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エダヒロ・ライブラリー一日一題

あなたの地域の公共施設は「木造」ですか?

2016年08月15日

林野庁が2010年度から調べている庁舎や学校、医療・福祉施設など公共建築の「木造率」(床面積ベース)が、13年度までは全体の8~9%だった割合が、14年度に初めて10.4%に達し、公共施設の1割が木造となっていることがわかったという報道がありました。

日本は国土の7割近くが森林です。木材などの森林資源を持続可能に活用してはじめて、植林や森の手入れを続けていくことができます。それでも「出口=販路がない」として、伐りだすべき樹齢になっても手がつけられていない森林が増えるなど、国産材の活用はあまり進んできませんでした。

その大きな障壁は「木造は火事になりやすい」という思い込みが続いていることです。実際に戦争中は空襲によって木造住宅が燃えました。そこで、政府は1950年に木造の公共施設を事実上禁じたのです。そうして、日本中、どこへ行っても、そこに地域材があっても、鉄骨や鉄筋コンクリートで公共施設が建設されるようになりました。

しかしその後、火災を起こしにくい木造建築の技術が進むなどして、2010年には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」ができ、林業活性化へ向けて公共施設で木材利用を促すという方向に転換されました。この法律ができてから、各地で地域材を活用した公共施設の建設が増えています。

そのリストを見ていたら、「阿蘇くまもと空港」も載っていました。国内線ターミナルビルターミナルビルの増築に伴う改修を機に、県産材を用いて内装を木質化したとのこと。今週末、東京都市大学のゼミ生と熊本県水増集落を訪問しゼミ合宿を行う予定なので、熊本空港でよーく見てこようと思います!

県土の63%を森林が占めている熊本県も、公共施設や公共工事に積極的に木材を利用しています。なかでも、2013年7月に始まった、全国でも例のない「木造設計アドバイザー派遣事業」の制度が効果を発揮しているようです。これは、各地で行っている地域材活用のための意識啓発ではなく、熊本県内で木造建築を設計する設計事務所に、木材の調達や流通、加工、構法などの専門知識を持つアドバイザーを派遣し、適切なノウハウを提供する、というものです。県は、通常の設計委託料にアドバイザー料を上乗せし、これらの設計業務を発注し、受注した設計事務所には、木造設計アドバイザーの利用を義務付けているとのこと。

こうすることで、中大規模木造に対する設計者の経験と知識を補い、コストを抑えての建設が可能となります。意識啓発ののちに来る、「わかっちゃいるけど、どうやってよいかわからない」段階をうまく実施につなぐ仕組みだなあ!と思います。

各地で、意識啓発の取り組みと共に、こうした「実行段階のサポート」を手厚く提供するようになれば、公共施設やその他の建造物の「木造率」はもっとアップしていきますね! 

 

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