年から始めた「一〇〇万人のキャンドルナイト」の呼びかけ人代表のグループなどの活動を通じて、「そうか、組織のマイナス面を最少にし、効果を最大にする組織を自分たちで作ればいいんだ」と思うようになりました。「組織の力」を実感し、自分でも活かそうと意識的に動くようになったことは、最近の私のもっとも大きな変化です。次の段階へのパスポートになりそうです。
 有限会社イーズを設立したのも、個人ではなく、会社だからこそできることがある、と思うようになったためです。自分が会社を設立するなんて、『朝2時』①②を書いたころには、考えたこともありませんでした。
 イーズのキャッチフレーズは「考えようとする瞬間に立ち会うために」です。英語の勉強でも、環境問題への取り組みでも、自分の生き方や生活でも、「このままじゃいけない。変えたい!」と思ったとき――変えたい対象が自分であっても、社会であっても――、変えるための「考え方」「プロセス」「ツール」「サポート」「効果測定」「フィードバック」などを提供したい、「変えたい」と思うきっかけも提供したい――これがイーズの使命です。
 初年度の今年は、通訳や翻訳の勉強をしている人への教室、自分マネジメントを身につけるためのコースなどを開催しています。自分が教室をやるなんて、これまた一年前には夢にも思っていませんでした! ただ「思いついたら、カタチにしてみる」思い切りのよさとしくみはできています。「やりながら改善する」「やってから考える」がすっかり身についてしまいました。

仕事のモットーは「片手でやる」こと
 環境問題でも教育問題やその他の社会問題でも、「人がいったから」ではなくて、「自分の頭で考え、自分で選び、自分で決める力」が解決へのカギを握っていると思っています。自分のビジョンを作り、なりたい自分になっていくためにも、まったく同じ力を使います。その力を鍛えるには?――「腑の鍛え方」「自分のコーチになるには」なんて講座はどうかな? アイデアがどんどん広がっています。
 もうひとつ、イーズはウェブサイトに「エコひいき」というショップをもっています。いまは、間伐材で作ったマウスパッドや、端材で作った積木などを売っています。直接自分で販売できる場ができた――これも大きな展開です。はじめは、「世界や日本の森林はこういう問題に直面しています」という話を通訳する立場でした。そのうち、「その問題を解決すべく、こういう取り組みをしている人がいます」と紹介できるジャーナリストの立場も兼ねるようになりました。そしてこれからは、問題解決へ向けての自分なりの考えをカタチにして、自分のリスクで世に問うことができる――もっと主体的な活動もできる場が得られた、ということなのです。ワクワクしています!
 日本の森をなんとかしたい、という思いが強いので、いろいろな商品を企画・販売して、日本の森をオフィスや家庭にどんどん届けていきたい。「イーズの森」というシリーズにしよう。そしてイーズが儲かれば儲かるほど、日本の森が少しでもよくなるしくみにしたい。そうだ、「イーズの森基金」を作ろう。何十年後かわからないけれど、イーズの売り上げから取り分けた基金で、「イーズの森」をどこかに作って、そこに植えて伐った木材から、イーズで販売する商品が作れたらステキだなあ……。夢が膨らみます。
 どなたがかが雑誌で「仕事は片手でやるぐらいがいい」と書いていらっしゃるのを見て、「そうそう!」と思いました。いまの仕事で手いっぱいで、両手がふさがっていたら、おもしろいコトがやってきても、つかめないじゃないですか? 私の仕事のモットーも「仕事は片手でやる」。だって、いまやっていること、いま思っていることは、私がやりたいこと、思いつくであろうことの一%ぐらいじゃないかと思うからです。
 おもしろいことをどんどんつかんで、思いの重なる人たちといっしょにやっていく。いっしょにやってくれる人にとっても、次につながる、自分の「やりたい」をカタチにできる場にしてもらう。こうして、どんどん枝が広がっていきそうです(ときどき「枝廣って芸名ですか?」と聞かれます……。本名ですが、いい名前だなあ! と思っています)。

「かぐや姫」だからハッピーに!
 ある飲み会で、私のことをよく知っている人が隣に座ったので、「あのね、私、かぐや姫なんですよ。もうじき、月に帰るの」とささやきました。さすがに私のことをよくわかっているので、「え! もしかして末期の病気なんですか?」なんていいません。「ほお?」と一言。「『もうじき』がどれぐらいあとか、私にもわかりませんけどね。もっとも、だれだってかぐや姫なんですよね」と私。みなさんだって、五六ページで計算した「残り時間」が切れれば、帰っていくでしょう?(月かどうかはわかりませんが!)
 私の残り時間は、予定の寿命を全うしたとして、現在の時間によると約一六万時間。どう過ごしたって、過ぎていく時間なのだから、せいぜい思い切り、やりたいことをやって
過ごしたい。人が自分のことをどう思うかなんて気にせずに、自分がハッピーだったらそれでいい。
「やんちゃなかぐや姫」の活動は、まだまだ広がりそうです!

枝廣淳子

 

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